【対談】岡田吉弘さんに聞く:広告運用の未来に不安を覚えるみなさんに伝えたいこと


Unyoo.jpがはじまって5年。このたった5年という期間の中でも、デジタルマーケティングをとりまく世界では急速な変革が進んでおり、プラットフォーム各社は目まぐるしくアップデートを繰り返しています。


その結果、運用者に求められる業務内容も今後ますます変わってくることになるでしょう。こうした急速な変化に戸惑いを覚え、「今後どうなっていくのか?」「運用者としてどう進んでいくべきか?」と不安を感じている読者の方も多いのではないでしょうか。


そこで今回、Unyoo.jpの初代編集長であり、現在もアタラのフェローであるLIFT合同会社の岡田吉弘さんに、Unyoo.jpを立ち上げた当初を振り返りながら、今見えている景色、そして未来に不安を感じる運用者の方に伝えたいこと・大事にしてほしいことについてお聞きしました。若い読者の方だけでなく、広告運用に関わるみなさんに読んでいただけると幸いです。


話し手:LIFT合同会社 岡田吉弘さん
聞き手:アタラ合同会社 佐藤 康夫
編集:アタラ合同会社 井谷麻矢可


※このインタビューは2019年1月に実施されました。



極論に聞こえるかもしれないですが、運用がすべてです。



佐藤:まずは、今さら改まるのも不思議な感じがしますが、自己紹介をお願いします。


岡田: LIFTという会社の代表をしている岡田と申します。2011年から2017年までアタラの取締役を務めていました。その前はGoogleに5年ほどいまして、佐藤さん率いるセールスチームでGoogle アドワーズ(現:Google広告)を担当していました。現在は自分の会社以外に、運用型広告のリーディングカンパニーであるアナグラムと、データフィードの市場を牽引しているフィードフォースという2社の役員もさせていただいています。


アタラは現在もフェローという立場で関わらせてもらっており、この Unyoo.jp も、いちおう初代の編集長を務めておりましたので、なんだかこうして佐藤さんにインタビューされているのは妙な気分です(笑)。


佐藤:2019年の冒頭に書いたんですが、 Unyoo.jp はもう5年目を経過中です。ニッチメディアなので規模としては小さいですが、それなりに関係者には読まれるようになってきたんじゃないかなと思っています。


ただ、5年も経つとこの分野はだいぶ変わりますよね。当時このメディアをやろうと考えた背景と、あれから5年経った現在の景色は、当時描いていた景色とどれだけ近いのか?みたいなかたちで少し整理してもいい時期かなと思ってまして、であれば初代編集長の岡田くんに訊いてみるべきなんじゃないかと、今日はそういう趣旨です。


新年明けましておめでとうございます。また、Unyoo.jpを日頃よりご愛好いただきまして誠にありがとうございます。さて、2014年10月から下記のメッセージと共にスタート...





岡田:承知しました。最初に、この記事で佐藤さんが言及してくださっているメッセージですが、


「広告、CRM、メディアなど、マーケティングにおけるあらゆる分野で「運用」という概念が重要性を増してきています。 配信、取引、計測など、技術の進化にともなって、「運用」という概念はそれまでの「保守」としての意味から、キャンペーンの成否を分ける最も重要な「分析」「最適化」「設計」といった成果に直結する意味に変化しているのかもしれません」


これは、そのあとに1回だけリライトしているんです。現在では、この一文が以下のように変わっています。


マルチスクリーン化が加速し、デジタルという軸でさまざまなメディア・モノが繋がっていく現代では、広告やCRMなどをはじめとしたマーケティング活動の根幹として、「運用」という概念の重要性が増してきています。
配信、取引、計測などの環境が進化し、技術の進歩にともなって、「運用」という言葉がそれまでの「保守」「維持」としての意味から、キャンペーンの成否を分ける最も重要な「設計」「実装」「分析」「最適化」といった成果に直結する意味も含めた包括的な概念に変化しているのではないかと感じています。

リンク:Unyoo.jpについて




ちょっと冗長になっちゃったんですけど、やはり「マルチスクリーン」と「繋がっていく」ことと、「運用」は切り離せないなと思って入れました。「マーケティング活動の根幹」という、強い表現に変えていますしね。


