【コラム】AdWords の”Word”が教えてくれたこと

Google AdWords の “Word” が取れて Google Ads

本日、2018年7月24日から、AdWordsは「Google 広告」(英語名は「Google Ads」)という名前に変更になります。AdWordsという名前は2000年末のベータローンチから約18年間の歴史に終止符を打つ形となります。


AdWords to Google Ads


僕とAdWordsの関わりは2008年にAdWordsの広告営業としてGoogleに入社してから約10年間のお付き合いということになり、18年中10年を一緒に過ごしてきたということになります。長い間慣れ親しんできた名前が変わるのはとても感慨深いものがあります。もっと言えば、Google AdWordsから”Word”が取れてGoogle Adsになる、ということに一抹の寂しさを覚えると同時に今後の更なる進化を期待しています。


今日引退するAdWordsという名前に「ありがとう」の気持ちを込めて、僕とAdWordsの関わりを振り返りたいと思いますので、少しだけ昔話にお付き合いいただければ幸いです。


デスクトップに強いYahoo!、携帯電話に強いGoogle


僕がAdWordsと出会った2008年当時のGoogleの主な動きは下記のような状況でした。


  • 2008年4月 iGoogleカフェが六本木ヒルズに期間限定でオープン
  • 2008年8月 ストリートビュー日本版公開
  • 2008年9月 Google Chrome β版公開、Google創業10周年
  • 2008年10月 米国で世界初のアンドロイドデバイス「HTC Dream」発売開始

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    画像:HTC Dream (Wikimedia Commons)


    2008年の運用型広告の状況を振り返ると、デスクトップの世界は圧倒的なトラフィックを有するYahoo!JapanのOverture(当時は既にYahoo!に買収されている)が強い状況で、AdWordsは後塵を拝していました。その状況を覆すために携帯電話(ガラケー)の検索シェアを高めることに注力しており、docomoのi-modeの検索エンジンにGoogleが採用されたばかりという状況で、docomo、au はGoogle、Softbankはグループ傘下のOverture、という状況でした。


    下の動画はそんな背景もあって、2009年にGoogleが初めて行った携帯電話での検索を促すためのテレビCMです。ガラケーとGoogleの組み合わせが今見ると懐かしいですね。



    一方で、2008年のAdWordsは下記のような状況でした。


  • 1月: コンバージョンオプティマイザー正式提供開始
  • 1月: デモグラターゲティング開始
  • 3月: ランディングページの読み込み速度が品質スコアの要素に
  • 3月: Googleのラジオ広告、Audio AdsがUSでベータ提供開始
  • 4月: ウェブサイトオプティマイザー提供開始
  • 4月: Google TV Ads がUSでベータ提供開始
  • 6月: Ad Planner提供開始
  • 6月: Pay Per Action 提供終了
  • 8月: 品質スコアがオークションごとに計算開始
  • 8月: 米Yahoo!の検索結果でAdWordsを表示する契約が結ばれるも独禁法で取消
  • 9月: コンバージョントラッキングでGoogleのロゴを消せるオプションを開始
  • 10月: コンバージョンオプティマイザーが機能強化
  • 10月: ディスプレイアドビルダー提供開始
  • 10月: 品質スコアがアップデート。CTR以外の要素も考慮に
  • 12月: AdWords がiPhone, Android に提供開始

  • こんな状況の中、当時Googleで営業を統括されていたアタラ合同会社会長の佐藤康夫さんに運良く採用していただき、同じくアタラ合同会社代表の杉原剛さんが作成したトレーニングプログラムを受ける、という今振り返るととても恵まれた環境で運用型広告の世界に飛び込むことになりました。


    ガラケーの検索語句で掴んだ検索ユーザーの気持ち


    当時は広告代理店向けのサポートが営業の主体でしたが、唯一広告主と直接やりとをするチームに配属され、某ECモール系企業を担当することになりました。


    2008年当時は既に楽天市場やAmazon(当時はまだ本がメイン)は一般的に知られていたので、インターネットで物を買うということはある程度当たり前のものになっていましたが、「携帯では物は買わない」と言われていた時代でした。



    AdWordsの携帯電話向けキャンペーン設定の管理画面


    そんな中、携帯電話向けのキャンペーンで、お米カテゴリのキーワードを拡充するというプロジェクトに携わることになりました。Wikipediaなどからお米の品種などを調べて行くなかで、コシヒカリやあきたこまちなど有名な品種だけでなく、「ほほほの穂」など特徴的な名前の地方のブランド米などの存在を知り、キーワードとして登録していきました。


    ひと通りのお米のブランドを登録し終えた後で、コシヒカリなどの品種の交配親に用いられ、多数のイネ品種の祖先となっている「水稲農林1号」の存在を知り、これをキーワードとして登録すべきかどうかを同期と真剣に議論したことを覚えています。


    コシヒカリができるまで

    画像:水稲農林1号


    「水稲農林1号」という単語を検索する人は農業関係者が学術目的で検索している場合だからお米を買うという行為につながらないのではないか? いや、そういう人はお米に愛を持って接しているから検索連動型広告で様々な品種のお米が買えることを訴求したら買ってくれる可能性が高いのではないか? といった具合でひとつの検索ワードをめぐって真剣に検索ユーザーの意図に思いを巡らせたものです。


