【鼎談】SimilarWeb 田中さん・鈴木さんに聞く:広告運用者のためのSimilarWeb活用法

イスラエルに本社を置くSimilarWebは、2017年に日本市場にSimilarWeb Japan 株式会社として本格参入し、オンラインにおけるユーザー行動やデジタル領域での独自のインサイトを提供しています。グローバルでは3,000社、日本では約300社のユーザーに活用されています。

本記事では、広告運用の現場でのSimilarWebの活用例、ならびに日本市場での今後の展望について、日本オフィス代表の田中さんと、クライアントサクセスアナリストの鈴木さんにお話を伺いました。


話し手:
SimilarWeb Japan 株式会社
日本オフィス代表 田中晃さん
クライアントサクセスアナリスト 鈴木雅之さん

聞き手:
アタラ合同会社
CEO 杉原剛


目次

・ユーザーの活用例(ユースケース)やニーズに合わせて、ソリューションを細分化
・使い方次第で広告運用への活かし方は無限大
・進化し続けるSimilarWeb 2021年からはブランディングに注力



ユーザーの活用例(ユースケース)やニーズに合わせて、ソリューションを細分化



杉原:SimilarWebさんには、以前も一度お話を伺いましたが、今一度、貴社の企業概要と田中さんの自己紹介をお願いします。


田中:SimilarWebは2013年にイスラエルで創業し、2017年2月に日本オフィスを開設しました。私は、GoogleやMicrosoftを経て、Knewton (EdTech)の代表を務めた後、同年9月にSimilarWebに第一号社員として入社しました。





今ではSimilarWebは、グローバルで3,000社、日本では約300社のお客さまを持ち、これらお客さまのニーズに応じてソリューションを毎年進化させています。


当初は、Marketing Intelligence(マーケティングインテリジェンス)、Sales Intelligence(セールスインテリジェンス)、Investor Intelligence(インベスターインテリジェンス)の三つをソリューション1.0として提供していました。これらのソリューションの中からお客さまのユースケースに応じて、使い分けていただいていたのですが、今ではユースケースも細分化され、その定義付けもできるようになったため、ユースケースやワークフローの視点でさらに進化させたのがソリューション2.0です。


ソリューション2.0では、Audience Intelligence(オーディエンスインテリジェンス)とPurchase Intelligence(購買インテリジェンス)の二つを加えました。その中でも多くのお客さまにご利用いただいているマーケティングインテリジェンスをさらに三つに分けました。それらがリサーチインテリジェンス、デジタルマーケティングインテリジェンス、コンバージョンインテリジェンスの三つのソリューションです。(図を参照)






※関連記事:2018年取材時のSimilarWebの展望

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杉原:それでは、読者に最も関係の深いマーケットインテリジェンスにある細分化された三つのインテリジェンスについてお聞かせください。


田中:リサーチインテリジェンスは、市場調査を行うためのインテリジェンスです。これは、お客さまの業界において戦略を立てるための元となるデータを提供します。


二つ目のデジタルマーケティングインテリジェンスは、検索やアフィリエイト、ディスプレイ広告など、デジタルマーケティング活動を行う上でベースとなる情報を理解した上で自社の活動を実施していくためのデータを提供します。


三つ目のコンバージョンインテリジェンスは少しユニークです。特に昨今のCOVID-19の影響で、オフラインの店舗からオンラインへとお客さまの購買経路が変わってきています。その中で、デジタルにおける購買フローやカスタマージャーニーといった顧客側の体験値をきちんと理解した上で、特に競合他社の仕掛けを理解して自社戦略を立てるためのインサイトを提供するソリューションです。


杉原:貴社内でのマーケットインテリジェンスにおけるユースケースの細分化が進んだことで、これら三つのソリューションを使い分けた提案が可能になったということでしょうか。


田中:そうですね。ここ5~6年で学んだ五つのユースケースを想定しています。一つ目のユースケースが、SimilarWebが生まれた基盤でもある「リサーチ」です。市場調査やその業界のトレンドを発見することで、自社と他社、競合とのベンチマークを作ります。


二つ目が「成長」です。企業サイトにおけるリファラルやアクイジションの施策への示唆を提供します。自社サイトを成長させるためには競合を見る必要がありますし、どこからリファラルを取り、どことパートナーシップを結んで自社サイトを成長させるのかを考えるための手法です。


