サッポロビール・グラフトンノートに聞く:Amazon広告経由の売上を昨対比360%にしたチームビルディングの極意

2018年9月にサービス統合、リブランディングされたAmazon広告。その中でも運用型であるスポンサー広告を中心に注目がますます高まっており、対象国やサービスの拡大も続いています。しかしまだまだ情報が少なく、広告運用者にとっては課題や悩むことも多いのではないでしょうか。

 

そこで、今回はAmazon スポンサー広告とAmazon DSPを活用されているサッポロビール株式会社の寺倉さん、その運用を担当されている株式会社グラフトンノートの島田さんにAmazon広告成功の秘訣、それを達成したチームビルディングについてお話を伺いました。

 

話し手:
サッポロビール株式会社 マーケティング開発部 デジタルコミュニケーショングループ 課長代理 寺倉 有樹さん

 

株式会社グラフトンノート 島田 新人さん

 

聞き手:
アタラ合同会社 浅田 梨沙

 

※このインタビューは2018年9月に実施されました

 


 

対等に話し合って新しいことができるような関係を築きたい

 

浅田:最初に、お二人の自己紹介をお願いいたします。

 

寺倉:サッポロビール株式会社 マーケティング開発部の寺倉と申します。もともと営業としてスーパーや酒店に弊社商品を納品する仕事をしていました。現在はEC関係の企画立案担当で、主にAmazon.co.jp(以下、Amazon)を担当しています。

 

 

島田:株式会社グラフトンノート 島田です。最初は大日本印刷株式会社という印刷会社で3年ほど、管理会計の仕事をしていました。管理会計で売上や原価などの数字を分析しており、その力を活かして、インターネットの広告業界への転職を決意しました。前職は株式会社オムニバスというネット広告の代理店で、一通りリスティング、動画、ソーシャル系などの運用を経験し、現在はグラフトンノートに在籍しています。小さい会社なので職種などはなく、何でもやるという感じですが、サッポロビールさんとはAmazon関係でとても密にやりとりをしている状態です。

 

 

浅田:2社の取り組みとして、Amazon広告を始めるに至った経緯を教えてください。

 

寺倉:弊社が運用を開始したのは2017年。最初は自分たちですべてやろうと思っていて、私自身も運用していたのですが、1年ほどで色々な問題に直面しました。
1つ目は、そもそも知識がないことです。なんとなく入札単価を上げ下げするくらいで、PDCAが回せていませんでした。
2つ目が、あまりにも管理が大変で本来の業務にも支障をきたしていたことです。
3つ目が、Amazonとの取り組みを弊社としては強化しており、それを進めなければいけないという課題感がありました。

 

浅田:もともと運用型広告の出稿・運用経験はおありだったのでしょうか?

 

寺倉:会社全体としては別部署がやっていますがAmazon広告は初めてで、我々の部署のチームメンバーは誰もその知識がない状態でスタートさせました。最初は手探りでしたね。

 

浅田:では、その状態からどのようにグラフトンノートさんに運用をお願いするに至ったのでしょうか。

 

島田:元々は別施策でお付き合いがあり、週1~2回常駐してサポートをする中で相談のひとつとしてAmazon広告の運用についてのお話があり、最初はある1カテゴリだけでお試し運用を開始、今年から全カテゴリでAmazon スポンサー広告に関わらせてもらっています。

 

寺倉:自分たちで考えたキャンペーン構成について島田さんに相談したところ、我々では思いつきにくい提案をされました。その構成を反映させたらびっくりするくらいROASが改善して、こんなやり方があるのかと目からうろこでした。実はAmazon広告については複数社にお声掛けしていたのですが、その成功をきっかけにグラフトンノートさんに決めました。

 

しかし総じて代理店さんに不信感を持っているメーカーは多いと思います。そもそもベースもない中で話をしていて、一方的にきれいごとを言われると、信用するしかないからです。
実を言うとグラフトンノートさんに対しても最初は不信感がありました。しかしそこから、ひとつひとつ丁寧に説明してくれた。ちゃんとクライアントとしてとらえていただき、それこそフレーズ一致と完全一致の違いなどの基礎から教えていただきました。その段階ではスポンサー広告については一切依頼していなかったにもかかわらず、です。やはり信頼できる会社に運用を任せたいという気持ちがあったので、今もお世話になっています。特に島田さんは熱心に教えてくださるので信頼しています。

 

浅田:代理店に運用を委託している広告主さんですとあまり詳しいところまでは勉強しない方も多いですが、貴社はしっかり理解して一緒に歩んでいきたいというスタンスなのですね。

 

寺倉:丸投げが一番だめで、自分たちの知見もたまらないし、運用型広告で別のサービスが出たときに、同じことを繰り返してしまう。それは会社としても良くないと思っています。だから我々としては、自分たちのベースアップもしたい。ECはデジタル用語や考え方がたくさんあるので、知識をつけながら、対等に話し合って新しいことができるような関係を築きたいと考えています。

 

島田:このような関係性を望んでくださるクライアントさんは貴重です。知識をベースに弊社からの提案もフラットにご検討いただけるので、非常にスムーズに最善手に向かっていけると感じています。

 

浅田:素晴らしい関係性ですね。そこまで詳しく理解していらっしゃるということは、将来的にはインハウス化も考えていらっしゃったり…?

