【コラム】COVID-19により苦戦を強いられたGoogle─アルファベットの2020年Q2決算報告から

目次

・売上高は前年同期比2%減の382億ドル(約4兆円)に
・旅行業界の痛手と迫りくるAmazon
・YouTube広告はダイレクトレスポンス領域で堅調に成長
・コマースへの注力を積極的にアピール
・コネクテッドTV向けブランド広告予算を獲得できるか


売上高は前年同期比2%減の382億ドル(約4兆円)に



2020年7月30日、Googleの親会社であるアルファベット社は2020年第2四半期(4−6月:以下「Q2」)の決算を発表しました。


売上高は前年同期比2%減の382億ドル(約4兆円)と苦戦を強いられた四半期となりました。同社CEOのSundar Pichai氏(以下Sundar氏)も決算発表の冒頭挨拶で触れていますが、新型コロナウィルス感染症(以下COVID-19)による影響をGoogleも免れることはできませんでした。


Image Source: Alphabet Investor Relations



内訳を見ますと、Google Cloud(Google Cloud PlatformやG Suite等)とGoogle Other(Google Playやハードウェア、YouTubeのサブスクリプションサービス等)は前年同期比でそれぞれ約10億ドル増となったものの、売上の8割近くを占める広告事業(Google advertising)は約26億ドル減となり売上全体に影響を与えています。


Image Source: Alphabet Investor Relations



広告事業の中でもGoogle Search & Other(検索やGmail、Google Maps等)は前年同期比で約23億ドル減と大きく減少した一方で、YouTube広告は前年同期比で約2億ドル増と広告事業の中では唯一プラス成長となり健闘しています。



旅行業界の痛手と迫りくるAmazon



2020年6月時点で、eMarketerは2020年の米国におけるGoogleの広告売上減少を予測しており、主な要因として検索広告の大部分を占める旅行業界の広告費削減をあげています。同業界はCOVID-19の影響を最も受けたといっても過言ではなく、当然Q2のGoogle Search & Otherの売上減少にも影響しているでしょう。


※参考リンク:

For the first time since we began estimating ad revenues at Google, the company’s net US digital ad revenues will decline in absolute terms. Facebook and Ama...



Googleが検索広告で苦戦を強いられる中、Amazonは堅調に検索広告市場のシェアを伸ばしています。同じくeMarketerの予測によれば、2020年の米国におけるGoogleの検索広告売上は前年度比7.2%減の310億ドルとなるのに対して、Amazonは前年度比25.2%増の90億ドルとなり、検索広告市場のシェアも17.1%と2019年から4ポイント近く伸長するとのことです。


Image Source: eMarketer



AmazonのQ2の決算発表によれば、広告事業の売上を含む”Other”は前年同期比41%増の約42億ドルと大きく成長しており、COVID-19によるEコマース利用増加が追い風となったのでしょう。実際、オンラインストア事業の売上は前年同期比49%増の約458億ドルと急伸しています。



YouTube広告はダイレクトレスポンス領域で堅調に成長



広告事業の中で唯一プラス成長と健闘したYouTube広告に関して、CFOのRuth Porat氏は以下のように述べています。

YouTube advertising revenues were $3.8 billion, up 6% year-on-year, driven by ongoing substantial growth in direct response, offset by a continued decline in brand advertising which then moderated toward the end of the quarter.


YouTube広告の売上は前年同期比6%増の38億ドルでした。これは、ダイレクトレスポンスにおける堅調な成長が、ブランド広告の減少に相殺された結果であり、ブランド広告の減少に関してはQ2の終わりに向かって落ち着きを見せ始めました。(筆者意訳)



Q2の決算発表の中でダイレクトレスポンスの内訳に関する言及はありませんでしたが、2020年第1四半期(1−3月:以下「Q1」)の決算発表では、YouTube広告の成長を牽引するダイレクトレスポンスの例としてSundar氏はアプリインストール広告を挙げています。


一方コマースに関して、同氏はQ1の決算発表で、長期的にYouTube上でうまく機能することを期待する旨を話していることから、Q2に関しても引き続きアプリインストール広告がYouTube広告のダイレクトレスポンス領域の中心となるものの、コマース領域も一定の貢献は果たしているのではないでしょうか。


ダイレクトレスポンスに特化したTrueViewアクションキャンペーンは2018年のローンチ以降順調に利用が増加し、Googleによれば2019年には2018年比で260%増と驚異的な成長を見せています。加えて、ファインドキャンペーンや、ショッピング広告の配信面拡大を通してYouTubeの広告在庫を拡充しており、着実にコマースをYouTube上に取り込もうとする姿勢が窺えます。


※参考リンク:

キーノートだけではないGoogle Marketing Live 2019Google広告、Googleアナリティクス、Google Marketing Platform などの広告関連プロダクトに関するアップデートや、...

