グーグルの水谷さんに聞く:合言葉は「D/D/A」DSA ページフィードを中心にこれからの検索連動型広告の運用「Search NEXT」を考える

検索連動型広告もデータフィードの時代に

AdWords のショッピング広告や、CRITEO をはじめとする動的リターゲティング広告の登場によって、データフィードを活用した広告の運用が当たり前になりました。この流れは運用型広告の本丸である検索連動型広告にも波及しており、黎明期から連綿と続いてきたキーワードによる広告配信がデータフィードに取って代わろうとしており、大きな変革の時を迎えています。


前回の対談では、これからの検索連動型広告の運用のスタンダードとなる可能性を秘めている、ページフィードにいち早く舵を切って検索連動型広告を運用されているリクルート様の事例をご紹介しましたが、今回の対談ではページフィードを活用したDSA (動的検索広告) を中心に、検索連動型広告の運用のこれからをグーグル合同会社シニア ソリューション エキスパートの水谷嘉仁さんに伺って参りました。


記事後編では、検索連動広告のお勧めの設定方法などにも触れていますので、ぜひご一読いただければ幸いです。


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話し手:
グーグル合同会社
シニアソリューションエキスパート 水谷嘉仁さん


聞き手: アタラ合同会社 杓谷 匠


※このインタビューは2017年4月末に行われました 。



杓谷:水谷さんの役職を教えてください。


水谷:シニア ソリューション エキスパートの水谷嘉仁と申します。グーグルにはプロダクトスペシャリストという役職で2008年に入社し、2017年の今年で9年目になります。これまで一貫してAdWords の検索連動型広告に関するプロダクト、ソリューションを担当してきました。




世界でも評価されている日本の広告運用


杓谷:米国の Inside AdWords ブログで、ページフィードを活用したDSA (動的検索広告)の発表記事に日本の事例が紹介されていましたね。


水谷:AdWords のプロダクト発表時の事例として米国のInside AdWords ブログに日本の広告主様が紹介されるのは、すごく珍しいことで、とても感慨深いですね。


ご紹介させていただいたリクルート様の事例では、これまでの「このキーワードを検索する人に対して広告を出したい」という考え方から「このページに興味がある人に広告を出したい」というように、誘導したいランディングページ URL を部分一致キーワードのように活用した、という視点の切り替えが非常に新しかったですね。


Unyoo.jp で前回記事にしていただいた、社内でGORIN と呼んでいる「検索連動型広告の基本推奨設定」(以下GORIN) の普及に伴い、この一年で日本は他国に比べて各AdWords プロダクトの導入が大いに進みました。DSA で広告配信対象の検索語句に対するカバレッジを広げながら、オーディエンスリストやスマート自動入札を活用して入札単価で適切に最適化できていることも、今回の事例採用にもつながっています。


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リンク: 前回記事


杓谷:そういった意味ではこの事例掲載は日本の運用が世界から認められていることの証左とも言えるかもしれませんね。DSA ページフィードの記事で日本の事例が紹介された後も立て続けに日本の事例が Inside AdWords に掲載されましたが、世界からも日本の運用は注目されているのでしょうか。


水谷:はい、注目されていますね。前述のGORIN で、プロダクトを適材適所に導入することが検索語句と広告の関連性を改善し、広告主様にとってもグーグル検索ユーザーにとっても有益であることがデータでも確認できているため、この日本の取り組みは高く評価されています。


新しいプロダクトが出るときに、昔は英語圏で優先的にローンチされることが多かったのですが、言語を問わないようなテストの場合は日本はかなり早い段階からベータやアルファに参加できるようになっています。


杓谷:日本の広告運用が、世界でも認められているというのはとても勇気づけられますね。


水谷:そうですね。検索連動型広告領域だけでなく、モバイル領域ではPWA (Progressive Web App) 、アトリビューション領域ではData-driven Attribution で日本の事例が紹介されました。




リンク: Progressive Web App Case Studies




ページフィードを使って能動的にページをインデックス


杓谷: 日本の事例が紹介されていたDSA ページフィードの機能について詳しく伺いたいと思いますが、その前にそもそもの DSA (動的検索広告) の機能について振り返りたいと思います。DSA (動的検索広告) の機能について教えてください。


水谷:DSA (動的検索広告)は、検索連動型広告のターゲティングと広告の作成を自動化する機能です。


ターゲティングに関しては、キーワードでなくランディングページとなるURL を指定することで、ページに関連する検索語句をAdWords のシステムが自動的に選んで広告を配信します。そのため、従来のようにランディングページから連想してキーワードを設定するといったマニュアル作業が不要になります。


