プリンシプル 山田さんに聞く:Googleアトリビューションの活用法と広告運用者に求められるスキル

アトリビューション評価の重要性

ユーザー行動の複雑化と、デバイスやチャネルの多様化によって、デジタル広告におけるラストクリックコンバージョンだけでは、適切な評価は難しいと言われています。対して、アトリビューション分析を行うものの、入札などのアクションに繋がらない、売り上げが増加するか分からない、といった多くの疑問を持つマーケターの方も多いと思います。


Googleは、2017年5月に開催されたGoogle Marketing Next 2017で、複数のチャネルとデバイスを横断してデータの計測、分析を可能とする「Googleアトリビューション」を発表しました。今回は、実際にGoogle Analytics 360やAdWordsを扱う、プリンシプルの山田さんに、「Googleアトリビューション」がマーケターにもたらすことは何か、お話を伺いました。


※「Googleアトリビューション」は2018年7月現在、正式な公開日は未定です。


話し手
株式会社プリンシプル データ解析事業部チーフテクノロジーマネージャー 山田良太さん


聞き手
アタラ合同会社 ナレッジコンサルタント 大友直人




大友:まずは山田さんのお仕事について、教えてください。


山田:プリンシプルの山田と申します。もともと新卒で入社した会社ではERPのパッケージ開発をやっていたのですが、違う領域の仕事に興味を持ち、マーケティングチームに転身しました。


プリンシプルには約1年前に入社して、現在はGoogleアナリティクスの高度な設定をメインで行っています。例えばWebサイト上で特別なアクションをしたユーザーのデータを取りたい、ECサイトにおける拡張eコマースの実装、など、お客様自身でやろうとすると少し難易度の高いことのサポートなどです。他にも、お客様の持つオフラインの情報をBigQueryなどのデータベースに上げて、Tableauで可視化するための基盤部分の開発も行っています。


大友:ありがとうございます。では早速ですが、まずはAdWordsのデータドリブンアトリビューション(以下DDA)についてご意見を伺えればと思います。AdWordsの検索広告のDDAがすでに使用可能となっていますが、いまだにラストクリックに依存している広告運用者やマーケターが多いように思います。


もちろん、コンバージョン期間のクリックパスを考慮したうえで最適なアトリビューションモデルを選択する必要があり、さらにデータ要件が高いので、導入の難易度は高いのですが、AdWordsを運用するにあたって、各クリックパスを評価するDDAをどのように活用していけば良いと思われますか?


山田:やはりデータ要件が厳しくて使いづらいという部分と、検索広告のみなので、様子見の段階かなと思っています。ある程度規模があり、検索だけでもある程度の予算を使って広告を出せるお客様や、キャンペーン数が多いアカウントであれば、どんどん使っていけば良いのではないかと思います。


大友:DDAを利用する目安として、過去30日間にGoogle検索で15,000回以上のクリックと、600回以上のコンバージョンが必要ですが、一番のハードルは、やはりコンバージョン数でしょうか?


山田:コンバージョンと、アトリビューションでどの程度改善できるのかという規模的な部分だと思います。使っている金額によっても変わってくると思うので、それがある程度担保できるのが、過去30日間のコンバージョン数が600件なのではないかと思います。



大友:過去30日間で600件のコンバージョンとなると、規模の問題から使用できるアカウントは限られてきますね。その場合、例えばマイクロコンバージョンを設定してDDAを使用するという考え方もあると思いますが。


山田:初回のクリックからコンバージョンまでのパスがある程度長くないと、アトリビューションを考える意味はありません。実際のコンバージョンの手前にコンバージョンポイントを置くとその分コンバージョンまでのパスは短くなるので、データドリブンにする必要はないのではないでしょうか。


大友:パスの期間と規模を見て、最適なアトリビューションモデルを判断することが重要になりそうですね。


山田:また、キーワード単位などの細かな粒度でアトリビューションを見ようとしてもデータボリュームが少ないので、キャンペーン単位などの粒度で見ることを考えると、キャンペーンの分け方も重要になると思います。