佐藤:ポイントはやはり、スマートフォンですかね。


岡田:はい、おっしゃるとおりスマホです。当時から暴力的に市場に入ってきて、席巻していくようなイメージでした。


アタラは Unyoo.jp の前に Attribution.jp というアトリビューション分析の情報発信をするサイトを運営していたんですが、スマートフォンの隆盛でデバイスが分断されますので、アトリビューションの文脈でいうと計測で大きな壁に直面しました。もちろんガラケーのときからずっと分断されてはいるんですけど、スマホは世界的な潮流なので「できません。別ものです。」では済まされない。


加えて、アプリだ SDK だとなるとさまざまな分断が顕著に出てきますので、いろいろなものをつなげて分析していくというアトリビューションの基礎が揺らいでしまう問題でした。当時から既にモバイルがデスクトップを早急に追い抜くだろうということは分かりきっていましたし、これはヤバいと。


佐藤:パソコンだけ見てれば良かった数年前までとはガラリと景色が変わってきて、その変わり目の瞬間に立ち会っていたということだよね。


岡田:はい、だから Google のようなプラットフォームはガンガン更新してくるわけですよね。マルチスクリーンという環境の変化に合わせて。


佐藤:そっちの変化もまた暴力的。付いていくには、運用が重要だということだよね。


岡田:そうなんです。極論に聞こえるかもしれないですけど、運用がすべてです。

Unyoo.jp は運用といっても当初は主にデジタル広告だけの文脈でしたが、それだけでも当時からすでに複雑系の世界になっていました。ですので、これだけ変化が早く動的に揺れ動く分野で、設計・実装・分析といった実務工程を正確に描写していこうとすると、アトリビューションっていうワンワードで切り開いていくのはちょっと厳しい。


アトリビューションというのはあくまでも貢献度を可視化する作業ですので、可視化してもそのあと実装して結果を変えられないと意味がないし、実装した上で出てきた結果を、また動的に設計にフィードバックしていくという流れを表現しようとすると、まさに「運用」ではないかと。


佐藤:変化がはげしいからこそ最適解も状況に応じて常に揺れ動くわけで、運用をちゃんとやっていくことでそのときのベストを常に探っていく作業が、これからのマーケティングのデジタル化には重要だろうと思いますね。


岡田:そういう意味で、当時の企画会議で佐藤さんが発された一言で決まった「Unyoo.jp」というネーミング、時代を捉えていて非常に冴えていたなあと今でも思います(笑)。






「運用」の意味を伝える、そのことに使命感のようなものはあったかもしれません。



佐藤:Unyoo.jp を開設した当時に想像していた世界って、岡田くんから見て予想どおり、あるいは想定どおりですか? もしくは「これはちょっと、こんなはずじゃなかった」とか想定外だった部分があったりするのかなと。どうですかね。


岡田:どうでしょう、難しいですけど…


あ、1つ思い出したのは、先ほどのUnyoo.jpについてのページの一文ですが、これ、だいぶ運用推しというか、読み方によっては少々暑苦しいんですけど、これを書いたときに考えていたことというのが、「運用」という言葉の意味です。今でもある一面ではそうだと思うんですけど、こう…


佐藤:『サーバー保守でしょ?』


岡田:そうなんです。保守なんですよ。


佐藤:『メンテナンスのことね。』


岡田:はい(笑)。保守とか、代替可能な些末な仕事、みたいな扱いでした。


佐藤:「運用」自体は一般的な熟語だとは思うけど、システム開発の場面では出てきても、マーケティングや広告ではあまり耳にしなかったよね。それまでは。


岡田:はい、だから無条件に低く見られていたんですよ。広告であれば、英語の「Ad Operation」の「Operation」をそのまま直訳して「運用」なんだと思うんですけど。


佐藤:小馬鹿にされていた。


岡田:「その仕事、なくなるでしょ」と言われたり、「運用ばかりやってたら出世できない。もっと上流の仕事をやれ」みたいな扱いが主流でした。僕は初期から Googleアドワーズという運用型の権化みたいなプラットフォームを触っていたこともあって、テクノロジーと適切なビジネスモデルとの掛け合わせが、既存の言説をことごとく蹴散らしていった過程を目の前で見ていましたので、そういった扱いでも特に気にしなかったんですが、さすがに市場が急激に伸びて今やインターネット広告の大半を握るところまで来ているのに、周りの認識が以前のまま止まっているのは気になっていました。


