【対談】ドーモ株式会社 福﨑さんに聞く:広告運用者が意識しておくべきKPIマネジメントのコツ


クライアントや会社から提供されたKPIを追いかける事にひたすら終始している人は、意外と多いのではないでしょうか。また、日々の業務に臨む中で、提供されたKPI自体が果たして正しいのか、疑問に感じる事もあるかと思います。


2018年10月に実施した「ATARA LIVE 2018」において、「KPIマネジメントの実施方法とストラテジーマップの作成」と題しドーモ株式会社の福﨑一郎さんに講演いただいたKPIのマネジメント方法についてのセッションが好評を博しました。


※参考:ATARA LIVE 2018イベントレポート

これからのデータドリブンマーケティングを語り尽くす2018年10月10日(水)に開催された「ATARA LIVE 2018」のイベントレポートをお届けします。「ATARA LIVE 2018」は...


今回は、同セッションの内容をより深掘りし、KPIの正しい可視化方法やアクショナブルな指標の見つけ方、さらに現場で日々広告運用に携わる広告運用者は何に気をつけてKPIをマネジメントすれば良いのかについて、伺いました。


話し手:ドーモ株式会社 ビジネスコンサルタント 福﨑一郎さん
聞き手:アタラ合同会社 CEO 杉原剛
編集:アタラ合同会社 Unyoo.jp編集部 井谷麻矢可




KPIの正しい可視化とは?



杉原:まずは福﨑さんのご経歴を教えて下さい。


福﨑:大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社し、10年間コンサルタント職に就いていました。その後オランダの学術系出版社のセールスディレクターとして研究者向けのサービスを扱うプラットフォームを担当し、2017年よりドーモ株式会社(以下Domo)でビジネスコンサルタントをしています。



杉原:Domoにおけるビジネスコンサルタントはどういった役割なのでしょうか?


福﨑:基本的にはDomoをご契約のお客様が実際にDomoを利用なさる際の初期段階の導入支援を行っています。Domoはクラウドのビジネス会員向けのプラットフォームですが、様々な事ができるがゆえに、何から手をつけて良いのかわからないといった状況になりがちです。そうした中からお客様の実現したい事を聞き取り、実際に使っていただけるようにトレーニングを行うまでが私の主な役割です。


杉原:ありがとうございます。確かにDomo上では様々な指標を可視化できますが、ただ可視化するだけでは意味がなく、それを迅速・適切なアクションに繋げなければ意味がないと思います。そのためには、KPIをしっかりと管理する事が重要なのではないでしょうか。


福﨑:はい、お客様と向き合う中で、最近特にKPIマネジメントの重要性を実感しています。KPIという概念は、非常にメジャーな言葉ゆえに皆さんご存知なのですが、ただなんとなくそれをダッシュボードで可視化して追っているだけでは、すごく表面的な部分しか見えないと思います。

会社の売上やコストは当然可視化する事が多いと思いますが、ただそれを追っていても数字は伸びません。ではどうやってビジネスを発展させていくのかというと、やはり一度内部のデータを使って現状を分析し、課題を抽出する必要があります。



これは経営者層だけでなく、現場で実務にあたる運用者の皆さんにとっても重要な事です。当然環境は日々変化するので、その中での自分たちのポジションを把握する事が必要です。

2つ目に重要なのが、その課題やビジョンに対して、ぼやっとした未来ではなく明確なゴール設定を設ける事。例えば売上ならば3年後までに倍にする、新しい業界のセグメントを攻めて、その中でリーダーポジションを確立する、などです。

これができて初めて計画を作成する事ができ、実行に移れます。それをモニタリングするのが「正しい可視化」です。KPIの位置付けって、マネジメントの考え方のフローでは一番下なんですね。このフローを踏まえた上でKPIを追っているならば問題はありませんが、なんとなく追いかけているKPIが結構多いのではないでしょうか。


杉原:このフローを踏まえないと、腹落ちしないケースも多そうですね。今のままでいいんだっけ?と思いながらなんとなくKPIを追いかけていると、やはりうまく達成できなかったり。


