テレビメタデータが切り開く、通信と放送の融合の可能性

AKB48ブームのからくり

有園:何か例はありますか。

梅田:これはAKB48の番組露出の事例です。

7_AKB48Trend

我々は10年以上のデータストックがあるので、過去までさかのぼってトレンドを追えます。AKB48が最初にテレビに出たのが2005年12月4日。2つの番組です。

有園:「秋葉原48劇場が・・・・・・」って言葉がありますね。当時は、AKB48じゃないんですね。

キャズム発生100分の壁

梅田:30秒とか、180秒くらいの露出からスタートして、徐々に盛り上がってきているわけです。当たり前の話ですが、どっかでキャズムがあって、それを超えて、メジャーにヒットしてというときに、テレビと検索、あるいはソーシャルの活動でも、売り上げでも、相関性のあるところ、ないところはあります。タレントでいうと、TV Rankでは週間6000秒、つまり100分。この100分を超えるか超えないかあたりに、なんとなくキャズムがありそうです。カテゴリ、商品、ブランドによって違いがあるとは思いますが。

有園:100分というのは1日ですか?

薄井:1週間です。NHKと民放キー5局、いわゆる関東の地上波の総露出時間が、1週当り100分のキャズムラインを、我々はタレントさんが国民的レベルでブレイクするための「100分の壁」と呼んでおります。

有園:タレント以外の要素でもですか?

梅田:アイドルの場合です。100分以上露出させるだけの番組のキャパがなかったりするので、ニュースやバラエティなど他にも出ていかないと100分を超えられないです。瞬間的に出てもだめで、継続的に出ていかなければなりません。心理的に影響していくものもあるので目安としては100分です。

週100分を超えた後に、AKB48もモモクロも紅白出場を果たしていますし、時の総理大臣に桜を見る会に招かれています(笑)
これは、メーカーさんの商品やサービスにも応用できます。

パンケーキブームの背景

梅田:「パンケーキ」の場合、検索と露出の関係で「パンケーキ」というワードがどのくらいテレビに出て、どのくらい検索されたか2007年から追ってみると、2013年、2014年くらいに検索のブームがあり、2013年に番組のピークがあります。

頭をそろえると、なんとなく番組が先行している時期があって、ネットでアーリーアダプターがついて、いろいろな評価がなされて、何段階かあるのですが、テレビの動向はある程度トレンド動向の指標として使えます。タレントに限らず、ブランドやトレンドにもテレビの果たす役割はあります。それぞれの話題にあわせて見ていくことがポイントです。

有園:パンケーキって、ハワイアンのとかですよね。

梅田:最高の朝食とか。

有園:表参道でたくさん人が並んでね。

梅田:ああいうものが蓄積されて最後は近所でも手に入るようになっていきます。
パンケーキは画がすごくいいですから、ソーシャルの展開も加速し、写真をあげるために行っているんじゃないかと思えるほどの影響も(笑)

有園:「食べたよ」と言うのがオシャレだったりするんでしょうね。SNS向きの画が撮れる。

「アナ雪」が流行した理由

有園:テレビの力が弱くなっているといわれるなかで、ソーシャル動画などを使ってリーチを補完するような動きが、ここ何年か出てきています。

「忍者女子高生」とかが流行ったりして。ネットで広がっただけでは一部で流行っている感じにしかなりません。感覚的な問題ですが、ネットで始まった情報がテレビでも取り上げられて、それがさらにネットで拡散して、リーチをドライブしていく。

梅田:「アナと雪の女王」なんかは、まさにそれです。

テレビって、パッシブなものです。自分で録画したりはできますが、アクティブな人ってタイムシフトしてしまったり。意外とリアルタイムに同時に見るっていうのは、パッシブな態度で見ていて、本来はそれに興味がなかったけれど見てしまったというのが多いのではないかと感じます。キャズムも何段階かあるなかで「うちは30パーセントまでいけばビジネス目標を達成できるからいいよ」という人がいれば、「100パーセントでも足りないから、200パーセントいけよ」っていうビジネスもあるかもしれません。