運用型広告が低く見られていることによって、次を担う若い人たちがスポイルされて育たないのは社会的損失が大きすぎると思いまして、せめて Unyoo.jp では我々が意味を信じてやっていることはしっかり伝えよう、と思って運営していました。


佐藤: Google日本法人の立ち上げ当初でもたくさんの苦労があったけど、あれも振り返れば周囲がキャッチアップできていなかったということかな。「ワンクリック数円ですよね」と馬鹿にされいてたのが今や時価総額で世界トップ3に入る大企業になって、日本でも最もシェアを持つ広告プラットフォームになっているっていう現実があるわけで。


しかもそれがすべてセルフサーブでスタートしているわけですよね。広告主にやらせるなんて、以前の広告業界では考えられなかった。


岡田:セルフサーブですので、自分で直さなきゃいけないから、運用するしかないですよね。しかも触っているそばからプラットフォーム自体がどんどん更新され続けている。


セルフサーブ、つまりデマンドサイドがイニシアチブをとって動的に変更していくという流れは、Googleアドワーズが登場した瞬間からもう不可逆でした。予約型が別になくなるわけではないんですけど、予約型だとアジリティが出せないので、最近はせめて手続き(トランザクション)の部分だけでもプログラマティックにしようという流れになっています。


もうあらゆるプラットフォーム、Google だから、Yahoo! だからとかではなく、おそらく広告配信において手続きに人を介すっていうのはおそらくほとんどなくなるだろうというのは少なくとも当時から見えていました。


手続きがシステムに置き換わったあとはそれまでの人員が不要になってしまうと言われますが、仕組み自体がかわるので、その分インプットの質を上げていく、フィードバックの質を上げていく、そのための環境や分析の設計をすることが、今までよりはるかに重要になってきます。つまり人が行う仕事の中身が変わってくる。どこまでできるかはプラットフォームによって違うんですが、世界観としてはもうこっち側に行くしかないと。


そういう当たり前の認識についても、現場にいない人にはリアリティがなくて届くまで長いタイムラグがあります。誰かの認識を変えるなんていうのはおこがましくて言えないですが、少なくとも「運用」に込められた意味が貶められて理解がゆがんでいる状態っていうのはちょっと嫌だなと思って、小さな使命感みたいなものを勝手に感じてワーワー言っていたように思います。


佐藤:手術だって戦争だって「Operation」だし、プロがやる仕事だということですよね。では、この「運用」という言葉に対する意識、5年近く経った今、変わりましたかね?


岡田:どうですかね。うーん、どうなんでしょう。あからさまに馬鹿にしてくる人は一部のおじさんだけになったかなという気はしますので、少しは変わったのかもしれません。


佐藤:当時はリスティング広告関連の本もあまり出版されなくなっていた頃で、我々が『リスティング広告 プロの思考回路』を出した頃からまたたくさん出るようになりました。結局あれってオペレーションノウハウじゃないですか。それがとても重要なものだという認識はだいぶ広がってきてはいるんじゃないかな。


岡田:そう思います。1つ1つは個別の Tips であって、それはあくまで小手先のテクニックでしょと揶揄してくる人もいるにはいますけど。確かにそういう側面はあるし、変化が激しいから時間の経過には耐えない内容も結構多いのは事実なんですけど、ただ少なくとも自分たちは1つ1つの話だけをしているわけじゃなくて、こういう試行錯誤の積み重ねでマーケットが伸びてきているんだよっていうことを、日々のアウトプットを通じて証明しているのがこの市場なんだと思います。


そう考えると、Unyoo.jp に限らず、様々な事業者が発信してきている情報があって、それらをある時パッと俯瞰してみて、なんとなく時系列で歴史といいますか、一種の物語のようなものを大局的に捉えるという作業は、日々の仕事に埋もれてしまいがちな現場の運用者の方たちにとっても大事ではないかなと思っています。


佐藤:2016年に書いた「少し先の運用型広告の現在」のシリーズなどは、そういう趣旨ということですね。


岡田:古い記事を拾ってくださってありがとうございます(笑)。


運用型広告と自動化 ユーザー環境のマルチデバイス化や、配信フォーマット・ターゲティングの多様化に伴って、データドリブンなマーケティングが市場へ浸透しはじめた...