大友:機械学習が働きやすいキャンペーン構成、ということでしょうか。


山田:それも、キャンペーンをどんどんまとめすぎるとDDAのコンバージョン計算にも関わってくるはずなので、その間をうまく模索しなければならない段階かと思います。




Googleアトリビューションに期待すること


大友:現在、AdWordsのDDAは検索広告のみ適用されています。しかし、現段階では、検索広告でAdWordsだけを使うお客様はそこまで多くないため、実用も難しいと思います。そのような状況を解決するために、2017年5月に「Googleアトリビューション」が発表されました。


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Googleアトリビューションは、AdWordsだけでなくDoubleClick Searchと連携して入札にも適用できるので、分析からアクションの幅が広がる点で期待が持てそうだと考えています。山田さんはGoogleアトリビューションのどの部分に期待されていますか?


山田:やはり、対象となるチャネルが広がる点が大きいですね。色々な所と繋がることでAdWordsの評価方法も変わってくるだろうし、使い方によってはコンテンツマーケティングやソーシャルメディアの評価も今までとは少し変わってくるのではないでしょうか。オーガニック、ソーシャルなど広告以外のチャネルの評価の仕方も、今までよりも高レベルに、わかりやすく評価できるようになると考えています。



引用元:Inside AdWords


大友:アトリビューション分析ツールはいくつかありますが、それらとGoogleアトリビューションの違いはどのような部分だと思われますか?私は、GoogleアナリティクスとAdWordsの連携が前提条件なので、連携さえしてしまえば測定データをすぐに見られる所が他ツールとの大きな違いかと思います。


山田:無料で使えるという部分が大きいと思います。第三者が出している有料ツールだとどうしても利用者が分散してしまうため、使い方がわからない時にはベンダーに問い合わせるしかないケースが多い。しかしGoogle系のツールで、しかも無料であれば利用者も多く、色々な人が色々な所で情報を公開しています。困ったときに聞く相手が多いというのは、大きな強みです。


大友:Googleとしても、Googleアトリビューションの利用を推奨していて、AdWordsやDoubleClick Searchと連携すると、Googleアトリビューションでマーケティング全般を一気通貫で見られるようになります。しかし、そうすると情報がGoogleだけに集約されてしまう。Googleに依存する状況に不安や危機感は感じられますか?


山田:私としては、そのままどんどん依存してもいいのかなという気がします。それがもし自社だけが依存している状況だと問題ですが、多くの会社・サービスがGoogleに依存している分にはデメリットもないかと思います。


他社のツールによっては、データを取り込むことはできても、APIなどを通じて外部システムにエクスポートすることができないものもありますが、Google製品は外部システムにエクスポートする方法も提供されていることが多いので、データがロックインされてしまう(Googleサービスでしか利用できない状況になること)リスクも少ないと思います。




クロスチャネルで入札への統合が可能に


大友:これまで、「アトリビューション分析」といえばGoogleアナリティクス360やDoubleClick Campaign Managerを使って分析はできました。ただし、「入札」に直接適用はできない点が課題でした。反対に、「入札」に適用できるのはDDAやDoubleClick Searchですが、こちらは「分析」のレポートが見られない。


その両方を補完してくれるのがGoogleアトリビューションですが、GoogleアトリビューションでDDAを使用するためには全チャネルの合計コンバージョンが過去30日間で1000件を超える必要があります。これはAdWords検索のDDAと同じくかなりハードルが高く、基本的には大企業しか使えないのではないかと感じています。中小企業や予算を大きく使わない方は、どのようにしてGoogleアトリビューションを活用すれば良いのでしょうか。



画像:Googleアトリビューションの位置づけ


山田:規模が大きくなければなかなか難しいと思いますが、例えば、Measurement Protocolなどを使い、今まで計測できなかったコンバージョンを計測できるようにする方法が考えられます。例えばECサイトで、Webサイトでのコンバージョンが5~600件しかないとしても、電話問い合わせや実店舗での購入を合わせれば月1000件を超えるケースもあると思います。


資料請求系でも、テレアポのアポや、セミナーでのアポなど、同じコンバージョンと捉えられるのであればそのデータをGoogleアナリティクスに対してMeasurement Protocolという方法でデータを入れてあげる。そうすることで要件に達するケースが出てくると思います。



Measurement Protocolで入れられるのはヒットデータになるので、例えばページビューやイベントの情報をGoogleアナリティクスに入れ、ページパスやURLに対応するコンバージョンを作成しておけばコンバージョンとしてカウントされます。テレアポでアポを取った時にMeasurement ProtocolでビーコンをGoogleアナリティクスに飛ばしてあげるイメージです。


大友:ほかにMeasurement Protocolを有効に使える場面はありますか?