三つ目は「競合のコンバージョン」です。自社と他社のECサイトを比較して、製品のコンバージョンの差はどの程度かを理解した上で戦略を立てるための手法です。


四つ目は営業のソリューションである「アクイジション」です。自社のターゲット企業となるリードをいろいろな条件付けをして、リスト化していただくようなユースケースです。


最後の五つ目は「インベストメント」。インベスターや投資を行う事業会社やグループに使っていただくものです。自分や企業が投資する事業会社の現状や過去からの推移、競合他社の状況を確認したり、投資先がどの市場で成果を上げているかといった状況を詳しく分析したりするために使います。


杉原:以前からSimilarWebを日本で展開され、実際にさまざまなユースケースで活用されています。貴社から分類された活用法を提案されるようになったことで、定義や使い方がより明確になり、一層使いやすくなった印象があります。今後もこういった活用法に力を入れていくのでしょうか。


田中:はい。お客さまへのソリューション提供に加え、ご活用いただくためのサービスについては一層力を入れていきます。その背景として、SimilarWebのグローバルと日本での立ち位置の違いがあります。日本は、オフィスが設立されてから4年目ですし、市場自体も北米に続いてこれからという動きです。従って日本市場では、まずこの業界での教育活動・トレーニングなどに力を入れて活用機会を増やしていく必要があります。私たちのようなソリューションを提供する業界自体が新しいことから、今後の業界としての伸び率も計り知れません。私たちは、この業界でのキープレイヤーとして、しかもグローバル展開しているという点を強みにして、今後もユースケースを明確にしながらビジネスを展開していきます。




使い方次第で広告運用への活かし方は無限大



杉原:ありがとうございます。鈴木さんのご紹介もお願いします。


鈴木:私は1999年からインターネット広告の世界に入り、2002年にはGoogleに入社し、最初は運用型広告の広告オペレーションに携わっていました。その後、Google AdWordsのプロダクト担当として社内外のトレーニングやサポートを行い、その後は複数の外資系IT企業を経て、2020年3月にSimilarWebに入社しました。SimilarWebでは、クライアントサクセスアナリストといって、実際に製品をご導入いただいたお客さまにデータの見方や分析結果を導き出すためのレポートを提示したりといった、お客さまに付加価値を感じていただく業務に就いています。





杉原:鈴木さんは、そのご経歴からも広告領域に非常に強みを持っていらっしゃると思います。Unyoo.jpは実際に広告を運用している読者も多いのですが、SimilarWebは広告領域へはどう活かせばよいでしょうか。


鈴木:広告運用における弊社の強みは、自社に加えて競合情勢も分析できる点にあります。基本的な使い方としては、自社のサイトと競合サイトのウェブサイト分析です。例えば、直近1年間で分析し、各競合と自社を含めた大きなトレンドや増減がある場合に、どのマーケティングチャネルからのものが多いのかが分かります。




競合情勢のリサーチ画面(※クリックで拡大します)




オーディエンスの興味関心のリサーチ画面(※クリックで拡大します)


鈴木:ディスプレイ広告においては、各チャネルがトラフィックの増減にどう貢献しているのか、何が影響しているのかを見ることができます。


特にGDNにおいては、弊社で競合の情勢やオーディエンスの興味、自社と競合すると思われるサイトや、競合サイトに訪れたユーザーが自社サイトに訪れる可能性までを見ることができ、その横にGoogle AdSenseのチェックボックスがあります。いわゆるGDNの広告目線からAdSenseのタグが入っている箇所であり、GDNの配信対象になるため、例えば新規の配信先リスト作成に悩んでいる場合、競合も同様に回避する可能性が高いのではないかというところでホワイトリスト・ブラックリストを作るといった使い方もできます。




ディスプレイ広告での上位検索のリサーチ画面(※クリックで拡大します)


鈴木:また、弊社のアルゴリズムで各ウェブサイトをカテゴライズして、カテゴリー分析を行えます。例えば、ユーザー自身でURLを入力して独自のカテゴリーを作ることもできるので、競合ではないところの情勢も気になるという場合は自由にURLリストを作って分析し、そのトレンドを追うことができるのです。すると、今まで競合と認識していなかったところが成長してきているといったことや、自社への影響がありそうなところが分かります。



流入チャネル別のパフォーマンスのリサーチ画面(※クリックで拡大します)


