【特別寄稿】シグナルを探す:iOS 14でサブスクリプションアプリを成功させるためのヒント

※本記事は、adjust株式会社ゼネラルマネージャーの佐々直紀さんに寄稿していただきました

目次

・オプトインを確保する
・SKAdNetworkを使用する
・シグナル vs ノイズ
・「trial start(トライアル開始)」を最適化する





2021年4月にAppleのAppTrackingTransparency(ATT)ルールが導入されてから、モバイルエコシステムは収益化戦略とユーザー獲得キャンペーンへの影響を最小限に抑えるための取り組みを続けてきました。ポストiOS 14の世界でも、マーケターがデータ主導の意思決定ができるように、さまざまなソリューションが開発されています。


サブスクリプションで収益化をしているアプリでは、ユーザーのライフサイクルにおけるあらゆる出来事に辿り着く過程を正確に把握することが重要です。よって、信頼できる確定的データを取得するためのトラッキング、すなわち、オプトイン戦略の構築が求められます。サブスクリプションアプリの場合、ユーザージャーニーは他の収益化戦略よりも長くて複雑になる傾向があるため、全てのデータを入手するにはコストがかかります。


しかし、SKAdNetworkに関する堅牢なプランを準備することで、トラッキングからオプトアウトしたユーザーに対しても効果的にLTVを計算することが可能になります。


ユーザーがIDFAの共有に同意した場合、広告が表示されるメディアソースとダウンロード後のアプリ内の両方でIDFAが確認できるため、モバイル計測プロバイダー(MMP)は確信をもって一致させることができます。これは確定的アトリビューション(Deterministic Attribution)として定義されています。



オプトインを確保する



高いオプトイン率を確保することで、アプリはユーザーに関する確定的なデータにアクセスでき、さらにオプトインしたユーザーの行動に基づいて収益化モデルが構築できる上でも、大きな競争力を得ることができます。


プリパーミッションプロンプトを使用すると、ユーザーレベルのトラッキングに同意することのメリットをユーザーに伝えることができます。最適なプリパーミッションプロンプトを作成するためのポイントについては、以下の記事でまとめています。


iOS 14のApp Tracking Transparency (ATT) に最適なオプトインをデザインする方法

iOS 14のApp Tracking Transparencyに向けてアプリを最適化し、ユーザーのオプトイン率を最大化しましょう



マーケターは、ATTプロンプトをテストすることで、同意率が高いものとそうでないものの特徴を研究しています。実際に使用されているATTポップアップをまとめた以下のギャラリーから、エコシステムのさまざまなアプリがこの問題にどう対処しているかをご覧ください。


A gallery of App Tracking Transparency (ATT) prompts
A collaborative effort to collect ATT pre-prompts and prompts implemented by iOS apps following Apple's privacy changes with iOS 14.5.



サブスクリプションアプリでは、ユーザーが定期課金の支払いに失敗したタイミングや、契約の一時停止、解約、あるいは契約再開のタイミングなどを理解することで、アプリの最適化につなげることができます。しかし、ユーザーがコンバージョンに至るまでの複雑なジャーニーに関するデータを得るのは、IDFAなしではますます難しくなってきています。



SKAdNetworkを使用する



Appleが2018年にSKAdNetworkを導入し、ユーザーレベルのデータが取得できないキャンペーン計測に対し、これまでとは異なるアプローチを先駆けて行いました。iOS14のリリースを通して、SKAdNetwork frameworkの追加開発と普及が行われています。これは、IDFAへのアクセスが制限されることで生じる影響を減らすためのAppleの試みです。


SKAdNetworkは、24時間のタイマーとともに下流の指標の6ビットで構成された情報を提供します。これは10進法の0〜63の間の数値です(または2進法の000000〜111111の間)。この「conversion value(コンバージョン値)」には、2新法で表現可能なあらゆる値を割り当てることができます。Conversion valueとしてアプリ内で定義された6ビットのコードが更新されるたびに、タイマーの期間はさらに24時間延長される仕組みです。


最初のconversion value期間のタイマーが切れると、アトリビューションの次の24時間タイマーが開始されます。SKAdNetworkは、この24時間内にランダムなアトリビューションデータを返します。このランダムなタイマーを使用してインストールの時間を不明瞭にすることで、イベントの発火が個別ユーザーにひも付けされないようにしているのです。SKAdNetworkのシステムでは、このデータを集計した後に共有するため、粒度が細かいユーザーレベルのデータは取得できません。