福﨑:ストラテジーマップ(長期的な戦略目標を図式化したもの)の構造を見ていただくとわかりやすいと思います。



マップ最上段にある「売上」や「コスト」、は誰しもが着目します。また、「内部プロセスの視点」レイヤーの、新規顧客の獲得数や営業の訪問数なども比較的見られているのですが、図の上から2番めの「顧客の視点」レイヤーが見えていない事がとても多いです。


杉原:顧客の視点が弱い企業が多いと。ダッシュボード構築を支援される際にも、その視点の重要性は説かれるのでしょうか?


福﨑:はい。ストラテジーマップに沿って考えていくと、顧客の視点の重要性が理解できると思います。ここに関わる指標を可視化する事も大事です。

また、社内の様々な部署間で、それぞれに追いかけるKPIが明確ではない場合などに、このフレームワークに沿って考えるとわかりやすく、整理もしやすいと思います。




KPIマネジメントのカギは「CSF」



杉原:以前ATARA LIVE 2018にご登壇いただいた際に、全体のパフォーマンスをマネジメントするコツとして、Critical Success Factor(重要成功要因:以下CSF)の重要性について教えていただきました。KPIとはつまり、CSFを測るための指標なのですよね?


福﨑:はい。CSFとは、図のSection Eのように詰まっている部分を指します。ここを改善し、どの程度スムーズに流れているかを測るのがKPIです。CSFを一定以上改善していくとパフォーマンスは上がらなくなり、他の部分に新たなCSFが発生します。つまり、CSFは移動するものなのです。だからこそ、それに伴って必然的に追うべきKPIも変化します。


現状分析や課題抽出を行っていくと、CSFは自然と決まってきます。それらを行わずに「CSFはなんだろう?」と探しても、見つけるのは難しいと思いますね。



杉原:一度きちんと立ち戻って、現状分析と課題抽出をする事が大切ですね。その課題がどのくらい解決できたかも、CSFになりうるでしょうし。


福﨑:特に現場で運用していらっしゃるプレイヤーの方は、日々の業務に追われ、どうしても会社が示したKPIのみを追ってしまうという事も多いかもしれません。でも、やはり一度棚卸ししてみて、「そもそもなぜこの数字を追っているんだっけ?」「本当に必要なんだっけ?」と立ち止まって整理する事は非常に大事かなと思いますね。


杉原:ただ、先ほどおっしゃっていたように、CSFは一つ解消するとまた別のところで発生したりしますよね。結構、ムービング・ターゲットだと思いますが、そういう意識をそもそも持っていない人が意外と多いような気がしています。


福﨑:「今年はこれを解決、以上!」で思考停止してしまって、すでに次のCSFに移ってしまっている事を把握できていないケースも多いと思います。だからやはり、結果が出ないときは、まず一度立ち戻って整理するべきです。そういう時にDomoのようなビジネスプラットフォームが便利なのだと思います。一度やっておしまいではなく、自動的に常に新しいデータで同じ分析結果が可視化されるという状況が作れるので。


杉原:CSFを発見するコツはありますか?


福﨑:あまり固定的に考えすぎない事かと思います。例えばあるマーケットに対してすごいチャンスがあると仮定して営業をかけ、2、3件立て続けに契約が取れたのにあとが続かない場合などは、そもそも新しいマーケットを見つける必要があるのかもしれない。あまり固定的に考えすぎず、でもきちんと戦略的に考える、というのがやはり大事だと思います。




アクショナブルな指標とは



杉原:Domoなどでモニタリングする指標は、最終的に何らかのビジネス上の意思決定やアクションにつながらないと、そもそもKPIとしてモニタリングしなくて良いのではないかという話になると思います。ただ、どのKPIがアクションにつながるのかを考えるのって意外と難しいなと感じています。アクショナブルな指標を見つけるコツってあるのでしょうか?