また、広告に関しては、雛形となる広告の「説明文」は手動で作成しますが、「広告見出し」は検索語句に関連するランディングページをもとに動的に生成します。そのため、広告ランクの要素の一つである検索語句と広告の関連性を高めることが期待できます。


つまり、ユーザーを意識してSEOをきちんと構築したウェブサイトであれば、グーグルの検索アルゴリズムを活用した効率の良い広告運用を実現することが可能になるわけです。


動的検索広告について - AdWords ヘルプ
拡張動的検索広告は、すべての広告主様にご利用いただけます。今回新しくなったバージョンでは、表示 URL のほか、ウェブサイトのコンテン


杓谷:今回新たにURL をページフィードとして登録できるようになりましたが、そのメリットを教えてください。


水谷: 例えば、商品点数の多いEコマースサイトのように数十万ものページ数があるウェブサイトの場合、従来の動的広告ターゲットでは、商用性のないヘルプページや広告として入札するにはROI が合わないようなページを含んでしまう可能性がありました。今回のDSA ページフィードは、そういった点をうまくコントロールするために、明示的に指定したURL のページだけにDSA (動的検索広告) の機能を適用できるようになったことが大きな特徴です。


細かい技術的な点で言うなら、通常のDSA (動的検索広告) では、自然検索のインデックスページを活用します。そのためインデックスされているか否かは自然検索のインデックスの仕組みに依存しており、自分ではインデックスされているだろう思っているページも必ずしもインデックスされているとは限らないので、DSA (動的検索広告) の配信対象になっていない可能性があります。


ページフィードでURL を指定することで、AdWords のクローラーに能動的にインデックスさせることができます。これにより、ページフィードに登録したURL を確実にDSA (動的検索広告) の配信対象にできるようになりました。


もちろん、例外的なケースはあり、元々検索エンジンがインデックスしにくいFlash をふんだんに使ったウェブサイトや、テキスト情報がそもそも少ないページではページフィード でURL を指定してもうまく広告を配信できない場合は出てくるかもしれませんが、意図せずにインデックスされていなかった、といったケースの抜け漏れは ページフィードを使うことでカバーすることができます。


杓谷:Eコマースサイトの商品詳細ページURL をページフィードとして登録した場合、ショッピング広告のような感覚でテキスト広告を配信することができますね。ページフィードに設定するURL を選ぶ上で押さえておくべきポイントはありますか?


水谷:ページフィードの場合は、まさにどういったページを指定するかが重要になります。そもそもキーワードでターゲットしているランディングページのURL や、加えてGoogle アナリティクスやサーチコンソールをAdWords をリンクしてコンバージョンに寄与するURL や新規流入の多いURL を特定して、そのページをページフィードに登録するのが理想的ですね。ページフィードはあくまでも運用効率を改善させることが目的なので、どういうURL を登録するかは運用者の知恵が必要です。


Google アナリティクスで Search Console のデータにアクセスする - Search Console ヘルプ
Google アナリティクス プロパティと Search Console アカウント内のサイトとを関連付けると、Search Console のデータを Google アナリティクス レポートで確


杓谷:URL をページフィードとして登録すると自動的にシステムがページに関連する検索語句を選んでくれるということですが、ページのタイトルタグや H1 タグなどに使用されているテキスト情報が重視されるのでしょうか?


水谷:フィードに登録したURL のページのコンテンツ、タイトルタグなどのテキスト情報を見ています。キーワードプランナーには、URL を入力するとそのページに関連するキーワードのアイデアを抽出する機能がありますが、バックエンドは同じ仕組みを使っています。ある一定の検索ボリュームがある検索語句の中で、ページとの関連性が一定の閾値を越えたものだけが配信対象となります。


ページフィードを活用する上で声を大にして言いたいのが、SEO をきちんとやりましょうということです。Googe 検索ユーザーはページを回遊していき、十分検討した中で購入などのアクションを起こします。ペラ1枚のランディングページをSEM 用に作るのは、必ずしも正解とは限りません。


ページフィードを活用すると、Googe 検索ユーザーの利便性をきちんと考えてSEO 対策を行ったサイトであれば、その資産をうまく使って手軽に広告の運用ができます。そういった意味で、SEO とSEM の担当者はうまく連携を取っていくことが望ましいですね。


今後は、特にラストクリックを超えたアトリビューションであるDDA (データドリブン アトリビューション) の普及により、検索連動型広告だけでなくディスプレイ広告、YouTube など色々なチャンネルをまたいで広告配信の最適化が行われていくことが予想されますので、チャネル毎に別々のKPI を持つのではなく、チャネルをまたいだキャンペーン設計や顧客視点での効果測定が必要となります。



