Integral Ad Scienceに聞く:アドベリフィケーションへの取り組みと日本市場

Integral Ad Science Scott Knoll

自動化・効率化がますます進む方向にある運用型広告では、広告価値毀損を構成する3つの課題「アドフラウド」、「ブランドセーフティ」、「ビューアビリティ」についての正確な把握と抜本的な対策を行うアドベリフィケーションへの取り組みがより一層重要となっています。


そこで今回は、デジタルメディアの品質評価・広告検証事業を展開する米国Integral Ad ScienceのCEOであるスコット・クノールさんをお招きし、お話を伺いました。


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インテグラル・アド・サイエンス (IAS) は広告効果検証の枠を超え、透明性を軸に真のデジタル最適化実現をサポートするデータ&テクノロジー企業です

話し手:Integral Ad Science CEO スコット・クノール
聞き手:アタラ合同会社 CEO 杉原 剛


※このインタビューは2018年10月22日に実施されました。



先行する米国のブランド


杉原:まずは御社の事業内容をご説明ください。


スコット・クノール(以下、スコット):Integral Ad Science(インテグラル・アド・サイエンス、以下IAS)はブランド、パブリッシャーの両者をサポートし、デジタル広告事業のさらなる発展のために活動するテクノロジー企業です。とりわけブランド保護につとめ、無意味なインプレッションで費用を無駄にすることのないよう対策をとっています。私たちはビジネスを保護すると同時に、その成長を支援しています。


Integral Ad Science Scott Knoll


杉原:この分野には、いつ頃から関わっておられますか?


スコット:私が IAS に入社したのは2011年の初めごろで、それからずっと CEOです。ですので、期間にしてだいたい7年半になります。会社が創設されたのは2009年です。


杉原:では、デジタル広告業界を個人的にはどのように見ておられますか。今、何が起こっていて、どのようにとらえておられるかお聞かせください。


スコット:そうですね。今まさに、この業界はとても興味深い時代に突入しています。なぜなら、ユーザーはますますデジタル機器を通してメディアを楽しんでおり、同時にその状況が、ブランドにあらゆる種類の課題をつきつけているからです。ブランドは、彼らが一番効率的にユーザーにリーチする方法は何か、その方法の効果計測をどのようにすればいいか、成功を決定づける指標は何かなどを理解しなければなりません。


この業界の初期の頃は、クリック数やインプレッション数にだけ注目していたのです。その後わかってきたことは、これら業界初期の仮説の多くは、かつてほどの意味は持っていないということです。


杉原:グローバルに展開するブランドの最近の傾向について、少しお伺いします。彼らは御社のソリューションをどのように活用していますか。


スコット:まず第一に、ブランドセーフティがブランドにとって最重要課題であるべきだということを私たちは認識しています。一部のマーケットでは9〜10年ほど前からこの問題が認識されていましたが、他のマーケットにおいてもついにこれが認識されるようになりました。オープンなウェブメディアだけでなく、Facebook や YouTube、Google といった独自のプラットフォームにおいても大いに懸念されている問題です。


二つ目に、ますます多くのブランドが、彼らが購入した広告が人に対して配信されビューアブルであることである必要性を認識しています。これは極めて当たり前のことに感じるかもしれませんが、少なくともアドサーバーから配信された広告の半数は、実際にはページに表示されないかユーザーの目に触れるチャンスがないことが分かっています。


三つ目の傾向、これは私たちが率先して進めており非常にエキサイティングなことですが、広告が実際にユーザーの前に表示される時間が非常に重要で、その時間が長いほどブランド認知度は向上し結果的に売上増加につながる機会が増えるということが認識され始めています。


これは新しい概念ではなく、例えばテレビCMの枠は時間単位での販売が基本です。しかし、今や私たちはデジタル広告において広告が実際にユーザーに表示された時間を計測することが可能となり、ここに焦点を当て始めることが本当に必要です。なぜならば、「広告がユーザーに表示された」ことが全て同じ価値を持つわけではないからです。


言いかえれば、ユーザーに10秒表示された広告は、1秒しか表示されなかった広告よりも確実に価値があります。それにも関わらず、今日のデジタル広告においては一般的にこれら2つを同じビューとみなすのです。ビューアビリティは、ビューアブルかそうでないか、良いか悪いかといった二択の指標ではなく、広告が表示された時間はあらゆるキャンペーンにおいて考慮されるべき重要なポイントです。


杉原:同感です。米国内のフォーチュン500企業ですと、だいたい何割ぐらいが導入されているのでしょうか?


