【特別寄稿】真のユーザー価値を把握するための、正しいLTVの算出方法とは



※本記事は、adjust株式会社 カントリーマネージャーの佐々直紀さんよりご寄稿頂きました。


目次

・一般的なLTV算出方法の問題点
・LTVの計算式をカスタマイズして、全体像を把握する
・包括的な LTV から理解できること




一般的なLTV算出方法の問題点

一般的な顧客生涯価値(Life Time Value) の算出方法には、根本的な問題があります。LTVを「LTV = 1ユーザーあたりの平均収益 (ARPU) ÷ 離脱率」として計算すると、ユーザーが生む収益だけでその価値を判断することになるからです。つまり、この計算式ではアプリユーザーが別の手段によって生み出すことができる(そして実際に生み出した)価値を考慮することができず、計測結果の信頼も揺らぎかねません。


LTVを明確に理解していると思われる企業は全体の 32% に過ぎないという調査結果もあり、確実なデータに基づいて施策策定を実行しているマーケターはそれほど多くないのではないかと懸念されます。


モバイルマーケティングを大規模に行なっている企業の中には、収益目標の指標としてLTVを主要KPIにしている会社も多いと思います。LTVは、ユーザーがアプリと関わっている時間に生み出される価値を表しています。つまり、LTVをより正確に理解するためには、ユーザーがアプリを利用した時間そのもの(そしてそのアクティビティ)にも注目することが大切です。


そこで、収益額だけではなく、アプリに新たな価値を生み出すユーザーイベントをLTV の計算に織り込むよう、算出方法を見直すことをおすすめします。まずは自社アプリのユーザーが、どのようにアプリと関わっているかを理解することが大切です。例えば、アプリ内イベント(マッチングアプリの「いいね」や「マッチ」など)や外部イベント(ゲームアプリのシェアなど)に価値を割り当ててみましょう。施策効果の高いイベントのタイプは、アプリのカテゴリーによってそれぞれ異なることにも留意してください。




LTVの計算式をカスタマイズして、全体像を把握する

マッチングアプリを例にとって考えてみましょう。「Like」や「マッチ」、「メッセージの送信」などは、すべてアプリとして成功を収めるために重要なイベントです。これらのイベントは、たとえユーザーが課金を行わなくても、アプリに大きな価値を生み出したと言えます。同様に、そのアプリのロイヤルユーザーは、仮にプレミアムアカウントを購入していなくても、その価値を提供しています。


このタイプのユーザーは、アプリ内でアクティブに活動しているだけで、他のユーザーにポジティブなユーザー体験をもたらします。結果として、他のユーザーにより長くアプリを使わせたり、課金を促す効果があります。このようにして生み出される価値は、他のユーザーが発生させたアプリ内イベントという形で計測が可能となり、このロジックを適用してより正確なLTVを算出することができます。


以下は、Adjustの考えるアプリのカテゴリーに応じて計算式に含めることが可能なイベント例です。



最初のステップでは、アプリに関連するイベントの特定と、その値の設定を行います。次に、モバイル計測プロバイダー(以下MMP)を利用して、アプリ内イベントのデータを収集し、より包括的な(かつ正確な)LTV を、LTV = [カスタム値の合計] ÷ 離脱率 の形で計算します。また(集約済みのコストだけでなく)デバイス単位のコストデータが提供できるMMPを利用することで、最も正確なLTVを算出できるようになります。


それでは、マッチングアプリの例に戻って、各イベントに価値が割り当てられた場合のシナリオを想定してみましょう。アプリのプレミアムサービスの購入が500円/月、アプリ内広告が 100円/月、友達の勧誘が50円/友達、別のユーザーとの接触が10円/ユーザーと仮定します。


「ネットワークA」で獲得したユーザーは、平均3ヶ月後(広告表示 300円相当)に離脱し、また、獲得ユーザーの10%がプレミアムサービスを購入するとします(50円相当)。さらに、すべてのユーザーが平均1人の友達を勧誘 (50円相当)し、他のユーザーと10回接触したとします(100円相当)。これらを前提条件とし、「ネットワークA」のユーザーのカスタム LTV を計算すると、結果は500円になります。