ファクトを見つめると、半歩先が見えてくる



佐藤:ここしばらくは岡田くんが Unyoo.jp にああいった骨太の記事を書いてくれなくなってしまったんだけど(笑)。


岡田:すみません!(笑)


佐藤:今「俯瞰」というキーワードが出たので、そういえば、今年の広告の展望というか、俯瞰するような記事を書いてましたよね。


岡田:はい、自分のブログで『2019年のデジタル広告、実際どこにお金を使うんだ問題。』という記事を書いたんですけど。


近未来のトレンドは誰しも注目するところですが、流行するキーワードと実際のビジネスとのあいだには、どうしても時間的なギャップがあるものです。 トレンドはトレン...



 
佐藤:年始はいつもたくさんの予測記事が出るじゃないですか。でも、数字とかファクトベースで切り込んでくる記事は少ない。


さっきの話の流れでいうと、運用ってやっぱりちょっと低く見られがちなところがありますけど、この記事みたいにファクトを出して堂々と語ってもらえるとね、広告運用者にとっても、一筋の明かりじゃないけど、胸を張ってがんばれるというか、そういう影響はあるんじゃないかと思いますよ。


岡田:そうですかね。そうだとうれしいですけど。


佐藤:カウンターカルチャー感はありますよ。


岡田:ありがとうございます(笑)。ひとつ言えるのは、予想ってどうしても言いっ放しなところがあるじゃないですか。だから振り返りもセットでやるんだったら別にいいのかなと思うんですけど。面倒だから誰もやらないですよね。


あとは、おそらくほとんどの人が知りたいのはそういう曖昧な天気予報じゃなくて、目の前に迫っている変化とか、少し先の現実を、どう自分たちの会社とか事情に適用させていくかというところなのかなと思っています。だから、有名な識者1人の意見よりも、一般の400人の意見のほうが現実を映していると僕は思っています。あ、この400という数字はこの記事で紹介している調査の母集団が400だったということなんですけど。


それで、世の中は 5G だとかプログラマティックTV だとか、GDPR だ CCPA だ何だと、とにかく気にしないといけないことがいっぱいあります。それも本当に大事なことなんですけど、でもそれを踏まえた上で400人の事業主のみなさんは2019年にいったい何に力を入れていくんだって訊いたら、出てきた答えがなんと、【テキスト広告】なんですよ。



「The State of PPC 2018 – 2019」より抜粋


佐藤:(笑)。


岡田:「へ?」ってなりますよね(笑)。でも、それがもっとも大事で、もっともお金を使うところってみんなが言ってるんです。それが現実です。じゃあこのテキスト広告っていうのはレガシーなのかというと、この2-3年でものすごくイノベーションが起きている分野なんです。


たとえば「動的検索広告」という、検索エンジンにインデックスされている情報を利用して、ユーザーのインテントに合わせて広告の内容を動的に作成して、機械学習でよりよい組み合わせで出していく機能ですが、この精度が近年劇的に上がっています。加えて現在は「レスポンシブ検索広告」という、テキストフィールドをいっぱい作っておいて、その組み合わせを機械学習で都度組み合わせを変えていくというものも出ています。それらが、時間の経過とともに性能にどんどん磨きがかかってきているんです。


インターネット広告はマッチングビジネスの極北なので、企業とユーザーのニーズを適切なレベルでリアルタイムにマッチングさせるというのが至上命題です。ユーザーがストレスを感じたらミスマッチになり広告成果が出ないので、そこのバランスを合わせていくために広告品質と審査というものが存在するわけなんですが、その品質を最大限高めていこうとしたときに行き着いた答えが、

「ユーザーのニーズというのは常に複雑に揺れ動いていて、それを1つの固定のフォーマットで合わせていくのは無理があるから、それなら広告側を動的にしてしまえ」

だったんですよ。


佐藤:理屈はそうなんだけど、それができちゃっているのがすごいよね(笑)。


岡田:だから、それをやるには旧来の仕組みとアルゴリズムでは無理なので、機械学習に振り切ってしまおうという話につながるんですよね。テキスト広告には、ここ数年の技術革新のエッセンスがたくさん投入されているんです。