福﨑:コツは、どんどん細分化していく事だと思います。例えば既存のお客様の契約更新率が悪かったとしたら、もっとドリルダウンして、業種別、顧客別に見ていくと、数字が悪い要因が特定できていきます。つまり「問題発生⇒アクション」ではなく「問題発生⇒原因追求⇒解決のためのアクション」という順を追うべきで、そのためにはある程度具体的に細分化していく必要があります。

また、アクションには繋がらないとしても把握しておく必要のあるデータはたくさんあります。それを様々な観点で見て、現状を理解する事が重要です。ただ、アクショナブルな指標ってすごく細かいので、あまり本質的ではない場合もあります。なので、実際にダッシュボードを作る時なんかにはより大きいレベルの概要把握のための指標も必要になります。


杉原:それはそれで必要なんですね。


福﨑:必要ですね。まとめると、まず全体像を把握した上で、特定の問題に関して詳細レベルまで掘っていき、腹落ちした状態でアクションする。これが一番アクショナブルなのではないでしょうか。



杉原:ここまでのお話は、比較的経営者視点でのKPIマネジメントについてお伺いしたかと思いますが、現場で実際に運用するプレイヤー視点でKPIをマネジメントする際に気をつけるべきポイントはありますか?


福﨑:現場では、やはり各人が個々の業務に責任を持って業務にあたっていると思うので、そこで設計も行うし、見るのもものすごく細かい数字、という事が普通だと思います。コストやコンバージョンは当然一番重要視されていると思いますし、当然追いかけていらっしゃると思いますが、それに加えて、もう少し引いた視点を持つ事が大事なのではないでしょうか。例えばマーケットとして、業種別だとどうか、傾向はあるのかなど、本来は見なければいけないものが、日々の細かい指標を追いかけるあまり見えていない事は往々にしてあると思います。

現場は本当に日々の運用のために必要な数字一個一個、施策の一つ一つがうまくいったか否かを見ていると思いますが、全体としての評価を常にモニタリングしていくと、だんだん上と繋がってくると思います。


杉原:例えば広告主と広告代理店という関係性だとすると、広告主がやりたい、達成したいと思うKPIやKGIを満たすために広告キャンペーンを打つと思いますが、良い意味でそれを一度疑ってみるのがすごく重要だと思います。広告主側の担当者の方自体、意外と上からgivenな形でKPIやKGIを与えられているかもしれない。本当にその指標で良いのかを一緒に考えるのはとても重要な事かと思います。


福﨑:そうですよね。また、クライアントから受けている仕事が、クライアントにとってどういう位置付けなのかを考える事も大事です。例えば、本当に認知向上といっても具体的にどれだけ認知度を上げたいと思っているのか、以前はそういった方向性でも、現在はどうなのか。こういった事は、自身の行った広告運用と当然関わってくる部分です。

それを対クライアントとディスカッションできるだけで、提案できる内容も変わってくると思います。


杉原:クライアントのビジネスに寄り添って、ゼロベースも含めて一緒に考える事が重要だという事ですね。インハウスでの広告運用ならばよりやりやすいかもしれませんね。


福﨑:そうですね、会社が広告の運用に何を求めているのかが理解しやすいですね。トランザクショナルに仕事をしてしまうと、どうしても自分の目の前の1業務1業務しか目に入らず、どうしても自分基準で見てしまいます。「今日は何件処理した」みたいな。そうなると、処理が目的になってしまうため、どうしても質は低下します。

そうならないためには、何のために自分の業務があるのかを先程のストラテジーマップに当てはめて考えてみると良いかもしれません。例えばある製品のマーケティングだったら、製品自体の全体の認知度がどの程度上がったか、ブランドイメージがどう変わったかは絶対に調査しているはずです。その中の手段の一つとして広告運用がある。なので、自分の業務の結果を把握しつつ、全体や他手段の結果も知っていたほうが、今後の提案も広がります。


杉原:そうなると、自分たちの範疇ではない部分まで相談できる・される関係性をクライアントと築けそうです。まずは自社やクライアントのビジネスを理解する事からですね。本日はどうもありがとうございました。

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