 

寺倉:会社としてトータルメリットがあるのであれば、可能性はゼロではないと思っています。ひとつのチームとしてその思いはグラフトンノートさんにも共有しています。経営陣にECに対する理解をもらうのは難しいため、こういう取り組みを一歩ずつ進めていって、会社として一番良い方法を模索できればと思っています。

 

島田:建前でなく本音で話せるので気持ちの良いお仕事ができていますね。

 

浅田:グラフトンノートさんは元々スポンサー広告の運用経験があったのですか?

 

島田:一応あることはあったのですが、新しいサービスということもありここまで密にというのは初めてです。前例の少ないプラットフォームなので、しっかりと検証させて頂いています。

 

浅田:実際にお取り組みを始めてみて直面した課題などありますでしょうか。

 

島田:まだまだセオリーがない点です。さらにビール業界はライバルが少なく、例えばこのキーワードのクリック単価が上がっているとなると、「あ、あの会社最近露出しているから、ここが入札強化したのか」というのがすぐわかってしまう。予算も今月はこれくらいだろうと思っていてもその通りに着地せず予想以上に使っちゃいました、ということもあるし、他社が強化してきていて入札が高騰しなかなか露出しないこともあるため、そのあたりが他の広告媒体と比べても動きが大きく、難しいと感じています。

 

浅田:そうなんですよね。そのように管理が難しい部分、管理画面だけでは調整しにくい部分はどのように対処されていますか?

 

島田:あまり管理画面で管理をしていません。基本はExcelに落とし込んで、キーワードや検索語句を見ていきます。キャンペーン数が多いので気合は必要ですが。

 

 

 

プロフェッショナルの定義

 

浅田:先ほどセオリーがない点が課題というお話がありましたが、運用している中で見つけたセオリーやノウハウなどはありますか?
例えばスポンサープロダクト広告が運用の中心になることが多いと思うのですが、自動ターゲティングと手動ターゲティングをどう
使うかなど。

 

島田:弊社にお任せ頂く以前は自動が多かったですが、語句をコントロールするなら手動のほうがいい場合もあります。自動で配信していたキャンペーンの配信実績を見ると、「お酒」「プレゼント」などの広すぎるキーワードにも露出していたため、切り出したほうがいいものは切り出す作業を行いました。ただ自動は自動で配信を続けていて、手動では出せない部分を任せています。
よく自動か手動かの二元論になりがちですが、結局大事なのはクエリ(検索語句)です。クエリをどうコントロールしたいのかを決めるために使い分けがあるのであって、どちらが良いという話ではないと考えています。手動で拾えないキーワードを自動でどう回すのか、などを考える必要があります。
過去他の検索連動型広告でもそうでしたが、Amazonスポンサープロダクト広告でもともかく何万キーワードも部分一致で登録しましたというアカウントが未だに多くあるのではと思います。
それがまかり通ってしまっているのは、運用型広告におけるプロの少なさだと思います。昨今従事者も増えているのですが、プロの割合はなかなか大きく増えていかないため、きちんと考えて広告主にも伝えることが重要です。また、サッポロビールさんのように知識ある広告主も増えていって成果を出せる仕組みになればいいですね。

 

浅田:とても同意します。プロという言葉が出ましたが、プロの定義ってなんだと思いますか?

 

島田:可能な限り因果関係を解明し、説明できることです。そのために、まず全体が見えていることが大事だと思います。クライアント目標は売上だけではなく、その先に会社全体としてどうかがあるため、それが見えていないと最適な解決策が提示できないはずです。
次に、誠実であることも大事です。「CPCが上がったのは他社が強めてきて…」などと適当にも言えてしまう世界ですが、誠実に数字と向き合い突き詰めるとある程度までは変動の要因が推察でき、いくつかの解決策が出せるはずです。
まとめると、なぜ売れたのか? 売れなかったのか? の因果関係を広告主に対して答えられるのがプロだと思います。明確な答えが分からないにしても、ここからここまでは確定でここから先はわかりませんといったことをきちんと話す責任があります。

