【連載】第二回 LIVE BOARDに聞く:日本のプログラマティックOOH最前線(プログラマティック広告最前線)

本連載の趣旨



デジタル広告が総広告費に占める割合はグローバルでみても年々増加しており、このデジタル広告のデファクトスタンダードとなっているのが、広告在庫の自動売買に対応するプログラマティック広告です。5Gに代表される通信システムの発達やIoTの普及も相まって、テレビや屋外/交通広告(以下OOH)といったデジタル広告に分類されない媒体においても、プログラマティック化が進んでいます。


そこで本連載では、マーケティング先進国の欧米の事例を中心にプログラマティック広告の最前線をお伝えするとともに、最前線の少し先の世界を考察しています。また、日本国内の最新事例についても、キーパーソンとの対談を通して紹介していきます。


第一回では、OOHのプログラマティック最新事情を欧米の事例を中心にご紹介し、少し先のプログラマティックOOHの世界についても考察しました。


リンク:

プログラマティック広告がデファクトスタンダードに電通イージス・ネットワークによる「世界の広告費成長率予測(2018~2020)」によれば、2018年の世界の総広告費に占...



第二回となる今回は、デジタルOOHの配信プラットフォームの運営および広告媒体の開拓、広告枠の販売事業を行う株式会社LIVE BOARD 代表取締役社長の神内一郎さんに、日本国内のプログラマティックOOHの最新事情についてお聞きしました!


リンク:
携帯電話ネットワークの運用データを活用し、日本初のインプレッションに基づくデジタルOOH広告の販売を実現

参考:
株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)と株式会社電通(以下、電通)は、両社の経営資源を活用し、 デジタルOOH広告(デジタルOut Of Home:以下、DO...



話し手:
株式会社 LIVE BOARD
代表取締役社長
神内 一郎さん
聞き手:
アタラ合同会社 コンサルタント 高瀬 優
※このインタビューは2019年2月に実施されました。


OOH特有の3つの課題



高瀬:まず、簡単に神内さんのプロフィールと現在の業務内容をご説明いただけますでしょうか。


神内:92年に電通に入社いたしまして、最初はクリエイティブ局というところでコピーライターをしていました。営業局に異動になってからは主に通信会社などIT系広告主のデータ事業やコンテンツ、ウェブサイトなどの構築にずっと関わってまいりました。


その中でJ-PHONEと合弁事業をつくってジャパン・モバイル・コミュニケーションズというモバイル広告会社を立ち上げたり、中国でのインターネット広告会社の立ち上げ、その他、スマートフォンの専門部署や、シンガポールでは東南アジアのプレミアムアドネットワークのエクスチェンジ事業などを立ち上げました。もうずっと立ち上げばかり携わっています。


今回またLIVE BOARDというデジタルOOHの媒体事業を立ち上げたばかりです。主に事業立ち上げと、デジタル領域、東南アジア等を中心としたグローバルの3つが僕の経歴の中心となっています。


高瀬:これまで様々な分野で新規事業を立ち上げられたご経歴があり、今回のLIVE BOARD立ち上げに至ったわけですね。


神内:今まで主にデジタルメディアをずっとやってきたのですが、今回はリアルメディアのビジネスモデルを転換させ、従来より標榜している「プログラマティックOOH」の実現を目指しているところです。


高瀬:ありがとうございます。早速ですが、2019年1月に発表されたGoogle Marketing Platform(以下GMP)を活用したプログラマティックOOHの実証実験について、具体的に話をお伺いできれば思います。


リンク:

株式会社電通(本社:東京都港区、社長:山本 敏博)と株式会社サイバー・コミュニケーションズ(本社:東京都中央区、社長:新澤 明男、略称「CCI」)は、OOH(屋外/...