鈴木:実際に特定できた競合群に対して、ディスプレイ広告や検索連動型広告のパフォーマンスを分析し、例えば弊社ではエンゲージメントと呼んでいる直帰率や滞在時間といった指標を見ます。検索連動型広告を利用する中で、例えば直帰率が低く、滞在時間が長いサイトについては、結果的に広告経由でユーザーの興味を引き付けていると認識でき、広告投資は成功しているといえるでしょう。


実際に広告投資に貢献したサイトが特定できたら、次に、成功している競合がどのようなキーワード選定やディスプレイ広告を配信しているのかを見ます。例えば、少数のキーワードがトラフィックの大部分を占めているのか、またはロングテールキーワードで幅広く獲得しているのか、キーワードの傾向を見ることができるため、それが競合サイトであれば自社でそのまま使えそうなキーワード群の参考にすることもできます。また、ロングテール寄りのキーワードが多い場合は、弊社のキーワード生成ツールで類似キーワードを作成することもできます。キーワード生成ツールでは質問クエリ、つまり「○○とは」といったキーワードも含まれるため、それを全て洗い出して実際の広告設定に導入するといった使い方もできると思います。




キーワード生成ツール画面(※クリックで拡大します)


鈴木:キーワードに関しては、2020年夏に新たなフィルターが追加されました。これまでは最新28日が最新のフィルターでしたが、新たに週次フィルターが追加され、最新7日というより直近のデータまで確認できるようになりました。例えば、クリスマスにかけて動きの激しいキーワード群に関しては、通常1、3、6ヶ月と大きな流れで見るのですが、短い期間でフィルターをかけることで、今この瞬間にどういうキーワードが上昇しているかを確認できます。あるキーワードを競合が高単価で買っている場合、正面からぶつかるのも手ですし、そこは控えて関連性のある比較的安価なキーワードを幅広く狙うのも手だと考えられます。つまり、具体的なデータでもって、打ち手の幅を広げることができるのです。


杉原:私自身はチャネル分析をよく使っています。例えば、自身が担当する案件で、クライアントの企業がGoogle 広告やYahoo!広告に予算を割いていたとして、意識する競合企業ではTwitter広告など他の媒体からたくさん流入していることが分かった場合、アロケーションの提案がしやすいです。


鈴木:我々はそれを、ユーザー獲得ネットワークと呼んでいます。各競合がディスプレイネットワークや、Criteoなどのリターゲティング系、Outbrainに代表されるレコメンド系など、それぞれのネットワークでどの程度のシェアを獲得しているのかを見ることができます。


そのため、ある1社がリターゲティングに特化している場合、その会社はフィード情報がしっかりしているだろうと推察できますし、自社においてもフィードの見直しや改善が次の一手になるかもしれません。


杉原:競合のクリエイティブを見られるのもすごいと思います。とても重宝しています。


鈴木:テキストの場合はキーワードも出るため、キーワードと実際の広告テキストを見て関連性を分析したり、ディスプレイ広告に関しては季節モノと通年型のクリエイティブがあるので、あとで振り返った際に、スパイクが起こっていた時期は他社がどんなメッセージで配信していたのかを特定することで、次回への戦略策定・事前準備につなげることができます。


杉原:広告運用者が実際にキャンペーンを運用し、効果検証を行う際には、膨大な量のレポーティングを見る必要があり、インサイトを導き出すのが非常に難しいのが現状です。そういったシーンで、SimilarWebは非常に重宝されると感じています。


検索エンジンのキーワードについてもそうですが、言葉の多様性はよりいっそう加速の一途をたどっていますし、リーセンシーやシーズナリティも加速・多様化しているため、それを考慮してプランニングしないと的が外れると思うのです。


鈴木:シーズナリティについては、新しくカテゴリーで季節トレンドのキーワードが見られるようになったので、キーワードごとの需要の高まりを見て、早めに仕込むということもできます。逆に、通年型で運用したい場合は閑散期に単価を下げて、繁忙期に向けて単価を強めるといった使い方もできると思います。