そうすると、最後はどれだけマジョリティにリーチして、自分たちのファンにするか。そこがテレビにあるかなって思います。

ある特定の人だけに分かってもらえればいいってケースは、もしかしたらテレビは弱いかもしれません。でも、その展開が二次、三次、四次と波及していくとき、テレビが介在せずにそこまでいくのは難しいのではないかなと思います。「ミッション・インポッシブル3」が、2012年の洋画興行収入ナンバーワンです。だいたい、「ミッション・インポッシブル3」くらいの露出をすれば勝ちだよねっていうのが業界のセオリーです。

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「アナと雪の女王」の場合、公開までは「ミッション・インポッシブル3」と変わらないのですが、その後が全然違います。公開まではディズニーさんからオフィシャルな情報がどんどん出てくるのですが、その後はYouTubeの影響があったりします。最初は、タレントがYouTubeへ投稿して、今度は劇場で歌ってみようということで一般の人が並んで歌って、情報が裾野に降りてくる。それ自体に価値があるのでテレビが取り上げる。アナ雪現象などと呼ばれましたが、人がそれについて動く様が非常に面白いってことになりました。パンケーキもそうですが「俺たちだけが知っていればいい」という状況を超えるとき、テレビの力はあるかなって思います。

「ミッション・インポッシブル3」の場合は、どっちかというと右側のテレビの露出があり、我々はバーストと言っていますが、プッシュの力技でPRと宣伝を頑張ることがあり、そこを縦にバズが取り上げられて、バズ自体が面白ければ、それだけで番組になっていく。そこでいい循環ができます。これを作れるか作れないかが、けっこう仕込み系のキャンペーンでは大きいです。

一過性のブログがあがりました、ツイートがありましたってのがよくありますが、すぐ収束してしまうんです。そうではなく、かなりオーガニックに人が「面白いね」って言って、まさに現象と呼ばれる状況になると、それ自体をテレビが取材に来て、番組が扱うということが起きたのが「アナと雪の女王」だと思います。

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有園:縦にいけばいくほどブログで取り上げられていて、右にいくとテレビの力技で露出していますということですね。

薄井:これはエンタメに偏った事例ですが、これを広告主の商品やサービスにも応用でき、事例や実績もでております。これらの分析を効果検証に終わらせることなく、マーケティングの次の一手につなげPDCAを回し易くすることを意識しています。

流行のきっかけは小さな波

有園:3000GRPテレビCMを流しても、全部が盛り上がるわけではありません。そうなると、必ずしも3000GRP打てばいいってわけでもない。ここの連携をとりながらやっていくというプランニングをしないといけない。「アナと雪の女王」と「ミッション・インポッシブル3」を比べると、こういった感じで流れが違うことが分かるんですよっていう話は、すごく刺さると思います。テレビCMのGRPの投下量はどのくらいって話はしていても、「アナ雪」っていうワードで探っていったらこうなりますっていうチャートを見ている人は、まずいないと思います。

そういう意味では、今後のあらたなプランニングに活用できるような可能性がすごくあると思います。同じGRPを打っていてもバズが発生するもの、しないもの、同じようにテレビが取り上げてくれてもヒットするもの、しないものがあります。そうすると、ヒットするものとしないものの違いをきちんと分析することが必要になってきます。

ネットフリックスの「ハウス・オブ・カード」など、タグをいっぱい入れて分析しているらしい。御社がやっていることもテレビ番組にタグをつけているようなことです。番組の中でどんな話題があり、どんなタレントが出ているか。いろいろな軸で分析ができるってことは、どういう番組が誰にうけて、どのくらいSNSで拡散するかなどを分析して、新しい番組を作っていくような時代になっていく。