杓谷:先日、ランディングページや画像、広告文など、マーケティングに必要なアセットをAdWords に登録すると自動的に配信先や入札価格を調整してディスプレイ広告を配信できる、スマートディスプレイキャンペーンの発表もありましたが、検索連動型広告も同様の方向に向かおうとしていると言えるかもしれませんね。これまで以上に広告運用者がしっかりとデータを整えていく必要がありそうです。



水谷:まさにその通りだと思います。機械学習といえど、やはり人の知恵が必要なところは必ずあります。何も共通性がないランダムなデータをたくさん与えたところで良い結果は期待できません。基本的なキャンペーン設計や目標とするCPA・ROAS や予算配分などを見直し、インプットとなるデータをより良いものにする必要があります。


また、オンライン広告のデータにとどまらず、CRM や基幹システムと連携させて、顧客データや在庫データなどのファーストパーティデータをどのように広告に活用していくかも重要なテーマになるでしょう。


そのため、今後の広告運用者は、キーワードの入稿や入札の管理、レポーティングといった労働集約的な単純作業から、SQL の知識やBigQuery を駆使して予算や目標をどのように定義しなければいけないのかといった戦略的な思考が求められるようになると思います。




キーワードはこの先は不要?


杓谷:ショッピング広告や動的リマーケティングはじめ、データフィードを活用した広告配信が検索連動型広告の領域にも影響を与えていますが、今この業界に新しく入ってきた方に検索連動型広告の運用方法を教えるとしたら、DSA (動的検索広告)から勧めますか? それとも従来通りキーワードから勧めますか?



水谷:両方ですね。DSA (動的検索広告) の位置づけはあくまでキーワードの補完であって、リプレイスではありません。入り方としては新しい考え方から入ってもよいとは思うのですが、キーワードによる検索連動型広告の配信を経験しておく必要はあると思います。いわゆる、「温故知新」ですね。


DSA (動的検索広告) だけで広告運用すればいいのかというと必ずしもそうではなく、手動でコントロールすべきところと、システムに任せるところの適切な判断が重要です。プロダクトも日々改善していくので、この前までターゲットできていたものがターゲットされなくなるかもしれません。


ある特定の検索語句が検索されたときに、自分はこういう広告を、こういう見出しで、このランディングページに意図して誘導したいというものが明確にあるのであれば、それはキーワードで運用するべきです。


杓谷:キーワードとDSA (動的検索広告) はどのように併用して活用していくと良いでしょうか?


水谷:業種業態や予算の持ち方によってもかなり大きく変わってきますが、ブランドセンシティブな広告主様は、ブランドセーフティーの観点からも指名検索をキーワードとして運用しています。


また、完全一致のキーワードは自分で運用するけど、その代わり部分一致的なところはDSA (動的検索広告) に任せる、というように割り切っている広告主様もいらっしゃいますし、トラフィックだけでなくコンバージョンの半分以上がDSA (動的検索広告) 経由という広告主様も結構いらっしゃいます。


杓谷:ある特定の検索語句に対してDSA (動的検索広告)とキーワードの両方がターゲティングされている場合、検索語句がキーワードと完全一致している場合はキーワードが優先される、という仕組みを理解した上での運用ですね。


水谷:そうですね。DSA (動的検索広告) の登場により、キーワードでコントロールすべきところと、システムに任せるところの線引きを自分の運用の仕方でコントロールできようになったのですが、それにページフィードを追加されたことで、さらに柔軟性が増えました。


ページフィードでランディングページを指定してあげることが、部分一致のキーワードを追加する運用に取って代わる、そういった時代もそう遠くないかもしれません。


これまでは、キーワードのキャンペーンとDSA のキャンペーンを2つに分けるケースが多かったのですが、キーワードが登録されている広告グループの「自動ターゲット」タブから動的広告ターゲットを追加し、新しいマッチタイプのひとつのような形で運用している方もいらっしゃいます。


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合言葉は「D/D/A」



杓谷:ダイレクトレスポンス系の広告主様を中心に、スマート自動入札機能は運用上欠かせないものとなっているかと思いますが、DSA ページフィードとスマート自動入札の相性はいかがでしょうか? お勧めの使い方などがあったら教えてください。


水谷:一言で表すなら機械学習をフル活用した「D/D/A」ですね。一般的にDDA とは データードリブン アトリビューション (DDA) を意味しますが、スマート自動入札のベストプラクティスとしては「Data-driven Attribution+DSA+Audience」、略して「D/D/A」 を合言葉にお話させていただいています。