杉原:昨今、業界のトレンドとして広告運用のインハウス化が進んでいると感じているのですが、事業会社が直接利用するという傾向は増えましたか。


田中:はい。広告代理店さんから出されるデータや報告書の内容を事業主さん自身が違う視点で見て確認してみたい、というニーズが増えてきています。




進化し続けるSimilarWeb
2021年からはブランディングに注力



杉原:2017年より日本法人を立ち上げられたわけですが、立ち上げから2020年までの3年間はどのような動きをされてきましたか。


田中:2017年の弊社日本法人設立前は、代理店経由で日本におけるビジネス展開をしていました。当初の1年は、代理店と積極的に協業させていただき、全てにおいて学びの時間でした。2018~19年からは、さらなるビジネス拡大を視野に、代理店販売を弊社から積極的にサポート・補完する意味で、フィールドマーケティングやテクニカルサポート、アカウントマネジャーなど限られたポジションで弊社採用を行い、フィールドでのラーニングを続けました。提供するサービスの性質上、導入後に継続的にご活用いただくためのハイタッチなサポートが必須だったので、代理店と共に、更新率にはかなり苦労しました。しかし、サービス認知を第一に積極的な販売・拡販を重視し、代理店の大きな貢献もあり、認知度も少しずつ上がってきました。


一方で、いろいろなデータが出て面白いということは少しずつ浸透していったのですが、ユーザーにその価値をご理解いただいて弊社サービスを日常的に活用していただくためには、ユーザーへのトレーニングが不可欠で、この提供モデルの構築にはかなり時間がかかりました。また、日本という大きな市場を、代理店と共に得意な業種でうまくすみ分け、両社でマーケット自体を大きくしていくために協業していく目的で、2020年4月から弊社も直販に足を踏み入れました。


直販モデルの導入に伴い、人員増強も急務になりました。また、弊社サービスの市場規模分析や、日本に本社があり海外展開しているブランド企業が数多く存在することなどから、SimilarWebへの需要の高まりが来るという判断も、人員増強を後押ししました。そして、2019年末には3人しかいなかった日本メンバーが、コロナ禍にもかかわらず今では10人を超えるまでに成長しました。


杉原:すごい勢いで増員されていますね。


田中:そうですね。本社経営陣の日本への期待と理解によるものだと思っています。お話ししたような人員拡張が少しずつできてきたので、販売後のオンボーディング・イネーブルメントも一辺倒なプログラムではなく、ユースケースを理解し、お客さまのペインポイントを事前にヒアリングし、それらに合わせてカスタマイズした実践的なオンボーディングサービスを提供できるようになり、お客さまからの反応も格段によくなってきました。





杉原:カスタマーサクセスも強化されているということですね。進化し続けるSimilarWebですが、今後はどのように展開される予定ですか。


田中:日本はGDP世界3位であり、大きなポテンシャルのある市場だと考えています。また、日本人は保守的ではありますが、昨今ではデジタルネイティブ世代が多く活躍し、多くの消費者行動がデジタル世界に移行してきています。


そのような状況下で、データドリブンな戦略作成プロセスと合わせて、弊社が提供するさまざまなデジタルシグナルをビジネスで活用できる利点を、海外の成功事例も含めてしっかり啓発活動を継続していけば、弊社のサービスに対する需要はますます増えると考えています。


これを裏付けるように、弊社グローバルチームの売上高は、爆速の伸び方を記録しています。我々少数精鋭の日本法人は、今後も人員への積極的投資と、弊社の海外スタッフを即戦力として日本へ転籍させたりと、我々日本チーム自身のイネーブルメントにも力を入れながら、2021年は日本マーケットのイネーブルメント・啓発活動に力を入れ、マーケットシェア・売上を伸ばしていきたいと考えています。


本社では、2020年11月からCMOが着任しましたので、2021年は日本におけるマーケティング・ブランディングの確立が急務だと考えています。私たち自身が、自社のソリューションを使って、いろいろな面でマーケットの分析を行い、成功事例を作って積極的なブランド露出・マーケティングに力を入れ、しっかりとした弊社のブランドを確立する年になりそうです。


杉原:ありがとうございます。最後に、今DXやデジタライゼーションを標榜する企業に対して、SimilarWebからメッセージはありますか。


田中:これまでは「自社サイトを最適化するためにはどうすればいいのかを知る」ことにフォーカスする企業が多かったと思います。しかし今後は、それだけでは事足りず、取り巻きの環境・状況をしっかり観察・分析した上で自社戦略を練らないと、せっかくの経営戦略が的外れで、結果として無駄な投資になってしまいます。


ぜひ、DXを推進する中でSimilarWebを縦横無尽にご活用いただき、自社データと同等に外に目を向け、外部要因やマーケットランドスケープも十分に理解・分析し、よりデータドリブンな戦略立案を行っていただきたいと考えています。


著者

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