山田:例えばテレアポでアポが取れなかったとしても、「電話した」という情報をGoogleアナリティクスに入れることで、その人が別経路でコンバージョンしたときに、コンバージョンパスの中に「電話」という経路を入れることができます。DMやメルマガの送付でも同様のことを実現することが可能です。そこれらのオフラインの施策の成果がGoogleアナリティクスやGoogleアトリビューションで見られるようになると、今までデジタルマーケティングと切り離して運用されてきたチャネルを、デジタルマーケティングの枠組みの中で評価できるようになると考えられます。


大友:Measurement Protocolは技術的な要素が多いと思います。マーケター側に求められるスキルやマインドセットはありますか?


山田:マーケター側は、技術的な部分の基礎を知っておくことが、今後ますます必要になると思います。Measurement Protocolに限らず、ITPやCookieなど、知っておいて損はない知識が増えてきているので、非エンジニアであっても広く浅く知っておくことが重要です。


対してエンジニア側は、そもそもGoogleアナリティクスやタグマネージャーを使ったことのある人が少ないので、マーケティングを知るエンジニアを増やす必要があります。エンジニアってプログラムを書くのが好きな人が多く、特に自社製品ではなく委託で開発する制作会社の人などだと、作ったプロダクトを伸ばしていく部分にあまり興味のない人が多いのが現状です。作った後にどう伸ばしていくかまで考えられる人が求められていると感じます。



大友:そうですね。マーケター側からすると、例えばカスタムディメンションなど、Googleアナリティクスの管理画面でできることの、その先の部分にハードルの高さを感じる広告運用者も多いと思いますが、そういった知識を広く浅くでもいいので持っておくことの重要性が今後ますます増していきそうですね。ちなみに、Measurement ProtocolやCRMを利用した分析の事例はありますか?


山田:ECサイトのお客様の場合、Webサイト上のデータとお客様の持っているCRMデータを統合してTableauに繋いでダッシュボードを作っています。BigQueryに繋ぐケースも最近は増えてきていますし、Tableauから直接Googleアナリティクスに繋ぐケースもあります。


ちなみに弊社では、様々なデータをBigQueryに入れています。例えばGoogleアナリティクスのデータ、Salesforceの商談データ、Marketoのデータなどを入れて、どんどん溜めていく。それらのデータを組み合わせたTableauのダッシュボードを作って活用しています。


大友:ビッグデータを分析する際にはSQLの知識が必要ですが、そういった知識も少なからず持っておくべきですか?


山田:SQLとなるともう一段階ハードルが上がると思います。SQLの場合、最初にデータベース上にデータが入っていないと何もできませんが、データベースの中に分析するためのデータを入れるのが難しい。それはマーケターがやる仕事ではなく、エンジニアの仕事だと思います。社内にそういったデータがあるのであれば、そこから取り出すためにSQLを学ぶことは理にかなっていますが、データベースが何もない状況で勉強しても活用するまでの道のりが遠いのが現状です。とはいえ、マーケター向けのデータベースを構築するサービスも出てきているので、今後3〜5年の間にはSQLはマーケターの重要スキルになっている可能性は十分にありえます。


大友:たくさんのお話をありがとうございます。最後に、GoogleアトリビューションやDDAが誕生したことでクリックパスやデバイスの評価はほぼ自動化されており、マーケターや運用者の仕事も徐々に変わってきています。今後、マーケターや広告運用者がやるべきことは何だと思われますか?


山田:今までであればGoogleアナリティクスに入ってこなかったオフラインの接点情報をGoogleアナリティクスに入れることで、今まで以上に分析のもとになるデータがきっちりとしていきます。そのためには、先ほど言ったエンジニアサイドの知識を広く浅く知っておくことは、とても大切なことだと思います。


大友:本日は貴重なお話をありがとうございました!

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