神内:私がOOH局に来てから4年になるのですが、この4年間、プログラマティックOOHというものを実現しようとしていました。どのメディアにおいてもプログラマティックを実現するためには、プランニング、トレーディング(広告取引)、アドサービング(広告配信)の3つを統合する必要があるのですが、我々はこの4年間のロードマップで、まずアドサービングに注力していました。


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というのも、最初の私のナイーブなアイディアとして「オンラインのテクノロジーをそのままOOHに移植してプログラマティックOOHを実現すればいいじゃない」と思っていたのですが、OOHには特有のものがありました。


1つは、オンラインは基本的にベストエフォート型なので、ネットワークがつながっていて、表示されたら表示された分の課金するという形であり、しかもOne to Oneですよね。つまり1回の表示は1人に対する1回の表示になります。一方でOOHはベストエフォートではダメです。というのは、広告は確実に表示されることが前提にあります。また、OOHは1対多メディアであるということからも、いろいろなチャレンジがありました。


アドサービングの部分でも、GoogleとDoubleClick(当時)製品群を活用した広告実験を何度か行っており、その際に配信時の課題が見えてきました。


OOHの表示のさせ方はテレビと同じように編成があり、例えば10分間を一編成として、その中にコンテンツや広告などを順番に組み込んでいきます。しかし、オンラインのアドサーバーを活用して配信した場合、どんなに高速のインターネットであったとしてもやはり動画を表示させるまでにわずかのずれが生じます。このため編成に沿って表示されると、コンテンツの最後の部分が表示されなくなるという現象が起こります。


また、駅のコンコースなど、同時に複数の面で同じコンテツを表示させるような場合、各画面においてネットの配信タイミングが少しずつずれることによって、完全にシンクロした映像が流れないという問題も生じます。画面ごとの表示タイミングが揃わず、見ている人からするとすごく気持ちの悪い映像になってくるのです。


これらの課題を解決するために、オンラインのようなリアルタイムなストリーミングではなく、コンテンツを一旦ローカル側にダウンロードし、配信する方法を採用しています。現在約3600面のスクリーンにおいて、それぞれ個別のシステムで動いているサイネージに対して第三者広告配信を行うことができるようになりました。





次の課題がトレーディングです。オンラインも同様ですが、OOHはロングテールなので実はすごく細分化されたマーケットなのです。海外では、イギリスのように3社で87%が寡占している状況がありますが、日本はロングテールです。この原因にはビジネス構造の違いがあります。


海外は場所を持っているロケーションオーナーと、メディアを運用するメディアオーナーが分離しているのに対し、日本ではロケーションオーナーがそのままメディアオーナーになっているというケースが多いためです。海外では、空港運営会社や鉄道の運営会社などのロケーションオーナーがOOHメディア販売権を入札にかけ、落札したOOHメディアオーナーが媒体を運営するモデルであるのに対し、日本ではロケーションオーナーがそのままメディアオーナーになっているケースが多いのです。


そうすると、例えばビルがあるとすると、ビルの数だけ看板ができてしまうのです。例えば表参道で広告を出したいという希望があった場合、表参道のビル1軒1軒に電話とかメールとか、ファックスで「看板、空いていますか?」と聞いてまわる必要が発生するのです。空き枠1つを確認するだけでも膨大な時間がかかり、非常に手間のかかる効率の悪い作業が続いているのです。


高瀬:それは生産性に欠けますね。


神内:こういった課題を解決するために、オンラインの広告枠取引モデルを導入し、広告枠の買付から配信までを一気通貫に実施できる方法を探っていました。その一つのトライアルが1月にリリースさせていただいたGMPを活用した実証実験です。





最後まで残っている一番大きな課題が、OOHオーディエンスデータです。日本では他の媒体とも比較可能な標準OOH視聴率というものが存在しません。屋外広告の指標、駅の広告指標、電車の中の指標というものは存在するのですが、比較ができないのです。


広告主の立場に立ってみれば、例えば1億円の予算があったとして、OOHに出したい、テレビに出したい、オンラインで出したいという発想ではなく、最も効率的なROIを出してくれるメディア配分を求めています。オンライン、テレビ、新聞、OOHなど、異なるメディアであっても同じ尺度で比較ができて初めて、その投資効率が分かるはずですが、日本のOOH業界には他のメディアと比較可能な標準指標がない。そうすると、広告主の最初のプランニングの段階でOOHは落ちてしまうから、採用されないケースが目立つのです。



海外でOOHは「いけてるメディア」



高瀬:なるほど。ちなみに今までOOHはどのように効果測定されていたのでしょうか?