スコット:現時点で80%から90%のフォーチュン500企業がアドベリフィケーション・サービス活用しています。ほとんどのブランドが今やアドベリフィケーションの必要性を認識しており、多くのフォーチュン500企業はグローバルにビジネスを展開しているので、私たちの事業にとっても非常にエキサイティングです。これらの企業は米国外でもアドベリフィケーション・サービスを活用しています。


杉原:IASが選ばれる理由は何でしょう。


スコット:IAS は今のところ、アドベリフィケーションの分野で最大の企業です。競合他社の倍以上のチームを抱えており、予算の大部分をテクノロジーに投資しています。


また、弊社はイノベーターであり続けています。ブランド毀損を引き起こす可能性があるコンテンツの含まれるサイトに広告が表示されないようにする広告ブロッキングの技術開発や、RTBと連携するためのデータ作成は弊社の実績です。


私たちは「タイムインビュー」(蓄積閲覧時間、ビューアブルなインプレッションにおける閲覧時間の平均)という新しい指標を作りました。また、パブリッシャー向けに自動最適化ツールを開発しました。これによりパブリッシャーはアドベリフィケーションを活用した広告のリアルタイム配信を行うことができ、ブランドのニーズに応えることができます。


参考:

MQRはIASがグローバルで年2回実施している調査で、世界全体で発生する膨大なインプレッションとさまざまな市場環境要因をあわせて分析し、デジタル広告に携わるすべての...


これらはすべて IAS が開発したもので、他社も追随してきています。他にも、私たちは業界の主要なグローバル企業とパートナー関係を築き、またサービス分野にも多く投資しています。


弊社がビジネスを展開する主要国の現場にはしっかりと人員を配置しています。これは、キャンペーンを正しく設定するためだけでなく、たとえばパブリッシャーがアドフラウドやビューアビリティに関する問題を抱えている原因をつきとめ、バイヤーとパブリッシャー双方のためにこれらの問題を迅速に解決するためです。こういったサービス分野への投資は、グローバル企業が弊社を選びやすい環境を作り出していると思います。


独立性を保ち、日本市場でも攻勢


杉原:さて、競合企業は大手IT企業などによって買収されるなどの状況があります。御社は独立を維持してこられました。どうでしょう。今後も、方針を変える予定はありませんか。御社にとって、独立性は非常に重要でしょうか。


スコット:幾つかのことを考慮しなければなりません。まず、バイサイドとセルサイドの双方と協業し両者の信頼を得ているという点で、弊社はユニークな企業だといえるでしょう。弊社は独立性を維持することにより特定の立場というものを持たないのです。つまり、もし弊社があるパブリッシャーに所有されていたらパブリッシャーサイドに偏るでしょうし、ブランドに所有されていたらブランドサイドに偏るでしょう。ですので、独立性は重要なのです。


投資資金を得ることも重要です。成長し続けるために、さらにテクノロジーやデータサイエンス分野に投資する必要があります。弊社は今年初め頃、投資会社のビスタ・エクイティ・パートナーズより巨額の投資を受けたことを発表しました。同社の資金援助により成長を加速し、他の企業を買収することも可能になったと思います。私たちは潤沢な資金を得て、かつ独立性を失いませんでした。


参考:

全世界の IAS カスタマーのサポート強化および継続的なイノベーションのため大型投資へ


杉原:日本市場への期待や取り組み状況についてお聞かせ願えますか?