目次・ショッピング広告の配信面が拡大・いま検索していないYouTubeユーザーへアプローチショッピング広告の配信面が拡大2019年11月5日、Googleはショッピング広告の配...




コマースへの注力を積極的にアピール



Sundar氏はQ2決算発表の冒頭挨拶において、2019年に注力し非常に改善できた領域として「ショッピング」を上げたうえで、Google検索ショッピングタブへの無料商品掲載スマートショッピングキャンペーンの無料・即日配送アノテーション表示等、Q2に実施してきた具体的なアップデートを紹介しました。


また、買い物客が商品をすぐに確認でき、より早くアクションを取れるようにするという位置づけで検索広告への画像表示オプション追加や、2020年6月にテスト段階であることが発表されたTrueViewアクションとTrueViewショッピングを組み合わせたかたちの広告フォーマット(以下画像参照)にも言及し、Q2におけるコマース領域の積極的なプロダクトアップデートをアピールしています。


Image Source: Google Ads&Commerce Blog



米国で2019年6月に実施された調査では、対象者の約半数がオンラインで商品を購入する際に「まずAmazonを利用する」と回答しており、商品検索といった観点ではすでに後塵を拝するGoogleですが、上記で紹介した通りQ2だけでかなりのアップデートを発表しています。


※参考リンク:
Historically, most marketers have equated search with general search engines—especially Google. But many of consumers’ most commercially oriented queries are...



また、ユーザーが検索行動を起こす前のアプローチとしてYouTubeをコマース領域で活用する意図も窺えます。商品検索においてAmazonの牙城を切り崩すことは難しい一方で、検索行動前のユーザーにいかにYouTube上でアプローチしてアクションを促すかが、Googleのコマース領域の成長の鍵となるかもしれません。


旅行業界がCOVID-19以前の水準まで早々に回復することは現実的に厳しいであろう状況下で、Googleがコマース領域にさらに注力することは理にかなっていると言えるのではないでしょうか。



コネクテッドTV向けブランド広告予算を獲得できるか



2019年後半から、GoogleはYouTubeマストヘッド広告のテレビ画面配信や、YouTubeとテレビを横断したプランニングを可能にするリーチプランナーへのNielsenテレビデータ追加、さらにはGoogle Preferredの”YouTube Select”へのリブランディングを通した予約型プレミアム在庫強化等、従来リニアTV中心に投資されてきたブランド広告予算獲得に向けて積極的な動きを見せています。


上記に加えて、COVID-19による外出自粛規制の影響で、米国においてテレビ画面、すなわちコネクテッドTV(以下CTV)でのストリーミングコンテンツ視聴世帯は増加し、YouTubeのCTVでの視聴時間も急増しました。グローバルで見ても、長編映画やテレビ番組、ライブコンテンツといったカテゴリーで特に成長が見られたとのことで、従来のリニアTVが半ば占拠していたリビングルームでのYouTubeの存在感は増しているでしょう。


※参考リンク:

目次・テレビ画面でのYouTube視聴時間が急増・ブランドリフト調査がテレビ画面に対応・存在感を増すマストヘッド広告のテレビ画面配信テレビ画面でのYouTube視聴時間が...



広告主はこれに追随するかたちで、CTVへの投資強化を計画しています。2020年6月のIABのレポートによれば、調査対象となった米国の広告主の、2020年のCTV広告費平均額は前年比8%増の16百万ドルを見込んでおり、COVID-19による不況においても堅調に成長することが予測されています。


また、従来のリニアTV向けの予算をCTVへシフトすると回答した広告主は半数以上にのぼるとのことで、これがCTVの堅調な成長の大きな要因となっていることが予測されます。CTVのメリットを「ターゲティング」と回答する広告主は全体の75%と最も多く、「効果計測」や「インクリメンタルリーチ」も回答の約半数を占めることから、これらがリニアTVからCTVへの予算シフトを加速させているのでしょう。


※参考リンク:



Q2に関しては、COVID-19の影響でYouTube広告成長に半ばブレーキをかけるかたちとなったブランド広告ですが、Q2の終わりに向かって回復の兆しを見せているとのことですので、今後コネクテッドTV向けブランド広告予算をどれだけ獲得できるかが鍵となりそうです。


Q2はCOVID-19により苦戦を強いられたものの、凄まじいスピード感でコマース領域の強化とブランド広告予算の獲得に動くGoogle。果たして2020年第3四半期の決算はどのような結果となるのでしょうか。引き続き注目していきたいと思います!

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