神内:それは経験と勘と真心…というと言い過ぎですが、もちろんOOHにも媒体調査は存在します。しかしサンプル数が首都圏に限定された比較的限定的なサンプルの調査であるため、他メディアと比較できるような指標にはなっていないのです。サンプル数が少ないので、年代によっては出現率が悪いといったことも起きてきます。


海外ではどう測定すればOOHが他メディアと比較可能な視聴率になるというグローバルガイドラインが2009年に発表されており、北米、南米、ヨーロッパ、中国やインドの団体が策定に参加しています。このガイドラインに基づいて、例えばイギリスではRoute、アメリカではgeopath、オーストラリアではMOVEといった団体がOOHの標準指標を定めているのです。


高瀬:計測の指標ですね。


神内:実は海外ではOOHは「いけてるメディア」なんです。OOH全体だと年率平均成長率は約5%、デジタルOOHだけでいうと13%以上の伸び率なんです。





しかし日本は年率平均成長率は0.6%ぐらいで横ばいです。標準指標の策定や、広告取引の自動化、さらに配信までの統合が実現すれば、この状況が打破できるのではないかと考え、LIVE BOARDの設立に至っています。OOHオーディエンスデータの測定方法も先ほど示したようなグローバルのメジャメントがあるので、それを採用したいと思っています。



広告の売買を大きく効率化



高瀬:ターゲティングという観点だと、いわゆるオーディエンスベースのターゲティングまでは難しいでしょうか。


神内:現状のOOHの広告取引においては、オンライン広告のようなインプレッション数やオーディエンスのアトリビューション情報もない状況なので、1月に実施したGMPを活用した自動取引から配信までの統合実験においては、枠が空いてるかどうかという情報と枠の価格のみが提供される形になっています。


高瀬:そうすると、広告主がディスプレイ&ビデオ360上で買い付けをするときは、どういうイメージなのでしょうか。


神内:単純に買う・買わないです。だから枠が空いている・空いていない、だけです。


高瀬:買い付けの単位は時間単位ですか。それとも事前に決められた枠単位でしょうか。


神内:枠単位ですね。


高瀬:では、自動買い付けまでを実証実験ではやってらっしゃるということですね。


神内:そうです。でも結局、ディスプレイ&ビデオ360上で申込みをして、ここのコンソールから申し込めるようになったというだけなのです。こんなことを言うと身もふたもないですが。


高瀬:そうしますと、クリエイティブの入稿も、ディスプレイ&ビデオ360上ではなく、指定のサーバーにアップロードするようなイメージでしょうか?


神内:そうです。コンテンツデリバリーネットワークを設定し、事前にメールでやりとりされ、考査が終わった広告クリエイティブのファイルを格納します。各サイネージごとのローカルシステムにこの広告クリエイティブをダウンロードしておき、どのクリエイティブを出すという指示だけが、アドサーバーから取り出されて、クリエイティブが流れます。


高瀬:今までは1個1個の枠に対して営業さんが電話をかけていたところが効率化されたことが一番大きいですね。


神内:そうです。先ほどの課題で説明したように、空いているかいないかを確認するのにすごい時間がかかっていた上に、例えばA社さんが買いますというメールでを送ってきたとして、B社さんも同じ枠を買いますと電話をかけてきたら、どっちが先なんだといった問題もありました。その段階ではもう売れて枠がない、あるのかないのかを媒体に確認しないと分からなかったのが、これだとシステム上で全て分かるようになります。