スコット:日本についてはまず、世界有数の広告市場であるといえます。日本にビジネスの基盤もしくは本社を置いている有名ブランドは数多くあります。また、地域的にも世界的にも、日本はデジタル世界のリーダーとして見られているので、日本で大きなプレゼンスを持つことは重要だと考えています。


最終的には、この業界の革新とさらなる発展のために日本の企業と密接に連携していきます。1つの例として、日本でブランドセーフティを重視した取り組みを開始したことがあげられます。私たちは1年以上もヤフーと連携して、市場のニーズに合致するブランドセーフティ基準の策定に取り組んできました。私たちは他の地域で使用している区分をそのまま日本に持ち込むことはしませんでした。日本市場のニーズに合わせてカスタマイズされるのを待ったのです。


杉原:現地のニーズですね。


スコット:仰る通りです。現地のニーズから考え、日本には早くから来ていました。初来日は2012年と早かったのですが、日本市場に参入する前にアドベイリフィケーションのニーズを把握するためにしばらく時間をかけました。確かヤフーとの提携を発表したのは2014年の終わり頃ですが、彼らとは今も密に連携しています。


それから 2、3年ほど後に、バイサイドにおける電通との大きな提携を発表しました。その頃は主に教育や、新たな指標を導入するか私たちのソリューションが解決できる市場の問題を示すか模索していました。


アドフラウドやビューアブルでない広告の問題に気付いた場合、ソリューションを提示し、実際に問題を解決できるようブランドやパブリッシャーをサポートすることは当初からの理念の1つです。そうでなければ、私たちは単なる厄介者でしかないでしょう。


Integral Ad Science Scott Knoll


杉原:日本参入においては、おっしゃられたように、現地のニーズ、現地のタイミング、これについて熟慮されたと思われます。それを踏まえ、今、日本のブランドは何をすべきだと思われますか。


スコット:興味深いことに、日本のユーザーはブランドの先をいっているため、ブランドはユーザーにどのようにリーチできるか苦戦を強いられています。この問題から、非常に興味深いことがわかると思います。それは、世界中のブランドがデジタルに対応しなければならないたった 1 つの理由は、世界中のユーザーが今やみんなデジタルの世界でメディアを楽しんでいるからなのです。


テレビすら急速にデジタル化しています。あなたがブランドなら、そしてユーザーにメッセージを届ける手段として広告を頼りにしているのであれば、変化し適応する必要があるのです。思うに、日本における問題は、ユーザーが先をいっているにも関わらず、広告は初期の頃のようにダイレクトレスポンスを重視したままだということです。


杉原:重視していますね。たしかに。


スコット:また、日本の広告の多くはいまだにクリック数などアクションに結び付いた指標がベースとなっています。その方法が合っているブランドもいます。とりわけローカルなEC事業者などの場合にはぴったりなのです。


トラベルサービスや何かしらオンライン予約サービスを提供するブランドであれば、アクションベースでの広告運用で問題ないかと思いますが、化粧品やソフトドリンク、食品や石鹸を世界的に販売している大多数のブランドにとっては、クリック数やダイレクトレスポンスの指標では、広告の効果を正確に計測することはできないのです。


それはどちらかというとテレビCMの考え方に似ていて、再び時間が基準となります。こうした圧力にさらされるのは消費財メーカーだと思います。ユーザーはデジタルを活用しているのに、ブランドはまだそれを理解しなければならない状況なのです。


話が長くなりましたが、こうした動きは消費財メーカーによってもたらされるでしょう。もうすでに日本でもそのような変化を一部見ており、それは非常に素晴らしいことです。特に私たちのような企業にとっては、ブランドへの説明、また、ブランドに助言する代理店への説明の助けともなってくれます。


また、テレビのデジタル化がますます進むことにより、状況は急速に変わり始めると思います。そうすれば、全く新しいデータを見る機会を持つようになるでしょうし、一方でデータ活用の仕方を誤ってミスリードしてしまう可能性もあります。


