【対談】Facebook秋葉さんに聞く:クロスデバイス・クロスチャネルかつ人ベースで分析できる、Facebookアトリビューションの実力

Cookieからの脱却を目指し、”人”ベースでの効果測定に強みを持つFacebook。その進化の一つとして「Facebookアトリビューション」という機能がリリースされていることをご存じでしょうか。

Facebookアトリビューションは無料で提供されており、設定さえすればクロスデバイス・クロスチャネルでの分析が可能です。つまり、コンバージョンへ至るまでに接触したFacebook内外のタッチポイントの貢献度を、横串で評価することができます。しかし日本ではまだメジャーでなく、詳しくはご存じでない方が多いのではないでしょうか。

そこで、今回はFacebookアトリビューションの強みや活用イメージについて、Facebook Japanの秋葉さんにインタビューしてきました。


参考リンク:
Facebookアトリビューションについて│ビジネスヘルプセンター


話し手:Facebook Japan
Marketing Science Lead 秋葉大輔さん

聞き手:アタラ合同会社
チーフコンサルタント 浅田梨沙


目次

・Facebookアトリビューションとは
・Facebookのデータに基づいたアトリビューションモデルはインクリメンタリティに基づく
・他社プラットフォームのビュースルー計測も可能
・カスタマージャーニーの描き方の一つとして




Facebookアトリビューションとは

浅田:今日はFacebookアトリビューションについて詳しくお話を伺いたいと思います。まず秋葉さんの自己紹介と、普段どのような業務をされているのかを簡単にお話しいただけますか。


秋葉:Facebookに入って5年半ぐらい経つのですが、マーケティングサイエンスの仕事をしています。マーケティングサイエンスというのは、基本的にはデータのスペシャリストです。データ分析スキルなどをベースにして、クライアントである広告主により良いマーケティング、広告や投資をする意思決定をしていただくお手伝いをしています。


浅田:ありがとうございます。今回お話を伺いたいと思ったきっかけは、自分が担当しているクライアントにFacebookアトリビューションを導入できないかと調べたことでした。あまりオープンになっている情報がなくて、分からないことが多かったんです。日本ではまだあまり馴染みがないかと思いますので、Facebookアトリビューションの概要からご説明いただけますか。


秋葉:Facebookアトリビューションは、広告主の皆さまにより良い広告の運用をしていただくために提供しているソリューションです。アトリビューションはどの広告のタッチポイントがどれだけ売上に貢献したかをカスタマージャーニーの中で判断していくものですが、日本ではコンバージョン前の最後のクリックだけを貢献として認める、いわゆるラストクリックアトリビューションが一般的になっています。弊社としては、それだと最後のクリック以外のタッチポイント、例えば動画広告などの効果が過小評価されてしまうため、広告主の最適な広告投資判断から外れてしまうと考えています。


Facebookアトリビューションの特徴は、人ベースのカスタマージャーニーを補足した上で、さまざまなアトリビューションモデルで貢献度を評価できる点にあります。


ポイントは二つです。一つ目が、まずブラウザでのコンバージョンにおいての問題で「Cookieと人」についてです。Cookieはブラウザユニークに発行されるので、Cookieベースの広告測定ツールだと、1人が複数ブラウザを使っているような環境下では1人に対し複数クッキーが発行され、結果それぞれ違う人間と認識されてしまうんですね。我々のデータでは1人あたりCookieを平均7個持っているという調査結果がありますが、この場合1人の人物が7人の別の人に見えてしまいます。結果、本来1人のはずのカスタマージャーニーが分断されてしまい、全体のカスタマージャーニーを捕捉することができないという問題があります。


そこに私たちなりに回答を出しているのが「人ベース」のソリューションを提供することです。Facebookは基本的にはログイン情報を持っているので、複数のCookieがあったとしても、一つのFacebook ID、人ベースに戻すことができます。人ベースのカスタマージャーニー、つまりコンバージョンパスを提供することが可能なのです。


二つ目は、アトリビューションモデルについてです。いわゆるラストクリックアトリビューションはコンバージョンが起きる最後にクリックした広告のみに100%の貢献度を与えるようなモデルです。先ほど申し上げたとおり、お客さまはコンバージョンに至るまでに、いろんな動線でいろんなタッチポイントに触れていくので、その貢献度を評価するのが最後のクリックだけでいいのかという問題があります。そこで、我々は「データに基づいたアトリビューションモデル」を提供しています。