 

寺倉:広告主も任せるだけではなくしっかり勉強しなければいけないと思っています。一緒に話ができる程度の知識は必要です。言ってもわからないな、と思われると代理店さんも言わなくなりますし、分断が深まります。自分たちのためにも勉強すべきですね。
また思ったことをきちんと伝えることも重要です。ECに携わりはじめたころ、わからないことが多くて怖いと思いました。しかし、ビールに関してはビールメーカーの方が詳しいのです。代理店はあくまで運用のプロであり、商品知識はメーカーの方が詳しいため、そこをしっかりと伝えていくのはクライアント側の責任だと考えています。

 

島田:シーズナリティや他社の情報なども、絶対にクライアントのほうが詳しいはずなので、気づいた時点で伝えていただいています。
クライアントしか知りえない情報と、代理店の運用知識がうまく合わさった事例が、父の日の事例です。

父の日はAmazonにおいてもギフト需要がとてもあるので、当然「父の日」掛け合わせ系キーワードのCPCは高騰します。我々はこれまでスポンサー広告を運用してきた知見の中から、シーズナリティが高まるときは入札競争の過多が起きやすいことがわかっていたので、それよりはビッグワードの入札のみ強化し、あとは全体の予算だけ引き上げるということを提案しました。

もちろん「父の日」系の対策もしますが、痛みを伴ってまでやる必要はないのではないかということです。広告に頼らずとも、「父の日」系は自然検索で十分ボリュームが増えますから。

こういう場合、数字ではなく「シーズンだから何かやらなければいけない」といった感情を取ってしまうケースも多いのですが、寺倉さんは数字や仕様に対する理解が高いがゆえに、きちんと合意を取ることができました。

 

浅田:ということはプライムデーなどのセール時期はどうされたのでしょうか?

 

寺倉:我々はスポットではなく年間で運用しているので、プライムデーに注力することが売上に繋がるのか、と父の日同様の提案をいただき、普通に運用しました。

結局年間を通した予算内で1円でも多く売りたいとき、プライムデーに勝負をすることが良い手段なのかということですね。オーガニックで売れるのに、あえて広告で売る必要はないかもしれません。そういう意味でも仕組みを理解することが大事ですね。
結果として、Amazon広告経由の売上は昨対比360%。このような成果を出せたのはグラフトンノートさんのおかげです。

 

 

 

Amazon DSPとの併用

 

浅田:スポンサー広告以外のAmazon広告は実施されていますか?

 

寺倉:Amazon DSPはテスト実施中です。スポンサー広告に比べるとROAS自体は下がったのですが、Amazonの中はスポンサー広告、新規ユーザーはAmazon DSPで獲得することを目的としており、その目的には合致しているため今後どう投資していくかを相談させていただいている状態です。

 

島田:役割として、スポンサー広告は当然既存も新規もターゲットに入ります。検索連動型広告が中心なので獲得効率は良いですが、Amazonの中で購入する人が増えないと、意味がありません。つまり、Amazonのストアページや商品詳細ページなどに新しい人をどうやって連れて来るのかというのが課題なのです。

 

寺倉:Amazon DSPの運用でも印象的な出来事がありました。ROASが過去なかったような高さの異常値が続いたことがありました。普通メーカーだとその報告を喜ぶため、良いこととして報告する代理店さんもいると思うのですが、グラフトンノートさんは疑問を提示してくれました。データの裏側がおかしいのではと。正直に疑問を提示してくださるのが嬉しいですね。

 

島田:Amazon DSPはAmazonのASIN(※)データを活用した配信もできるので、ASINの情報を使って配信したところ、ROAS 1,000%などと出たんです。新規ユーザーをターゲットにしているのにおかしいと思い分析したところ、既に購入経験がある人に対して広告を配信していたことがわかりました。コンバージョンリタゲと同じ状態です。この事例でも再確認しましたが、やはりしっかりと事実を掘り下げて情報を共有することが大事ですね。

 

※「Amazon Standard Identification Number」の略。Amazonグループが取り扱う、書籍以外の商品を識別する10ケタの番号のこと

 

浅田:スポンサー広告とAmazon DSPの配信結果はどのようにつなぎ合わせて方針検討しているのでしょうか?