2020年にはスマートテレビが普及するといわれており、ネットとテレビがつながり、テレビ視聴履歴のデータをインターネット経由でサーバーに蓄積することができるようになるかもしれない。今は視聴動向といっても、放送局は視聴率を秒単位で追いながら一喜一憂していますが、見ていたのは20代の男性なのか50代の男性なのかは基本的にとれていないし、そこで何を言ったのかもとっていません。ネットとつながることによって、そういうところが、もっと細かくとれるようになるといいなって思っています。御社では展望などありますか。

次世代テレビメタデータをより使いやすく

薄井:近い将来には実現できるようにベース作りはしています。

梅田:次世代テレビメタデータをより使いやすくしようという構想があります。番組なりコーナーに対して、ネットでいうところのインタレストのタグづけをしていこうとしています。オフィシャルなタグになっていくと思います。視聴履歴に関しては、テレビメーカーなどが独自にとられていて。そういった会社が我々のデータを使っていたりするので、テレビコンテンツに対するインタレストっていう切り口と視聴者のオーディエンス反応というものの紐付けは、データ上では可能です。

有園:前メタなどが付いている状態になっているので、ほぼリアルタイムに紐付けができるようになるのですか。

梅田:ええ。テレビもオーディエンスごとにインプレッションがどうという見方もありますが、それを進化させた形ですね。

梅田さん

テレビ番組の作り方が変わる

有園:まさにハウス・オブ・カードがそうだったように、番組の作り方が変わると思います。それは、テレビCMの作り方にも影響するかもしれない。ネットにつながると視聴者の情報が手に入るようになると思うので、おそらく会員制とかが出てきて、有料会員になると「こんなセカンドスクリーンが無料で使えます」とか「CDを買わなくてもAKB48の選挙にIDで投票できますよ」みたいなこともできるかも。

そうすると、有料会員からの収入でテレビ局の収益基盤も安定します。AKB48の投票権が付いて月額300円とかだったら、入る人がいるんじゃないか。テレビ局は、テレビCMが売れなくなったとしても、有料会員向けサービスで固定収入を得ることもできるじゃないかって思っています。

梅田:大事なポイントですね。

有園:会員化したらクレジットカード情報まで持って「ECもできますよ」って世界になるでしょう。たとえば、花王の「ヘルシア」みたいなものは40代・50代の男性に一番見てほしかったりするので、有料会員化するとデータがとれて、40代・50代男性が「ヘルシア」のテレビCMを見ているのかいないのかが分かる。見た人がネットで、バルクで買ってくれるのかが追跡できる世界になってくる。あるいは、TカードみたいなIDで連携すれば、「ヘルシア」のテレビCMに接触した人が実際にコンビニで購入しているかが追跡できる。そうするとテレビCMの作り方も変わるはずなんです。

薄井:どんな属性の視聴者が、いつどんな番組コンテンツやCMに触れ、ネットでどんなアクションを起こし、リアルやネットでどれだけ消費活動を行ったか、シングルソースで、かつワンストップでウォッチできるようになるでしょうし、そこにビジネス機会が生まれると感じます。

梅田:テレビ局の収益になるかが大きなポイントですね。

薄井:そうですね。一方で、テレビ局さんの収益を考えるにおいて、その源泉になる広告主さんの付加価値を高めることも重要ですね。そのマーケティング効果を最大化させる領域において、既にテレビメタデータとデジタル連携のマーケティング施策は進んでおりますが、その他にも、オムニチャネル、クロスチャネルでの展開も有効と考えます。

事例としては、テレビ情報を活用した来店促進企画やついで買いを促す施策、ネットスーパーでの販促活用、POPや仕入れ、棚割りといったストアマネジメントの他、新商品の開発やMD戦略、売上予測などのリテールサポートにもテレビメタデータの活用ニーズが広がり、いくつかの成功実績も得られております。

広告主さんのマーケティング効果が高まれば、テレビを活用したマーケティング機会も増え、テレビ局さんの収益に貢献できると考えます。その意味では、分断されていたオフラインのチャネルをつなぐ、まさにオムニチャネル施策がテレビメタデータで実現されますと考えます。