参考リンク:
データに基づいたアトリビューション





Facebookのデータに基づいたアトリビューションモデルはインクリメンタリティに基づく

浅田:ラストクリックや接点ベースモデルだけでなく「データに基づいたアトリビューションモデル」を用意されていることがポイントだと思います。

「データに基づいたアトリビューションモデル」と聞いてぱっと浮かんだのが、Googleでした。Googleは以前から「データドリブンアトリビューション(以下、DDA)」を提供されています。コンバージョンにつながりやすい経路や価値の高いキーワードを割り出し、データを基に広告主固有のアトリビューションモデルを構築するというのがGoogleにおけるDDAなのですが、Facebookのヘルプページを読む限り、定義が異なるかなと思いました。なので、Facebookの「データに基づいたアトリビューションモデル」はどういうものなのか、詳しくお聞きしたいです。


参考リンク:

複雑化するユーザーの行動テクノロジーの進歩によりスマートフォンが普及してから、ユーザーのオンライン行動は劇的に変化しています。ウェブサイトで商品を購入する際...


秋葉:先ほどのラストクリックアトリビューションの問題に対する我々なりの一つの答えなのですが、「インクリメンタリティ」を概念として抱えているものです。例えば、スーパーマーケットでレジの列に並んでいる人にチラシを配って、購入(=コンバージョン)に寄与したチラシの数を数えたら、もちろん数は多いんですけれども、じゃあ本当にチラシがなかったら購入に至らなかったかといえば、かなり疑わしいと思います。


ラストクリックアトリビューションを使っているとそのモデルの特性上、そのチラシ(=購入直前の広告)がなくても購入に至った貢献分も加味されてしまうため、実際の広告効果よりもかなり高く評価してしまうところがビジネスのリスクになります。


結果として、過分な投資をしてしまいやすい。そういったところに投資が偏ることによりいわゆる需要創造への投資が後回しになってしまい、ビジネスの継続的な成長を妨げてしまうと考えています。


この問題に対する我々の答えは、チラシ(=広告)があったときとなかったときとで、どのくらい売上が違うのかという差分を見ることです。それをインクリメンタリティという概念で呼んでいます。要はビジネスの成長分だけに広告投資をすることができれば、必ずお客さまのビジネスは継続的に成長していくというのが、我々なりの見解です。


浅田:コンバージョンリフトテストによって確認できる増分効果ですね。


秋葉:はい。それからブランドリフトも提供しています。これらをテストすることによって、この広告があったとき、なかったときという、要はパラレルワールドみたいなものをつくって比べることができます。それによって広告が純粋にもたらしたビジネスの成長分、あるいはブランドの指標の成長分だけに投資をするという判断ができるようになります。


テスト・コントロール群を使った対照実験という、最も厳密かつ科学で基本的な検証を採用しています。これをマーケティングで応用できる実験環境をつくっています。実際に得られた過去データもかなりの量がありますので、厳密なデータを基にした予測値を見られることも強みです。


そのコンバージョンリフトテストを、全世界いろいろな広告主さまと実施させていただいています。我々の「データに基づいたアトリビューション」は、その大量のリフト調査の結果を基にして、どういった形で広告と接触した場合は、このぐらいがインクリメンタリティ分、広告が生み出した増分は何件と予測するモデルです。つまり実際に行われたコンバージョンリフトテストをデータの基として、それから増分を予測するような機械学習モデルがつくられています。予測された増分と実際の増分はテストから判明するのですが、それをバリデーション、どの程度エラーがあるのかをチェックしながら常に機械学習モデルを更新し続けています。


先ほど申し上げたとおり、ラストクリックアトリビューションには弱点があるのですが、日本では実際使われているお客さまは非常に多いです。ビジネスの成長分に広告投資をするには、Facebookアトリビューションの「データに基づいたアトリビューション」の値を見ていただくと、そのキャンペーンが生み出したインクリメンタリティの予測値が表示されますので、それをご覧になっていただくのが一番早いかなと思います。




Facebookアトリビューションの画面(クリックで拡大)


浅田:Facebookアトリビューションを使用するとデータに基づいたアトリビューションの数字が確認できるということは、コンバージョンリフトテストを実施していなくても予測値が出せるということですか。



