【連載】突撃!隣のマーケター第5回:株式会社LIFULL「インハウスとは、ビジョンを実現するための手段である」

広告運用などのマーケティング活動を自社で内製化する「インハウス化」。ここ数年、日本においてもインハウスの流れが加速しているという現状がある一方、インハウスをどう捉えるかは、企業によって異なるのではないだろうか。

同連載では、毎回異なるインハウスカルチャーを持つ企業にアタラの井谷が突撃し、「お宅のインハウスカルチャーとは何ぞや?」をインタビューしていく。

株式会社LIFULLのコーポレートサイトです。「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージの下、世界中の人々へライフソリューションを広めていきます。



話し手:株式会社LIFULL
LIFULL HOME’S事業本部 CX戦略部 オムニチャネルマーケティングユニット
ユニット長 菅野勇太さん
CXプランニング2グループ 東山佳子さん

聞き手:アタラ合同会社 井谷麻矢可

目次

  • ビジョンを実現するための手段としてのインハウス
  • データ活用こそがインハウスの強み
  • 双方向にコミュニケーション可能なOne to Oneマーケティングで顧客体験価値の向上を狙う
  • 誰にでも信頼されるブランドになるために


  • 第5回となる今回突撃したのは、「あらゆるLIFEを、FULLに。」をコーポレートメッセージに掲げ、主要サービスである不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」をはじめ、人生・暮らしを豊かにするさまざまなサービスを世界63ヶ国で提供している株式会社LIFULL。


    インハウス化を推進する社風の同社では、インハウスでのウェブ広告施策やインハウスの強みを活かしたデータ活用、CRM施策に注力してきた。現在は、ユーザーと双方向でのコミュニケーションによる顧客体験価値の向上に向け、試行錯誤を繰り返している。これらのマーケティング活動の中心には、ビジョンを大切にするという同社の共通認識があるという。


    同社の大切にするビジョンとは何か、それを具現化する上でインハウスカルチャーがどう活きているのかについて、インタビューした。




    ビジョンを実現するための手段としてのインハウス

    今回インタビューした菅野さん、東山さんは「LIFULL HOME’S」の中でもオムニチャネルマーケティングユニットに在籍している。同ユニットは、ウェブやアプリだけでなく、店舗・電話・LINEなどさまざまなチャネルで住み替えを課題としているユーザーを支援する目的で設立されており、開発やプロモーション、マーケティング活動に関わるほぼ全てがインハウス化されていると菅野さんは語る。


    菅野:基本的には、サービスづくりもプロモーションも極力インハウス化していきたいと思っています。ただし100%インハウス化すればよいとも考えておらず、例えば新規事業をスピーディに展開する必要があったり、新領域において家庭教師のような形で外部から知見をいただきたかったりする場合はアウトソースを推奨しています。つまり、ある程度成熟してきたサービスに関してはインハウス化に努めているといえるかもしれません。


    弊社はビジョンを非常に重要視する会社であり、こうしたインハウスカルチャーが子会社も含め「当たり前化」しているのは、ビジョンを実現する上でのメリットが大きいからだと思います。





    東山:ビジョンは事業部、ユニット、グループごとにあるのですが、ビジョンを決定する際は各メンバーにアンケートをとり、認識に相違がないことを徹底します。さらに決定したビジョンを具現化する方法として、1年後にどういった価値を提供できるかをディスカッションする会議を設けています。実際のユーザーを想像し、今はない手段としてどういったものが必要かを考え、1年後にできるプロダクトの共通認識を持つようにしています。






    社員証とともに常に携帯する「LIFULL Actカード」。常に意識しておくべきビジョンが記載されている。




    データ活用こそがインハウスの強み

    インハウス化することのメリットの一つに1st Party データをさまざまな施策にフル活用できるという点がある。しかし、データは溜めているものの仕組み化されておらず施策に活用できない、または部署ごとにデータが分断されており、統合できていないという企業は多いのではないだろうか。同社では「データの民主化」をビジョンの一つとして掲げ、データの一元化、活用のための仕組みの構築も行ってきた。