佐藤:先端部分であると。


岡田:はい。だけど、それが分からないんですよ。エンジニアとか、実際に運用をしている人じゃないと。


佐藤:「なんだ、テキストか」ってなる。


岡田:そう、知らないので思考停止してしまうんです。でも、テキスト広告にすごいことが起こっているっていうのを、調査に回答した400人の事業主は分かっているんですね。ここがもっとも成果が出るから手を入れないといけないって、みんな分かっているんです。だったら、その事実を記事にしようかなと思いました。


佐藤:いや、読んでみて、これはさすがだなと。


岡田:やっぱり、大抵の答えは現場にあるんじゃないかなっていうのが、15年くらいこの仕事やってきての感想です。未来のことは正直分からないし、3歩先ぐらいは完全に闇ですけど、半歩先ぐらいは結構ファクトから読めることも多いので。真面目に頭を使ってやっている人の話を、足を使って拾いにいくみたいなことは、すごく大事だなって思っています。




単独でどうにかしようとしても、もう立ち行かなくなっている。



佐藤:GAFA のうち、Google 以外でいうと、やはり注目は Amazon ですか。


岡田:そうですね。


佐藤:広告分野でいうと、Google、Facebook に次いで、独立した第三勢力になると言われていますね。


岡田:世界で一番大きなショッピングモールですので、ブランドは抗いにくいですよね。広告費で宣伝してもらって、売れたら手数料でもらって、倉庫の管理費をもらってという、ビジネスとしては何段階にも課金できるので強いです。他にも幾つも柱ができてきますし。


佐藤:おそらく、Google より速いスピードで成長すると。


岡田:はい、だから今だと Duopoly じゃなくて Triopoly って言うんですかね。近未来では3社が寡占している状態というとこまでは誰でも予想できるとして、考えないといけないのはそのときにどういう仕事の仕方になっているんだろうということでしょうか。


佐藤:仕事の仕方。


岡田:はい。たとえば Amazon だと物流とか在庫管理も関わってきますし、それは他のプラットフォームでも一緒ですので、真面目にやろうとすると、やはり「運用でちょっと蛇口のひねり方がうまいです」程度のスキルだと厳しくなってきます。


佐藤:ビジネス構造が分かってないといけない。


岡田:かつ、個別の秀でたスキルを持っているという、いわゆるT型人材じゃないですが、だいぶ高いレベルを求められるので、スーパーマン以外は単独でやるのは無理だと思います。


そういう意味で協働といいますか、コラボレーションが今まで以上に必要になると思います。Aが得意な人と、Bが得意な人でチームを組めた方が、それぞれ単独で提供するより価値が高くなりますので。代理店やコンサルタントの人は特に、どういう価値を顧客やマーケットに提供できるのかという視点でチームを整えていかないと仕事がしにくくなってくるのかなと。


佐藤:インハウス化の煽りはあるものの、実際にはマーケットがまだまだ拡張するので需要はありますよね。


岡田:はい、仕事も増えます。ただ、単独のスキルだとクオリティーが頭打ちになるので、成果もメンタルも続かなくなるんですよね。


そうすると、専門性のある組織というのは、他の専門性とコラボレーションすることで成長する組織、開かれた組織みたいになっていくのではないかと思います。発注する企業側も、何でもできますって言いながら実際は外注だけしている閉じた企業ではなく、専門性を組み合わせてチームにしていくという姿勢・方針が必要になってくる。


佐藤:なんかそれは確かにリアルに感じるところもありますね。やっぱり1つの会社だけでどうにかしようとしても立ち行かなくなっている例が多いよね。もう実際問題としてさ。


岡田:はい、そうですね。うん。一定の水準から上に行こうとするなら、単独は無理です。


佐藤:だからどこかとコラボレーションするとか、場合によってはくっつけるとか、そんな感じになるんだろうなと思うんですよね。


岡田:そうですよね。データも疎結合しないと活きないですし、似たようなことなのかなと。






「不安」は適切な感情。不安な者同士で協働していく。



佐藤:この流れでいうと、若い人たちは今後どうやってキャリアを積んでいったらいいか、迷ったり不安になったりしている人も多いのかなと思います。我々が若い頃とは状況が違うからね。


岡田:はい、状況が違うのでオジサンからのアドバイスとか、あんまり意味ないなって自分で思いますもん。だからしない(笑)。


佐藤:そうかもしれないけど、でも聞きたい人はいると思いますよ。


岡田:うーん。一つ言えるとすれば、佐藤さんが今おっしゃった「不安」というのはキーワードかなと思います。たとえばこのあいだアナグラムの阿部さんが、「今の若い子たち、特に就職活動している学生。みんな不安そうなんですよね」とおっしゃっていて。へーそうなんだ、と。