モバイルデバイスの普及が進み、「何かをしたい」という意図が生じたとき、すぐに行動を起こす瞬間であるMicro-Moments では、いきなりふと思って購入する人もいれば、検討していつまで経っても買わない人もいて、必ずしも購買ファネルが上から下へ落ちる時代ではなくなってきています。広告運用者が思い描いているユーザーの振る舞いは、ある瞬間はどこかには当てはまるけど、次の瞬間にはどこにも当てはまらないかもしれません。


リンク: Google と考える Micro-Moments(1): マーケターにとって見逃せない瞬間「Micro-Moments」とその活かし方


購買ファネルの様々な段階にいる人達とたくさんの接点を持って、いかにその時々のコンテキストに合わせて関連性の高い情報を届けられるかが重要です。それを実現するには人力ではさすがに限界があり、いかに機械学習を活用できるかが広告運用者として腕の見せ所となります。現時点で検索広告における機械学習の3大プロダクトは「Data-driven Attribution+DSA+Audience」です。これからの検索連動型広告の運用「Search NEXT」を考える上で、これらのプロダクトはかかせないですね。



ひとつずつ説明すると下記のようになります。


◆Data-driven Attribution


データードリブン アトリビューション (DDA) には、評価と最適化の2つのステージがあります。


まず、評価では広告主様ごとのコンバージョン データを活用して、広告主様固有のアトリビューション モデルを構築します。コンバージョンに至ったユーザーと至らなかったユーザーのコンバージョンに至るまでの経路を比較し、コンバージョンにつながりやすい経路を割り出します。


そして最適化では、データドリブン アトリビューションモデルを活用したスマート自動入札を活用することで、これまでラストクリックモデルで評価しにくかった、購買ファネルで比較的上部にいるユーザーに対しても、コンバージョンへの貢献度に応じて入札単価を最適化してアプローチできるようになります。



◆DSA


これまでご紹介してきたことと繰り返しになりますが、DSA (動的検索広告)はどの検索語句に広告配信するかをグーグルの機械学習の技術を使って関連性を判断しているため、Micro-Moments を捉えて広告を配信できることがポイントです。DSA (動的検索広告) のカバレッジ範囲は購買ファネルの一番下以外にも広く持っていますので、コンバージョンをアシストする検索語句にも自動的に広告を配信することができます。


◆Audience


ここにさらに、Audience (以下オーディエンス)という切り口が入ってきます。デモグラフィック情報や類似ユーザー、GMN 2017でも発表されていた「購買意向の強いユーザー層」などのグーグルが保有しているデータや、ユーザーリストやカスタマーマッチなどの広告主が保有しているオーディエンスデータがこれにあたります。



◆Data-driven Attribution + DSA + Audience = D/D/A

つまりは、従来のラストクリックに代表されるルールベースのアトリビューションモデルで見えている限定的な世界を



機械学習を活用したDDAによって視野を広げ、



機械学習を活用したDSA とAudience で “何を”だけでなく”誰の”を考慮して Micro-Moments を捉える。



これにより、たとえ同じ検索語句でも、このオーディエンスのタイプだからコンバージョンしやすい、または、しにくい、といったことを考慮し、オークション単位で入札価格を調整することができます。これが「Data-driven Attribution + DSA + Audience」略して「D/D/A」のコンセプトです。


また、IF 関数を活用して特定のオーディエンスセグメントに対して広告の訴求ポイントを最適化することも可能です。


IF 関数について - AdWords ヘルプ
IF 関数を使用して、条件が満たされた場合にテキスト広告内に特定のメッセージを挿入し、それ以外の場合にデフォルトのテキストを挿入すること


杓谷:お話を伺っていると「D/D/A」はスマートディスプレイキャンペーンの検索連動型広告版、とも言えそうですね。


コンセプトは近いですね。グーグルとしても、機械学習を代表とした「自動化」は重要なテーマの一つです。


機械学習に正しいインプットを与えるためにも、BigQuery などのグーグルのクラウドプラットフォームなどを利用してCRM データなどを整理していく必要があるでしょう。


また、自動化が進むにつれてフィードマネジメントの重要性も高まると思います。広告運用者としても、SQL を駆使してデータを分析し、何をどのように効率化を図るのかなど、戦略的な広告運用にフィードを役立てていただければより良いですね。


杓谷:自動化が進むことで運用者の必須スキルも変わってきそうですね。今後の進化がますます楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました!




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