    菅野:まず、部署やサービスごとに利用するツールが異なることでデータが集約されないという課題はよくあると思います。弊社でも3~4年前までは部署ごとにツールがバラバラでしたが、統合に向かったきっかけはやはりビジョンの実現であり、2016年に行われたリブランディングでした。これまで弊社は不動産業界に強いイメージが先行していましたが、リブランディングを経て、不動産業界以外への多角化も加速させ、一人一人の暮らしや人生に一生寄り添うという方針が掲げられました。


    これにより100社100ヵ国というスローガンが打ち立てられたものの、100社それぞれが異なるデータベースで管理した場合、1社内でのOne to Oneコミュニケーションはできたとしても、複数社のサービスにまたがるユーザーコミュニケーションは難しくなります。そこで、全社共通の顧客管理基盤を作ろうという話になり、全社のCRMデータをSalesforceに集約、あらゆるコミュニケーションチャネルに活用できる体制を構築してきました。


    また、誰もが深くデータを活用できる環境を整えると同時に、データアナリストなどのデータの専門家になるべく頼らないようにもしています。弊社ではマーケターやプランナーであってもアクセス解析などのスキルを要求されるので、ツール選定の際には皆が使いやすい、データに触れやすいものを選ぶようにしています。



    現在はCRMシステムだけでなく、DMPやBIツールも全社共通化されており、コミュニケーションツールや開発環境の統合も進んでいるという。ツールの共通化はデータ活用の面だけでなく、部署を横断したナレッジの共有においても利点があるという。


    菅野:「この人が異動になったら全てが終わる」といった事態を防ぐため、各部署がどのような施策を行い、どんな結果を得られたのかをウェブ上にドキュメント化することで全社的に知見を残していくプロジェクトが1年ほど前から始まりました。


    東山:ユニークなのは、こうしたプロジェクトがトップダウンではなく、職種を問わず問題意識を抱える有志のメンバーで立ち上げられている点です。部署を超えて全社員がビジョンを共有しているからこそ、そういった空気が醸成されるのだと思います。










    CRMデータの基盤構築と時を同じくして、同社ではオムニチャネル化にも着手している。ウェブとリアルの情報以外に店頭や電話、チャットからの比較的センシティブな情報の取り扱いが増えたタイミングであり、セキュリティ面においても堅固な仕組みづくりを心がけたと菅野さんは振り返る。


    菅野:One to Oneのコミュニケーションというセンシティブなデータを扱う上で、いかに安全に活用できる環境を作るかという点は最後の難関でした。そういう意味でも、インハウスは都合が良いと思います。また、他社でもインハウスのメリットとしてスピード感を挙げられることは多いと思いますが、弊社においてもインハウスゆえのスピード感は非常に重要です。例えば、LIFULL HOME’Sはお問い合わせごとに課金が発生する反響課金モデルを採用しているため、かなりリニアな売上や利益のコントロールが必要です。そのため広告配信やメール配信を行う際に急なハンドリングが生じる場合も多く、インハウスだからこそスピーディな管理が実現できています。





    双方向にコミュニケーション可能なOne to Oneマーケティングで顧客体験価値の向上を狙う

    インハウスの強みを活かし、全社的なCRMデータの統合基盤を整備した同社。当初はそのデータを活用し、MAツールによるOne to Oneマーケティング施策を行っていたが、実施していくうちにある懸念が生じたのだという。


    菅野:我々のマーケティング活動はコーポレートメッセージに「あらゆるLIFE」とあるように、あらゆる人、つまり一人一人のユーザーに対していかに寄り添った対応をするかに尽きると考えています。その手段としてのOne to Oneマーケティングを行うためにMAツールを導入したのですが、ツールが提供するのはユーザーの行動履歴をベースにした推測でのコミュニケーションであり、一方向的なセグメント配信の域を出ないのではないかと思うようになりました。


    業界のトレンド的にも「ポストCookie」が叫ばれる中、今後我々は顧客の体験価値をいかに作っていくかが重要になると考えています。顧客の体験価値を最大化させるためには、ツールに依存して一方的に情報配信を行うのではなく、まずはエンドユーザーが何に困っているのかをきちんとヒアリングし、有人対応を絡めたヒューマニティのある対話型のコミュニケーションにシフトするべきだという考えに行き着きました。