佐藤:将来が不安ということですか。


岡田:おそらく。漠然とした将来への不安というものがある。


佐藤:日々モニターにしがみついて作業するイメージがあるからなんですかね。


岡田:うーん、僕なんかロストジェネレーションのド真ん中で、たしか戦後で2番目に有効求人倍率が低い年に就職活動をしてるので、昨今の就職環境とかを考えると「え、バラ色じゃん」って思うんですけどね(笑)。でも、その言葉っておそらく届かないんですよ、彼らには。


佐藤:そうだろうな。


岡田:それはあくまでも僕の世代のケースであって、今の人たちにはまったく関係ないので。だから、「漠然とした不安」というのは、たぶん、もう牧歌的な時代が終わってしまったことを、彼らは直感的に知っているからなんじゃないかと。


佐藤:ああ、なるほど。


岡田:ここ数年だけ見ても、以前だったら「破壊的なイノベーションだ」って言われるようなことが、カジュアルにポンポン起こってるじゃないですか。だから、自分の仕事やキャリアを線形の進化で考えるのはちょっと無理があって、指数関数的にグッと伸びてくるとか、あるいは逆にズドンと落ちるとか、そういう荒ぶった変化をこれからのキャリアでずっと経験することになるっていうのを、たぶん彼らは肌感覚で分かってるんですよね。


佐藤:ラダー(はしご)はもうないと。


岡田:そうなんですよ。まさに自身のキャリアラダーがつくれないという不安なんだと思います。敏感な子ほど親世代と意見が合わないでしょうし。「僕は、私は、どうすればいいんだ」っていう。


しかも、広告運用者っていうのはまさに人工知能による自動化だったりとか、いろんな文脈でガンガン不安を煽られてるんですよ(笑)。


佐藤:そうだね。要らなくなるとか、真っ先に言われちゃうもんね。


岡田:本当は若いとか年寄りとかはあんまり関係がなくて、残り時間が違うだけでみんなの問題のはずなんですけど。


それで、僕は以前からそんな感じで「不安です」って言われたら同じこと言うようにしています。「何の心配もない。心配なのは ”不安にならないこと” だから」


佐藤:大手企業に入ったあと安心して動かなかった世代が、今大量のリストラにあってるんだよね。


岡田:変化が早いと逆に分かりやすいというか、アラートが外側からやってくるんですよね。ゆっくり変化してるとアラートに気づかないまま時間が過ぎてしまうんですけど、今はアンテナさえ立てていれば外側が猛スピードで変化してくれるから。「あ、自分、フィットしてないかも」っていうのを知覚しやすいですよね。


佐藤:能力の個体差があるのは当然というか、好き嫌いとか得意不得意って誰にでもあるから。きっかけが不安という感情でもいいので、ちゃんと差を認識するみたいなことが大事だよね。


岡田:まさにそうです。差を認識しやすい仕事なんです。特に運用型広告は、結果が出なかったらグラフで出ちゃいますし。


佐藤:そうだよね。


岡田:毎日毎日それをやってるんですから。真面目にやっていれば不安になるときはあります。だからそれは適切な感情だと思います。


佐藤:岡田くんも、景気が良いときに間違って新卒で有名企業に入っちゃってたら、今ごろどうなっていたか分からないしね。


岡田:はい、分からないです(笑)。だから、不安になるセンスがある人は、真面目に仕事をしていれば大丈夫だと思っています。自分が取り組んでいる仕事から意味をしっかりくみ取るような習慣さえつけてくれれば、ですけど。オジサンからお伝えできるのはこれくらいですかね。


佐藤:不安は悪いことじゃないよと。不安に思える時点で、既に一つの能力があるっていうことですね。


岡田:僕だって、今も不安ですしね。不安の中身が25歳のときと40歳のときで違うだけで。


佐藤:不安という意味だと同じだから、不安な者同士、一緒に頑張ろうよと。


岡田:はい。だからこそ人も組織も「コラボレーション」が回答として有効になりうるのだろうと、今はそんなふうに考えています。締めはこんな感じでいかがでしょうか。


佐藤:うん、うまく締まりましたね。今日はありがとうございました。





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