高瀬:要は同じタイミングで空いているか空いていないかが分かるようになる。


神内:はい。これが分からないといわゆる売り違いという悲しい事故を起こしてしまうのです。



モバイル空間統計データやGPSを計測に活用



高瀬:今回、GMPでは自動買い付けから配信のところまでということですが、プランニングの部分の詳細なロードマップや、今後どういうターゲティングや買い付けが可能になるのかを、可能な範囲でお伺いできればと思います。


神内:計測するためにさまざまな手法がありますが、今LIVE BOARDでやろうとしているのは、モバイル空間統計データやGPSなどの様々なデータソースを活用して、何人がスクリーンの前にいるのかを計測するという試みです。例えば実際サイネージが置いてあったとしても、ビルの影だったりすると見えないエリアが出てきますよね。


(画像タップで拡大可能です)



参考:
モバイル空間統計は、いつ・どんな人が・どこから・どこへ・何人移動したかがわかる人口の統計情報です。



神内:そのため、視認範囲はどこかを正確にまず定義します。媒体ごとに、視認距離はどこまであって、そのエリアの中でどこまでが見えているのかを定義したら、その中に何人が今いるのかを推計します。それがまずベースとなります。


次に視認率、何人が見ているのかはモデルをつくり、例えば70%の人がこの媒体だったら見るということであれば0.7を掛け、100人がいたとすれば70人が見ましたというような計測をします。さらに、屋内や地下など、GPSが計測できない場所については他の手法を活用して計測するわけですけど、例えばカメラを設置すれば、何人の人がいて、何人の人が見ているかが分かったりだとか、あるいはWi-Fiとかビーコンを使うことによって何台ぐらいのデバイスがスクリーンの前にいるのかとかを計測し推計していくモデルなどを今、考えています。


高瀬:単純に通り過ぎた人や、少し立ち止まって見た人かも判別できますね。


神内:視認率については媒体の環境ごとにモデル化していくんです。例えばイギリスのRouteの例では、止まって見るメディア、例えば電車の中のビジョンだったり中づりみたいなもの。それから歩きながら見るメディア、渋谷のスクランブル交差点とか、あとは駅のコンコースみたいなところ。それから車に乗って高速で走りながら見るような、高速道路沿いのビルボードのような、それぞれに視認率の調査をして、そのモデルをつくって係数を掛けるやり方になります。


高瀬:そうなってくると、どのぐらいの人がOOHを見たかの指標ができるのはもちろん、このメディアだとこういう人たちが過去に見ているから、こういう人にリーチできるというターゲティングにも活用できるかなと思いました。


神内:そうですね。携帯電話の契約者情報と利用者情報を統計的に処理して分析しているので、特定のスクリーンに接触した人の性・年齢、居住エリアなどもわかるようになります。さらにこれは発展的な話としては、ドコモDMPを活用することで、例えばdポイントでお買い物をした人のデータですとか、あるいはアンケートのデータが採れますので、趣味趣向とか、購買傾向など、より詳しいセグメントを分析することも可能になります。


高瀬:より統合的なプランニングが実現できそうですね。


神内:そうですね。あくまでもまだ1対多メディアなので、オンラインというよりはテレビに近い。例えば個人視聴率に近い考え方です。



ROIベースの投資を可能にする計測モデルへの挑戦



高瀬: GMPのお話に戻りますが、ディスプレイ&ビデオ360上で設定はできるものの、配信結果は管理画面で確認はできないということでしょうか。


神内:買って配信されますというところです。


高瀬:指標やレポーティング機能が整備されれば、管理画面上で配信結果を確認可能になりそうですね。


神内:おっしゃるとおりです。LIVE BOARDでは、まずはヒストリカルデータ、過去のデータに基づいてプランニングし、配信結果をレポーティングするところまでを行う予定ですが、将来的にはリアルタイムデータで配信できるようにしていきたいという構想があります。