    東山:それを実現する手段として、私たちはLINEに着目しました。「この物件のこの情報が気になる」といったその場で解決するコミュニケーションにはウェブチャットが向いているかもしれませんが、じっくり自分のペースで人生や住居、生活について考えたいというケースには不向きです。LINE公式アカウント(以下、LINE)にお友だち登録していただければ、潜在層段階においても顕在層段階においても、フルファネルで柔軟かつ長期的にコミュニケーションを取ることができます。


    菅野:我々はLINEを単なるプロモーションメディアではなく、CRMとして活用したかったのです。そのためには、集まったお友だちが誰なのか、どの経路で追加されたのかを把握しておく必要があります。LINEデフォルトの機能として性別、年齢、エリアなどのデモグラフィック別配信はできますが、我々の実現したいOne to Oneマーケティングを行うには粒度が粗かったため、自社のオウンドメディアからお友だち登録を促し、その瞬間にできるだけ多くのデータを紐付けられるように開発。そのデータを基に、ファネルの各層にいるユーザーに対して最適なコミュニケーションが取れる仕組みを構築しました。


    また、LINEならではの「対話」機能もOne to Oneマーケティングに向いていると判断しました。LINEのトーク画面上でチャットボットと対話しながら各ユーザーの悩みや希望に応えることで、LINEがコンシェルジュのような役割を果たします。



    LINEにおけるユーザーのカスタマージャーニーのどの段階においてもLIFULL HOME’Sが伴走している状態が理想であり、まずは幅広い情報を提供し、どのような状況かがより細かく分かったユーザーに対しては、その人が必要な情報を提供するという方法で、双方向のコミュニケーションを図っているという。


    東山:配信内容の例については、潜在層のユーザーに対しては「あなたにおすすめの間取りは?」といったAI診断や住み替えにおけるTips記事の配信などを行います。具体的な検索条件を自分の言葉で話せる方は多くはないので、そこをAIが提案して引き出すというプロセスです。もう少し条件が具体化しているユーザーには、LIFULL HOME’Sで登録した物件に情報更新があった際にLINEへ更新通知を行います。





    誰にでも信頼されるブランドになるために

    ユーザーが自ら進んで提供するデータの価値がますます重要になる時代において、LIFULLが重視する双方向コミュニケーションに重きを置いたマーケティングは追い風となっているといえそうだ。今後は発展型として、誰にでも信頼されるブランドになるために顧客満足度を高めることを当面のKPIにしたいと菅野さんは語る。


    菅野:ユーザーに信頼されないと進んで情報開示してもらえないという時代の流れもあるため、目先の利益にこだわりすぎず、顧客満足度をいかに上げるかが今後のキーポイントになると思っています。そのためには一過性のお付き合いに終わるのではなく、住み替えを起点とした総合的な暮らしのコンシェルジュになる必要があります。


    東山:例えば入居後もパーソナライズされたコミュニケーションです。入居した地域の行政情報やスーパーの情報などが配信されれば便利ですし、住み替え直後のアカウントブロックを防げます。他にも賃貸契約後、次のステップとしての物件売買につなげるなど、大きな意味でユーザーのLTVを最大化させる部分に今後は取り組んでいきたいですね。


    菅野:One to Oneの対応で、いかにきめ細かくコミュニケーションするかが全てだと思っており、そのためにはパーソナルデータが必須です。パーソナルデータの提供は、信頼感がなければ成り立たないこと。こうしたセンシティブなデータを扱う点、データを使ってスピーディに具体化させる点、そして施策を通して得られたナレッジを、部署を超えて共有し、社内に蓄積させられる点で、インハウス化のメリットは非常に大きいと考えています。



    「あらゆるLIFEを、FULLに。」というビジョンを具現化するためには、データの活用は欠かせないと繰り返し語る菅野さんと東山さん。時代の流れを見据えつつ、データ活用やマーケティングの在り方をこれまで試行錯誤し続けてきたことが伺えた。インハウス化によるデータ活用の柔軟性やスピード感、ノウハウの蓄積は、こうした挑戦を強力に下支えしているのではないだろうか。


    株式会社LIFULLにとってのインハウスとは?

    「ビジョンを実現するための手段である」



    菅野さん、東山さん、どうもありがとうございました!




    ※過去の連載※

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