これを、同様に3ヶ月後(広告は 300円相当)に離脱が発生し、10%がプレミアム サービスを購入する(50円相当)「ネットワーク B」 と比較してみます。但し、「ネットワーク B」 の友達勧誘の平均は 0.1(5円相当)で、他のユーザーとの接触が 2回(20円相当)と仮定します。この場合、「ネットワークB」 のユーザーのカスタム LTV は、375円と計算されます。






つまり、「ネットワーク A」 と「ネットワーク B」 が生む価値は異なるということです。同じ離脱率やアプリ内課金があったとしても、LTV の計算にカスタムイベントを取り入れることで、ユーザーの真の価値を理解することができるのです。これによって、アプリにとって最も価値のある重要なユーザーを獲得するためのキャンペーンの展開や、より適したネットワークパートナーの選択が可能となります。基本的な方法でLTVを計測するだけではどのネットワークも同一のLTVを提供するように見えるため、重要な差異を確認したり計算することはできません。


以上のように、ユーザーがアプリに提供する価値(関連すると考えられるアプリ内のアクティビティ)に基づいて、ネットワークを評価するためのデータや手段を得ることが大切です。パフォーマンスのより優れたネットワークに対する広告費用を増やすことで、より多くのユーザーを獲得できるようになります。さらに、包括的な LTVの算出方法をマーケティング戦略に取り込むことでより細かな気づきを得ることができ、エンゲージメントが高く、価値のあるユーザーを獲得するために、広告費用を配分できるようになります。




包括的な LTV から理解できること

ユーザーの特性やそれぞれの地域のカスタム LTV を調べることで、いつ、どこのユーザーがアプリにもっとも高い価値を生み出し、そのためのコストはどれぐらいなのかを、より正確に計測することができます。この手法によってユーザーの特性別 LTV を比較し、キャンペーンに活かすことができるようになります。


例えば、日本のユーザーのエンゲージメントは高いが、購入の割合が少ないとしましょう。このオーディエンスを、エンゲージメントは低いが購入の多い韓国のユーザーと比較することができます。既に読者の方の中には韓国のオーディエンスの方が実際に多くの価値を生み出すと推察している方もいらっしゃるかもしれませんが、こうした利益を正確に計測し、実際に確認することが重要です。


高いエンゲージメントを提供するユーザーを獲得して維持する方法も、同じように確認することができます。誰がすでに価値の高いユーザーか、どのイベントを優先的に計測すべきかが把握できるため、ターゲットを絞ったリターゲティングやリエンゲージメントに集中することができます。


これは単に価値を生むだけではなく、コストを削減することにもつながります。既存ユーザーの維持に比べて、新規ユーザーの獲得には5倍の広告費がかかると言われています。 しかし、エンゲージメントやユーザーの継続など、ユーザー獲得後に行なうマーケティングにかかるコストは、全体のわずか 12% に過ぎません。マーケターが継続率の施策を過小評価してしまうと、収益を取り逃がしてしまうことにもなりかねません。


このカスタムLTV をコストデータと組み合わせ、マーケティングのプロがもっとも重要と位置付ける広告費用対効果 (ROAS) を算出すれば、より良い結果を得ることも可能です。真の ROI(アプリ内イベントの価値を加味した指標)を理解することで、それぞれのネットワークに対する支出が企業の目標にどのように貢献しているのかを、ひと目で理解できるようになります。


LTV は「クライアント計測にもっとも重要な指標」と言われており、だからこそLTVの計測 をできる限り正確にすることが必要になります。マーケターは、LTV の計算にアプリ内イベントを含めるという手順を追加することで、アプリの最適化に不可欠なユーザー価値の過小評価を回避できます。この重要指標を十分に理解して、より効果的なキャンペーンやクリエイティブ、ターゲティング施策を行いたいものです。


キーとなるのは、アプリ内課金や他のユーザーとの接触をアクティブに行なうユーザーの価値を考慮したLTV 計測です。アプリにとってもっとも重要なユーザーを獲得するために、この両方をマーケティング戦略に取り込むよう検討してください。LTV の算出結果は時間とともに向上するため、そのスタートは早ければ早いほど良いと言えます。




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