杉原:わかりました。ひとつ質問があります。ブロックチェーンについてはどう思われますか。このテクノロジーは透明性の面で広告業界に役立つでしょうか。


スコット:ブロックチェーンは、本当に興味深いテクノロジーだと思っています。アドベリフィケーションのみならず、デジタル世界に大きなインパクトを与えるでしょう。しかし現時点では、さかんに喧伝されてきたようなイニシアチブをブロックチェーンが持つには至っていません。


決済サービス等の特定分野において、ブロックチェーンはより早く活用されると思いますが、いずれはアドベリフィケーションの分野においても活用されるでしょう。しかしながら、ブロックチェーン活用に関してはまだやっと理解が進み始めた段階です。


もうひとつの重要なテクノロジーで、すでに実際に活用されているものとして人工知能がありますね。動画でいうと、動画の内容、そのカテゴリのニュアンス、そして最終的には再生されている動画をリアルタイムでモニタリングしアクションを起こす計測ソリューションなど、これらは人工知能抜きには実現不可能です。


杉原:現在、人工知能を御社のソリューションに活用されていますか。


スコット:はい。人工知能にたくさん投資をしています。現在までの長い間、機械学習に取り組んできましたが、今後さらに投資していきます。今は数多くの動画があり、クライアントからの要件の基準も高くなっているので、人工知能の力なしでは困難を極めます。


YouTubeとの仕事を通しても、計測ソリューション構築に関して本当に考えさせられる部分があります。YouTube上にある動画の量を時間単位で換算すれば分かりますが、非常に洗練された機械学習アプローチが必要とされるのです。


杉原:さて、イベントの予定がありますね。大きなイベントで、木曜日ですね?御社がこれだけの大きなイベントを、ここ日本で開催されるのは初めてですね?この地域への御社のコミットメントを、日本の業界関係者に示す機会と考えていいのでしょうか。


(*IASのNY本社からCEOのスコットを始め、CMO, CRO, CPO, CTOおよびIASのアジアのリーダーなどのエグゼクティブメンバーが日本に集結し、2018年10月25日(木)に皇居前のパレスホテルにて、日本では初となるIASのイベントを開催。パブリッシャー/プラットフォーム、ブランド、広告代理店などが数多く参加し、盛大なイベントとなった)


スコット:そうです。過去にもう少し規模の小さいイベントを何度か開催したことはありますが、当社のエグゼクティブメンバーが日本に全員集結するのは初めてです。数多くの業界関係者をご招待しており、日本や他の地域での弊社の活動についてお話します。


この地域周辺には弊社のオフィスが数か所あり、本イベントをどこで開催するのかについては議論があります。年に一度のイベントで、以前ここ東京で開催したこともありましたが、最終的に再び東京で開催することを決断しました。なぜならば、日本は弊社にとって非常に重要な市場であるからです。日本市場に弊社の事業を本当に理解してもらうきっかけをつくりたいと考えており、サポートもしっかりとしていくことを示したいと思っています。


杉原:短期ビジョン、あるいは短期目標は、ブランドとしての市場理解を深めさせること、つまり教育、情報発信でしょうか。


スコット:そうですね。市場の現状に即したリーダーとなり、育成、サポートをできたらと考えています。


杉原:わかりました。最後に日本のマーケティング担当者、あるいはブランドに向けて、何かメッセージはありますか。


スコット:繰り返しになりますが、日本がデジタル広告の分野で後れを取っていると評価されているのは、単に遅れているというようなことではなくユニークな市場だからだと思います。しかし、オンラインだけでは成果をトラッキングできない消費財や他の製品を販売している大手ブランドが成功するためには何が必要かを理解していかなければならないとも考えています。


ユーザーは数ある中からブランドを選択し、私たちはその選択のメカニズムを理解する必要があります。そして、日本はこの理解を進めることに成功すると私は確信しています。新しいものを導入し成功させる文化を、これまで日本は何度も証明してきたからです。


杉原:そうなることを願っています。ありがとうございました。

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