高瀬:ターゲティングや実際どういう方にリーチできたのかが測定できるようになった後のステップとしては、ROIベースの投資を可能にする効果測定、例えばリフト調査になってくるのではと思います。


神内:そうですね。まさに今回の、ロードマップでいう「3. プランニング」にあたります。(下図参照)ちゃんとアカウンタビリティ、ROIが幾らですかっていうのは広告主の定めたKPIに対して、例えばセグメントが20代女性といったように定められているのであれば、OOHのメディア出稿であっても、われわれの指標を使えば、セグメントに対するROIをちゃんと出せるという形になります。


再掲(画像タップで拡大可能です)



高瀬:ドコモは契約者データも保有しているので、例えば、この人がOOHを見て、その後同じ広告主のWebサイトにアクセスしたということも分かるようになるのでしょうか?


神内:それは今の段階はまだできないですね。あくまでも今回使うデータは統計処理された、統計上のデータなので、リターゲティングをしたいとかストアビジットをしたいといった部分を計測するには、今度はなんらかのIDを振って、その人がまた同じ人が来店したかどうかが分かるような、そのアノニマスIDみたいなのを統合していく必要があります。


高瀬:シンクさせる。


神内:はい。今はまだ構想中で、もう少し先になりそうですが、構想はあります。


高瀬:かなり膨大なデータになりそうですね。


神内:今後の構想としては、まずはインプレッションでセグメント別の配信を行うだけであれば統計データでできるので、あとは実際のリターゲティングをしたいです。OOHを見た人に対して、今度はスマホでは年代とか性別毎にもっと詳細な情報をプッシュでリターゲティングするとか、同じようにセンサーがサイネージに付けられていて、お店に同じセンサーのサイネージがあるとすれば来訪確認ができるようになります。


あとは、dポイントを使って買い物ができれば購買までを見ることができるので、コスト・パー・ビジットや、コスト・パー・アクイジションなどのリアルなアクイジションも含めて計測できるモデルになればいいなと思ってます。


高瀬:そうですね。そうなると非常に面白いな思います。


神内:すごいチャレンジになると思います。大きい飛躍が必要です。





高瀬:欧米だと特にテレビの分野でアドレッサブルTVでセールスリフトが測れるようになってきているので、その世界観をOOHも実現できたら面白いなと思う半面、テレビは世帯の情報もある程度わかるので計測しやすいと思いますが、OOHではネックになる部分かもしれないとも思います。その辺りの計測が可能になってくると、統合してプランニングがしやすくなるでしょうね。



プログラマティック化で高まるOOHの評価



高瀬:OOHのプログラマティック化を進めるにあたっては、媒体社さんの理解が必要だったと思いますが、理解を得るのに苦労されたのでしょうか。


神内:この4年間、プログラマティックOOHについて啓蒙してきました。昨年あたりからは各社ともにデータの重要性やワークフローの悩みについて共有していただけるようになってきました。広告枠が空いているかいないかについては、媒体社がデータベースを持っていても開放していないので、毎回問い合わせをすることになり、トランザクションがすごく煩雑なわけです。


現在LIVE BOARDのプラットフォームはIAB標準に基づいて構築していますが、データのみならず、標準的なワークフローを導入することによって、OOH業界全体の発展につながるのではないかと思っています。


高瀬:次のステップのプランニングとなってくると、現在はまだ期間販売になっていると思いますが、ゆくゆくはオーディエンスベースで、CPMでとなったときに、たぶん価格のところがコモディティ化するんじゃないかといった懸念があるかと思うのですが、そこをクリアしていくのはこれからでしょうか。


神内:まさに昔からよく質問されることです。広告主にOOHをなぜ出さないんですかと訊くと、答えは明快です。データがないから出せないんです、と。広告主はROIが分かるものしか出しません。だからその人たちの言い方で言うと、投資はしても、投機はしない。数字も分からないものにお金を投機的に出せないと。