 

島田:スポンサー広告の方が予算的には大きいので、基本は個別で見ています。しかし結局最後は私達もARAP(Amazon Retail Analytics Premium。販売分析レポートプレミアム)で得られるデータを共有頂き、全体の売上を見ています。広告だけの売上を追っていても仕方がないため、Amazon全体で見るようにしています。

 

※参照: 「販売分析レポートプレミアム」のご案内

 

 

 

同じデータを見ないと議論が進まない

 

浅田:Analyticsのデータも共有されているんですね。

 

島田:同様に、スポンサー広告の管理画面もサッポロビールの皆様が見られるようにしています。同じデータを見ないと議論にならないですから。

 

寺倉:メーカー側もそう思っていて、開示すべきデータは開示しないと、議論が進まないと感じています。ECはスピード感が大事なので、両社が分析するときもあります。さらに打ち合わせは密にしたいので2週間に1回、先々まで設定していて、PDCAをどうやって回していくかを一緒に考えています。

 

浅田:打ち合わせの場ではどういった話をされているのでしょうか?

 

島田:やはり半分はレポーティングです。管理画面だけだとスポンサー広告のキャンペーンROAS程度はわかりますが、そこからAmazon全体までは見られません。Amazon全体の中で、どれくらいキャンペーンが貢献しているのかを判断するためにASINベースで広告と繋ぐよう加工したデータを見たり、細かいキーワードの変動を確認しあっています。
例えばスポンサー広告は皆ビッグワードに注力する傾向がありますが、ボリュームが出る一方でパフォーマンスが悪い点をどうしていくかなどをキーワードごとに精査しています。インプレッションは出ているけども全体の広告金額内で調整しながら効率化していきましょうといった話をしています。
残りの半分は企画ですね。

 

寺倉:お酒にはシーズナリティがあり、花見の時期に特に売れるなどの傾向があります。そのような季節やイベントに合わせた訴求はスポンサープロダクト広告ではできないため、シーズナリティに合わせて予め年間カレンダーを作っておき、ストアを制作、スポンサーブランド広告(旧ヘッドライン検索広告)を実施するようにしています。

 

参考:

Amazon Marketing Service(Amazon マーケティングサービス、以下AMS)についてご紹介している本連載。前回まではAMSの始め方や具体的な運用ポイントについてお話しして...

 

 

島田:このように定例会では話すべきことがたくさんあります。
ただ広告レポートを読み上げるだけの定例会には本当に意味がなくて、広告以外も含めた全体の売上も把握した上で広告について考える必要があります。

言い換えれば、アクセス解析でサイト全体の売上を見て、自然検索の流入なども見た上で広告の話をするといった具合です。そこを広告だけで見てしまうと全体像が見えない中で一手法にとらわれてしまうため、無駄以外のなにものでもありません。

 

寺倉:我々も広告に関するデータだけでなく、Amazon全体のデータを開示しています。最終的には効率が合わない場合は停止も検討して良いのでは、とまで言ってくださるほど総合的にコンサルティングしていただいているので、信頼しています。

 

浅田:販促全体を信頼して実行できるパートナーという感じですね。

 

島田:運用パートが外部組織であるという違いなだけであって、基本的には同じチームであると考えています。役割分担がしっかりできた点が最も大きかったですね。

 

浅田:役割分担は最初から綺麗にできていたのでしょうか?

 

島田:もちろん役割は分担してスタートしているのですが、段々呼吸が合ってきた感じです。
今までサッポロビールさんの自社運用では運用調整以外にも企画の実行、Amazonとのリテール対応など業務が多く、手が回っていませんでした。本来はシーズンに合わせた企画や販促計画を立てることをメインにされたかったので、今はそれに専念いただき、私達が運用に落とし込むという形で分担できています。

 

寺倉:目的を1つ決めてからは年間での目指したい方向が同じなので、自然と呼吸が合っていきましたね。
広告主は悩まれている方が多いと思います。あれもやりたい、これもやりたいと。目的が複数に渡る時期がありますが、捨てるということも大事です。結局Amazon全体での売上最大化がゴールなので、その目的が合致していることが広告の成果拡大にも寄与したのだと思います。

 

 

EC業界全体を盛り上げるために

 

浅田:これから期待していること、やりたいことはありますか?

 

寺倉:スポンサー広告から離れるかもしれませんが、メーカーとしてはグラフトンノートさんのような企業が増えてほしいと思っています。お酒業界のEC化率は5%未満とまだまだ低いのでEC化率を上げていって、業界全体を盛り上げていきたい。その中に、サッポロビールがいられればなと思っていますし、それにはグラフトンノートさんのようなパートナーの存在が必要不可欠です。

 

島田:現在チームとしてはAmazonメインで取り組みさせていただいていますが、必ずしもそれだけが正解じゃない場合もあります。視座を高く持ち、EC全体の売上を上げる施策について取り組んでいきたいと考えているのでお取り組みとしても幅を広げさせていただきたいと思っています。

 

浅田:貴重なお話をありがとうございました! お二方のような関係性の取り組みが増えることを私も心から願います。

 

 


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