有園:テレビメタデータをとって何に使えるのかというストーリーを、どんどん発信していくことが大事です。ネットの力が強くなり、テレビもネットみたいになっていくと思いますが、放送局には収益を作るチャンスがまだまだあります。いままでのビジネスモデルに甘んじてきたので新しいことにチャレンジする精神が低い文化もありますが、御社みたいな会社がいる限りは、いろいろな可能性があると思います。

梅田:TV Rankが一番アクションしやすいと思います。ネットはあれだけデータが出ていて、先進的な試みも数多くあって、見える化もたくさんされていますが、「テレビは違うよね」っていうのがありました。TV Rankを始めるので、これからはそうではないってことを、特にデジタルマーケティング関連の方に認識していただけると嬉しいです。テレビ局にとってもいい話が出てくるかもしれませんし、フィードバックをもらえるとこちらも嬉しいです。

薄井:その意味では、従来のマスマーケティングに加え、その効果を検証できるようにし、デジタル施策の連携・補完することが重要なポイントになってきますね。その効果検証を可能にするのが「TV Rank」になります。

テレビとネットの相乗効果

薄井:放送と通信の融合という言葉がありますが、テレビとネットの相乗効果を作っていきたいと思っています。VODのように視聴オーディエンスをインサイトできるようなログが活用できるようになり始めています。視聴者属性や視聴行動、視聴傾向や嗜好性をクラスターとして分析できるようになります。

有園:すでにコネクティッドな(インターネットに繋がった)テレビが一部では出回っているから、御社にもデータが集まってきているわけですね。

薄井:視聴者パネルのデータを保有される企業さんの属性と視聴ログを掛け合わせ、DMPなどと連携することにより拡張オーディエンスにつなげられます。

有園:拡張オーディエンスというのは、ネット業界でいうルックアライクのことですね。

薄井:はい。テレビに同期した連動型広告での相乗効果が、まさにテレビメタデータをトリガーにして実現していくだろうというのが考えです。テレビメタデータを基点に、テレビ連動型のDSPを実現すべく、DSPさんとの協業やDMP接続の検討を進めています。

有園:それらの施策を検証してマーケティングのPDCAを回すためのツールが「TV Rank」かと思いますが、サービスはどのように受けられるのですか?

梅田:実は開発を終えたばかりで、この10月にプロト版をリリースし、皆様にトライアルいただけるように準備しております。

TV Rankのグレイドは、「ライト」「スタンダード」「プロ」の3タイプを用意しています。他のデータソースを統合し、クロス分析やエクスチェンジができるプロ版は完全カスタム対応なのでその都度開発が必要ですが、ライト版とスタンダード版は10月中に展開されます。価格も1アカウント月額5万?10万円の価格帯でご提供予定です。

トライアルご希望の方は、エム・データ社までお問合せください。(http://mdata.tv/)

有園:今後がとても楽しみですね。きょうは、ありがとうございました。

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《対談者プロフィール》

株式会社エム・データ
取締役 ストラテジックプランニングディレクター 薄井司
第一興商マネージャー、VLe社長室長を経て、2009年エム・データに入社し、戦略企画業務に従事。企業との戦略連携と共にスマートTV事業やビッグデータ解析やテレビ基点の各種分析・予測等、テレビ情報を活用したマーケティングミックスモデル構築を手掛ける。

ライフログ総合研究所
所長 梅田仁
元アップルのHead of MarcomとしてMac、iPod、iTunes、iPhone、Apple Storeなどのブランディング、デジタルマーケティングを統括した後、2013年、ライフログ総合研究所を設立、ブランド×デジタル×セールスを統合したビジネス・コンサルテーションを行う。アップル以前はIBMでThinkPad、Aptivaのブランディング、マーケティング・コ ミュニケーションを統括。 著書:「売れない時代に売る新常識」(出版文化社、2011)

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