だからOOHはメディアのプランニングの最初の段階でもう落ちてしまう。さっきのプランニングは経験と勘と真心と言いましたが、販売は義理・人情・浪花節でしかもう売れない世の中になっちゃうんですよ。それはなくしたいのです。


アメリカのメディアのCPM比較ですが、通常のポスターや看板などのCPMは非常に安く売られています。しかし、フォーマットが同じであれば、例えば動画であれば、4倍から5倍のCPMを設定しても売れると推測しています。


Image Source:PJ SOLOMON’s Media Monthly(画像タップで拡大可能です)



神内:モバイルビデオやデスクトップビデオのCPMが9ドルくらいですから、差が4.5倍離れているわけです。最近はやってきているDigital Placed Adという、例えばジムとかショッピングモールとか目的がはっきり分かっていて、誰が通っているかを計測をしているようなところだと、CPMは9ドルとか、高いところで32ドルで売れています。動画というフォーマットだけでいうとオンラインのビデオと同じですよねと、CPMが5ドルから9ドルの世界にいくはずです。だけど今はデータがないからすごく安く売っているし、データがないから広告主が付かない、と、二重に損しているわけです。


高瀬:プログラマティックを促進していくことで、媒体社としてもうれしい結果になるということですね。


神内:我々はこうした仮説の下にやっていて、例えばこれはちょっと乱暴ですが、OOHのマーケットって5210億円くらいありますが、オンラインビデオとオンラインディスプレイ広告の市場も合わせると1兆円ぐらいになるので、このマーケットの人たちがこのOOHといわれる広告もマーケットサイズが一気に倍にはなるのです。


要はテレビで見ようがパソコンで見ようが、モバイルで見ようが、1インプレッションは1インプレッションなので、デバイスフリーだと思えばこういうマーケットがありますよという説明をしています。


高瀬:本当にそうですね。拡大の余地はかなりありますね。


神内:OOHはずっと横ばいです。それはやはり、指標もなければワークフローもない、結局プランニングから買い付けまでが煩雑すぎるからだと思います。実際、イギリスのポスタースコープというOOH専門ブランドでは、クライアントから指定されたターゲットを入力すると視聴率データやキャリアデータ、それぞれの広告会社が独自に集めたデータを駆使してデータを作り、より精度の高い配信を行っています。ターゲットを指定するとどこに含有率が高いかを地図上で表すことができる。


(画像タップで拡大可能です)



参考:



高瀬:ヒートマップですね。これは実際、もう使われているんですよね。


神内:そうです。イギリス、アメリカ、オーストラリアではこれは標準的に行われています。ポスタースコープだと、これは媒体を指定すると出てきて、空いているか否かもIAB標準で各媒体社とつながっていて、期間を入力することまでできます。プランニングする側に立ってみると空いていないところに提案してもしょうがないので、まずは空いているか否かをチェックします。


空いてるところだけ抽出して、そこから予算を入れて、リーチマックスなのかフリークエンシーマックスなのかをオプティマイズするとプランが出来上がります。そうすると提案書ができて、クライアントに送れば簡単ですよね。そして発注が来たら、発注ナンバーを入れて、実際に空いているかどうかを再度確認、ここで媒体社との通信が発生し、ワンプラットフォームができあがります。


高瀬:すごいですね。現時点ではディスプレイ&ビデオ360上で申し込みのみ可能と仰っていましたが、いずれはこのポスタースコープのようなかたちになってくるのでしょうか。


神内:DSPから直接買い付けできるようにしようとしています。いわゆるオンライン系で主要なやり方を導入したい。だからGoogleとの接続実験も行ったわけで、他の主要DSPからも買い付けができるようになっています。


高瀬:今後がますます楽しみになってきますね。ありがとうございました。


神内:ありがとうございました。


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