秋葉:はい、出せます。


浅田:それは、お客さま自身のコンバージョンリフトテスト結果ではなく、全世界のFacebookの広告主がコンバージョンリフトテストを実施した際の結果を基にした、機械学習による予測モデル。


秋葉:そうです、おっしゃるとおりです。


浅田:では実測値ではないけれども、おそらくコンバージョンリフトテストを実施したらこういう結果が出ただろうというのが、Facebookアトリビューションを実施するだけで確認できるということですね。


秋葉:おっしゃるとおりです。


浅田:便利ですね。


秋葉:コンバージョンリフトテストを実施するには「テストと分析」機能を使うか、弊社の担当がついて実施するケースもありますが難しい部分もあります。予算があまりない中でやっても、増分はなかなか結果に出づらい部分もありますので。もちろん試験的にやっていただけるお客さまには、実際にリフトテストをしていただくことをお勧めしていますが、なかなか難しいお客さまもいらっしゃるので、そういった場合はまず「データに基づいたアトリビューション」の値を見ていただくのが、最も簡単に増分価値を把握する方法になります。


浅田:ちなみにとてもニッチな商材とか、例えば日本でしか展開していないようなサービスもあると思いますが、それも精度としては問題ないですか。


秋葉:精度検証はさまざまに実施しています。弊社にはいろいろな業種、さまざまなタイプのデータがあり、それらを加味した上での予測値になっているんですね。どの業種とか、どの国とか、どのタイプの商品とかを考慮した上で、毎週かなりの数のコンバージョンリフトを実際に設定して実施しています。ですので、最初のものとして見ていただく分には問題ないものになっていると考えています。


浅田:おそらく最初にインクリメンタリティを計測しようという課題があり、そのためのコンバージョンリフトテストの流れで、このデータはアトリビューション分析にも有効だよね、という流れで直近に生まれてきたものがFacebookアトリビューションになるのでしょうか。


秋葉:そうです。ベータ版を2019年にリリースしました。


浅田:整理すると、キーになるのが人ベースということと、インクリメンタリティを基にしたデータを基にしたアトリビューションというところ。


秋葉:おそらく他社さんもさまざまに取り組まれていると思いますが、実際のコンバージョンの差まではあまり踏み込んでいないのではないでしょうか。弊社はコンバージョンリフトテストを始めて5~6年経ち、過去からずっと蓄積されたデータがある、それに基づいた機械学習モデルがある、というところが一番の強みだと思いますね。


浅田:Facebookアトリビューションの画面を見ていると、utmパラメータ(Googleアナリティクスのカスタムキャンペーン)を使ってチャネルが自動分類されていますよね。


参考リンク:
コンバージョンパフォーマンスを分析する│ビジネスヘルプセンター


秋葉:はい、他社のプラットフォームさんからの訪問データは、リファラーを見て判定・仕分けしています。仕分けの材料としてutmパラメータを使うこともあります。utmパラメータがあればその情報を使えますし、なければ別のロジックでどこから来たかを判定しています。いろいろな情報を使っており、utmパラメータはその仕分けの判断材料の一つです。


一番お勧めしているのは「プラットフォームの追加」機能からクリックタグを発行して設定していただくことで、これだとかなり正確になります。そうではなく、これを設定しなくても、クリックとか流入とかのデータをどこから来たのか仕分けするような仕組みはあるので、それを使って仕分けすることはできます。


浅田:ちなみに意図的に調整したい場合、設定変更は可能ですか。


秋葉:設定のデータソースから参照元ドメインで除外ができるので、もし要らないデータがあれば除外していただくことはできます。あるいはカスタムレポートを作って加工するかですね。


浅田:カスタムレポートで作ってしまうと「データに基づいたアトリビューション」の値は出せないですよね。


秋葉:「データに基づいたアトリビューション」の値が出るのはFacebookプラットフォームだけなので、出せないですね。


浅田:欲張りなことを言うと、Facebookプラットフォーム以外も、この「データに基づいたアトリビューション」で評価できるようになるといいなと思いました。


秋葉:おっしゃるとおりだと思います。そこはまだ、乞うご期待としか言えないところではあります。




他社プラットフォームのビュースルー計測も可能

浅田:次にビュー計測について伺います。メディアを横断してインプレッションを計測できる、つまりビュースルーアトリビューション分析も可能になると知って驚きました。Facebookアトリビューションではどのようにビュースルーを計測するのでしょうか。