サブスクリプションで収益化しているアプリには、iOS 14でのマーケティングの問題が特に重くのしかかります。


まず、インストール後のなるべく長い期間のデータを収集することを目的として、24時間以降にSKAdNetworkタイマーを確実に遅らせることは難しいでしょう。これは、ユーザーからデータを収集するのに役立つ可能性がある場合もです。ビットを使ってコンバーション期間を延長する、conversion valueの更新(000001から000011など)を定期的にトリガーし、タイマーをさらに24時間延ばすことはできますが、conversion valueのトリガーがアプリがフォアグラウンドにある状態で動作するように、ユーザーが毎日ログインをしていなければなりません。ユーザーがアプリを再起動しなかった場合、conversion valueは更新できず、延長したタイマーにより収集したいと考えていたデータを逃してしまいます。


また、長期的な予測を正確に立てるために、インストール後24時間以内にユーザーから十分なデータを取得することも難しいです。というのも、タッチポイントが限られており、6ビットの値しか使えないからです。本当に意義のあるものに焦点を当てることが重要です。



シグナル vs ノイズ



SKAdNetworkから付与された6ビットを使用する方法は、主に二つあります。一つ目は「ビットマスキング」アプローチです。6つのビットの一つひとつをイベントに割り当て、対応するビットが0に設定されているか1に設定されているかによって、そのイベントが発生したかどうかが分かります。これは、イベントを集計するための非常に洗練された方法で、適切に使用すれば強力な効果を発揮します。しかし、6つのイベントに限られているため、オプションは「はい」または「いいえ」にする必要があります。


二つ目は、値の範囲をさまざまなconversion valueに割り当てる方法です。これにより、定義した範囲内に入るかどうかに基づいて、ユーザーの「バケット」を作成できます。


予測型LTVモデルは、アプリ利用から1日目のユーザー行動を使用して、将来的な収益を中期的に予測するものです。このような予測型モデルは、より範囲の広いバケットやカテゴリーに使用するとさらに効果を発揮します。パフォーマンスの定義を広く設け、行動に基づいてユーザーをフィルタリングします。ユーザーを「大きな価値をもたらすユーザー」と「そうでないユーザー」に分類するゲームアプリのように、バケットを使ったユーザーの広範囲なフィルタリングは多くの場合成功しますが、同様のクラスのユーザー間の細かな違いを把握するのは困難です。


よって、サブスクリプションアプリはSKAdNetworkのシグナル(イベントの発生を伝えるプロセス間の通信)に「trial start(トライアル開始)」を設定して最適化するのが良いでしょう。これは、ユーザーがトライアルを開始するタイミングが、より詳細なデータが計測できる期間中に確実に発生する可能性があることと、最初の期間内にユーザーの意図によって行われるアクションだからです。


しかし、「trial start」を使用するだけでは、計測が誤った方向に進んでしまう可能性があります。また、ポストIDFAではトライアル期間内に発生しているイベントが把握できないため、無料トライアルが収益を生むユーザーのコンバージョンを促していると推測するのは、より難しくなります。



「trial start(トライアル開始)」を最適化する



上記の理由から「trial start」と別の独立したシグナルを検討するのがよいでしょう。例えば、ユーザーが「trial start」をトリガーし、初回のconversion valueを割り当てられたとします。しかし、そのユーザーがconversion value期間中にトライアルをキャンセルした場合に、conversion valueを更新することができます。これにより、課金する可能性のないユーザーは即時に削除され「canceled trial(トライアル解約)」ユーザーの大きなバケットが作成されます。これらのユーザーのLTVはより低くなると予想できます。


また、無料トライアルに申し込み、支払情報を入力したユーザーを計測するのも効果的です。支払情報を入力するユーザーは、コンバージョンに至る可能性をすでに示していて、長期的な課金ユーザーの候補となります。


しかし、アプリの性質はそれぞれ異なるため、アプリのシグナルが何なのかを把握しておくのが大切です。例えば、アプリが発する最も分かりやすいシグナルは、初回設定後、同じ日に再びユーザーのセッションがあったときです。これは、ユーザーがアプリにエンゲージしており、その機能を使う準備ができていることを示します。あるいは、コンバージョンへのもう一つのサインとして、ユーザーによるプッシュ通知の閲覧があります。これはユーザーがプロンプトを受け取り、アプリに戻るのに前向きであることを示します。


LTVの指標は、必ずしも複雑である必要はありません。例えば、Facebookの「North Star指標」は「10日間で7人以上の友達を追加したかどうか」をモニタリングしており、これを満たすユーザーは、長期的にプラットフォームを利用する傾向があります。早い段階でユーザーについてどのような情報を得られるか、そしてその情報を何に活用できるかを考えましょう。インストール当日にユーザーをバケットに入れて分析することで、ユーザーが長期的にもたらす価値を予測できます。


iOS 14のリリースに伴い、マーケターには多くの困難が課せられています。しかし、適切な戦略をとることで、変化に対応し、競合の一歩先を行くことができます。特にサブスクリプション型のアプリにとっては、LTVに関する初期段階のシグナルを特定し、効果的なオプトイン戦略を繰り返し行うことが重要です。

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