    結局「水稲農林1号」は予算の状況やCPAを考慮して、キーワードとしては登録しなかったように記憶していますが、検索語句の裏にあるユーザーの意図をしっかり汲んで、その意図に合った広告文を用意する、というある意味でマーケティングの基礎中の基礎を実践していたことになります。


    Google Content Networkで学んだユーザーのインテント


    Googleのディスプレイ広告は、今でこそ「Google Display Network」(以下GDN)ですが、2008年当時はまだ日本でDoubleClickの買収が完了していないということもあり、「Google Content Network」(以下GCN)と呼ばれていました。


    GDNとGCNの一番の大きな違いはcookieを利用したターゲティングが今ほど充実していなかったことです。今ではディスプレイ広告で当たり前になっているリターゲティング広告も当時はありませんでした。したがって、ディスプレイ広告の配信手法はコンテンツターゲティングが基本でした。


    Googleはウェブサイトのテキスト情報を解析し、単語の登場頻度などを基にページごとのテーマを表す「キーワード」を裏側で持ちます(いわゆるToken化)。AdWords側では、検索連動型広告と同様に「キーワード」を登録し、そのキーワードと関連するTokenを持つウェブサイトに広告が配信されるという仕組みでした。



    画像:Google ディスプレイ ネットワークとは?


    ディスプレイ広告においても裏側では「キーワード」を活用していたので、そういった観点からもAdWordsという名前はその製品の特徴を端的に表しているネーミングでした。


    Googleは検索連動型広告で追加したキーワードをそのままディスプレイ広告でも活用できるようにしたいと考えていたのか、最初は検索連動型広告とディスプレイ広告をキャンペーンで分けることができませんでした。従来版のAdWordsで「検索ネットワーク(ディスプレイネットワーク対応)」のキャンペーンがあるのはその名残です。


    ネットワークによってオークション状況も違うため、同一のキャンペーンでは最適化がしにくいため、結果的にネットワークを分けて運用することが一般的になりましたが、Google Adsではネットワーク別にキャンペーンタイプが分かれる形式に統一となりました。


    検索連動型広告はもちろんのこと、ディスプレイ広告においても、ユーザーのインテント(意図)に沿った広告が出ていると出ていないではクリック率・コンバージョン率に如実に差がでることもわかりました。ユーザーがウェブサイトを読んでいる時にどんなことを考えているのか=インテント(意図)を考えながら広告を出稿することを学びました。



    その後、検索連動型広告とGCNのキーワードひとつひとつを千本ノックのように精査してパフォーマンスを見ていくうちに、ユーザーの気持ちを読むことが上手くなっていくようになりました。キャリアの初期の頃に文字通りAdWordsの”Word”を通じてユーザーにとって受け入れられる広告とは何かを学ばせてもらいました。


    「AISAS」では括れないユーザーの振る舞い


    その後、2009年頃にコンバージョンしたユーザーの検索行動をパスで見ることができる「サーチファンネル」という機能が出てくることになりました。今もこの機能はAdWords管理画面の「検索アトリビューション」から見ることができます。


    当時は電通の提唱する消費者の購買行動プロセス「AISAS」が一般的に知られていたので、それに沿って検索連動型広告の説明を行う機会が多くありました。


    消費者の購買行動プロセス「AISAS」モデル


    ところが、この「サーチファンネル」が登場してからコンバージョンが発生したユーザーの検索行動を見ていると、「スニーカー」→「ナイキ エアマックス」のように、商品のカテゴリ名から具体的な商品名を検索するケースが多々見えてきました。まだ具体的な商品名を知らないユーザーが、検索行動の過程で個別のブランドを想起していくことがあることをデータの中から発見したわけです。


    一般的には検索は刈り取りで、認知を得るにはテレビなどのマス媒体を使う、という考え方が一般的だったのですが、検索連動型広告の中だけでも認知の効果があるのではないか、という例が見えてきました。いわゆる「AISAS」で一括りにできないユーザーの購買行動を目の当たりにし、フレームワークに頼りすぎず、データを基にユーザーひとりひとり向き合っていくことの重要性を学びました。


    この他にも、いわゆるビッグワードの広告1回のクリックでコンバージョンが発生する場合もあれば、何度も何度も同じキーワードの広告をクリックして2週間以上検索してコンバージョンが発生するケースなども見えてきて、購買プロセスの移行は人によって速度も違い、今でいうマイクロモーメント的な考え方を身につけたのもこの頃でした。


    ありがとう、AdWords!


    後に運用型広告の世界が大きくなっていく過程で、様々なバックグラウンドの方がこの世界に入ってきて一緒に仕事をしていくことになりますが、「キーワード」を通してユーザーの意図や振るまいを広告の運用を通じて体験したことあるかないかで、仕事の仕方に大きな違いが出るケースを多々見てきました。


    正直なことを言えば、日々数十万のキーワードを相手にし続けることは必ずしも楽しいことばかりではなく、大変なことも多々ありました。ただ、今にして思えば、キャリアの最初のうちにAdWordsを通してマーケティングに重要な何かを掴むことができたのは僕の中で大きな財産になっています。


    Unyoo.jpの読者の皆さまは、私と同じような経験をしてユーザーと向き合ってきた方が多いのではないかと思います。AdWordsの”Word”を通じて得た知見は今後様々な場所で活きてくることを信じていますし、もっと様々な分野で応用していくことが求められていくと思います。AdWordsの”Word”が教えてくれたことをしっかりと胸に刻み付けて、Google Adsを迎えたいと思います。


    18年間ありがとう、AdWords!

    著者

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