秋葉:まずビューに関して言うと、Facebookプラットフォームで配信した広告キャンペーンは自動でフィードするような形になっています。他社プラットフォームは、基本的には流入もしくはクリックベースのデータです。もしインプレッションデータを追加したい場合は、Facebookアトリビューションからタグを設定していただく必要があり、媒体個別の開発対応が必要になってきます。


その中でも「事前設定済み」の対象メディア(Google Ads、Bing、Sizmek など)であれば、ガイダンスに従って設定していただくだけで比較的簡単にインプレッションを計測することも可能です。


参考リンク:
プラットフォームを追加する│ビジネスヘルプセンター


秋葉:仕組みは、基本的には各媒体さんの仕様によります。一般的なビューの計測は、いわゆるビュータグといわれているJavaScriptで、広告が読み出された瞬間にFacebookの計測サーバに通知するパターンと、すごく小さい一つ一つのピクセルを読み込むことで通知するという2パターンあると理解していただいてよいと思います。


例えば動的にJavaScriptを使えないお客さまや媒体もいらっしゃるので、その場合は一つ一つのピクセルタグを読み出してもらうことで対応していますし、そうでなければ動的になんらかの通知をしていただくという形で計測しています。


浅田:個別のタグ開発が必要と聞くと結構ハードルが高く感じてしまうのですが、今導入されている方々はスムーズに進みましたか。


秋葉:ビューに関しては、やはりFacebookプラットフォーム以外はなかなか難しい、ハードルが高いですね。ビュー計測を実現できている会社さんはほとんどいません。ただ、ベストよりはベターと我々は考えていて、ビュー計測が難しい場合は、まずビジットやクリックベースのデータをつなげてカスタマージャーニーを見ていただくのがベターなやり方であると考えています。


浅田:ベストがないというのは私も感じています。ビュースルーアトリビューションを実現するには費用が掛かり、クリックベースでのアトリビューションではFacebookのようなビュー貢献度合いの高いメディアの評価が下がってしまう。なので今まではコンバージョンリフトテストを実施して、費用対インクリメンタリティの数字を見ていました。しかしテストを常に実施し続けるのも工数がかかる。ベターを探る解の一つとして、Facebookアトリビューションは有効なのではないかと期待しています。少なくとも無料で使用できる機能なので、まずは見てみると良いですよね。


秋葉:ありがとうございます。我が意を得たり、という感じです。弊社ではマーケティング・ミックス・モデリングも推し進めています。いろいろな視座を集めて、お客さまに良い判断をしていただきたいですね。





カスタマージャーニーの描き方の一つとして

浅田:それでは最後に、今後のFacebookアトリビューションの展望について伺いたいと思います。


秋葉:まずは今のFacebookアトリビューションをどう使っていただきたいかという点についてです。一つ目は繰り返しになってしまいますが、インクリメンタリティ、増分効果を見て活用していただきたい。増分の予測値を手軽に見ることができる、広告にあまりお金をかけなくても予測値を見ることができるので、ビジネスの増分だけに投資していただくことが可能になります。


二つ目は、コンバージョン動線を描き出すもう1個の材料として使っていただくという点です。やはりGoogle アナリティクスさんを使っていらっしゃる方が多いと思いますが、弊社とは計測の仕組みも違うので、もう1個の別のカスタマージャーニーの描き方として、Facebookの「人」のデータも材料として使っていただきたいなと思っています。


浅田:今後の進化について期待したいのは、もっと分かりやすくなると良いかなと。今、Facebookアトリビューションの画面を見ていても数字の見方や操作が分かりにくい部分もあり、もっとビジュアライズされたり、直感的に分かるようになっていくことも期待しています。


秋葉:そこはまさしくフィードバックをいただきたいところで(笑)。もちろん良いものを出す努力はしているのですが、やはり意見をいただいて改良していく必要があります。無料のツールであり、まずは簡単な設定をしていただければ使えるようになるので、皆さんから貴重なご意見をいただいて、より良いものに進化させていきたいなと考えています。


浅田:本日はありがとうございました。




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