Facebookの開発者カンファレンス「F8」の発表内容まとめ【2017年版】

● Facebook ログインと Account Kit

2016年の F8 で発表された、アプリでログインする際に電話番号かメールアドレスを入力するだけでエントリーが完了する Account Kit を中心にログイン機能が強化されました。引き続きエコシステムの開発には注力しています。





Account Kit では上図のような UI のカスタマイズや SMS を使った認証機能の追加、アプリだけでなく Web SDK でも提供が開始されるなど大幅なアップデートが入りました。Facebook ログインのボタンもユーザーの写真と名前をレンダリングしてパーソナライズできる機能が実装され、Pinterest では実装後サインイン率が 37% 増加したとのことです。





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● コネクティビティ

2016年の F8 で発足が発表されたコネクティビティ・ラボに「未だ通信環境がない人々に通信環境を提供すること」と、「既に通信環境がある人々に対してもより大きいデータ通信容量と通信速度を提供する」という新たなマイルストーンを設定したことを発表しました。2016年の発表時はコンセプト段階だったものの、1年の間に着々と研究・開発が進められていたようです。


※コネクティビティ・ラボとは:「未だインターネットにつながっていない人々や、十分なインターネット環境が行き届いてない人々に、より良いインターネット体験を提供できるよう、様々な新技術を研究・開発する」というフィロソフィーのもと、2016年の F8 で発表されたプロジェクト。


ワイアレスデータの送信においても新記録をマークし、即席インフラシステムである「Tether-tenna」も発表しました。Tether-tenna は、光ファイバーと電力を含んだワイヤーにつながれた小さいヘリコプターを用いて緊急時に電力を配備することで通信環境を提供するもので、災害時など急を要する事態で活躍するのではないかと思います。





Facebook は2014年の F8 で “Move fast with stable infra” というスローガンを掲げ、災害時に素早く安否確認を行うツールなどもその後ローンチしていますので、今後も「あれば楽しい」だけではなく「ないと不便」なプラットフォームとして開発が進められていくでしょう。



● 人工知能(AI)

2016年の F8 では高品質な翻訳、コンテキストで画像の内容を把握/識別し画像を検索する機能、リアルタイムでの動画識別といった機能の実現に向けて研究を進めていると説明していましたが、今回はモバイル上でAIアルゴリズムを構築し、実行することができるオープンソースのフレームワーク「Caffe2」を発表しました。アマゾン、インテル、マイクロソフトをはじめとした企業と共にパートナーシップを組み進めているとのことです。


特にカメラ機能については先述したカメラエフェクトプラットフォーム然り AI の搭載が積極的に進められており、AI とコンピュータの視覚アルゴリズムをモバイル上で実行することが可能になったため、カメラはユーザーの周囲、人や場所、物などを認識することができるようになっています。





専用ページ:

Caffe 2
A New Lightweight, Modular, and Scalable Deep Learning Framework




Facebook は Oculus Rift や Gear VR、Facebookスペースなど、モバイルやPCのハードウェア、ソフトウェア、コンテンツと幅広く VR の分野に投資していますが、高画質の VR 動画が制作可能な「Surround360カメラ」の最新のデザインが導入されました。





新しいカメラ技術では従来のような固定された視野だけでなく動画シーン内で動き回り、違う角度からコンテンツを体験することができるようで、将来的には動画も一つの空間として捉えるようになるかもしれません。



● 拡張現実(AR)

Oculus チーフサイエンティストのマイケル・エイブラッシュ氏が講演の中で「完全な AR とは、光、快適さ、電力効率性を兼ね備え、場所を問わず使用でき、視野と聴覚を向上させるものだ」とし、VRとARの両方を兼ねそなえるバーチャルコンピューティングの台頭についても述べました。





バーチャルコンピューティングがスマートフォンのように生活の一部として使用されるようになるには、「現実世界にオーバーレイされた仮想イメージを表示できる、透明なメガネのようなシースルーの拡張現実感が必要」という思想のもと今後10年間にわたって投資を続け、人々の仕事や遊び、交流関係に革命を起こす可能性を探っていくとのことです。



● ビルディング8

ビルディング8は2016年4月に元DARPA(アメリカ国防高等研究計画局)局長で、2012年から Google で先進技術プロジェクトの責任者を務めていたレジーナ・デュガン氏を責任者に任命したことで米メディア中心に話題に上がったものの、研究内容については謎が多く、これまで発表されたことはありませんでしたが、今回の F8 でついにレジーナ・デュガン氏から直接チームの全貌が語られました。


まずビルディング8とは「Facebook のミッションを進化させることを目的とし、消費者向けのソーシャルファーストな新製品を創出することに重点を置いた Facebook の製品開発・研究チーム」だと語り、2つの技術プロジェクトを発表しました。


1つは脳からの指令で100語/分(通常のスマートフォンに入力する5倍の速さ)の入力が可能なサイレント音声システムを開発するというもので、着用可能なセンサーによって提供することを目標として掲げています。


2つ目は人々が肌から直接音声を感知できるプロジェクトで、肌を通して言語を提供するために必要なハードウェアとソフトウェアの開発が進められています。


一見この2つは現在 Facebook が持つプロダクトとは遠いものですが、全ては “to make the world more open and connected” というミッションを達成する上で必要なテクノロジーなのではないかと思います。


2017年現在でも世界の人口の約半分はインターネットにアクセスできていないため、まずは環境を整えるべくコネクティビティ・ラボや Aquila(インターネット環境の無い地域にインターネット環境を提供することを目的に作られた太陽発電搭載のドローン)の開発が進められていますが、環境を整えただけではそれまでタイピングと無縁だった人々を “connect” することはできませんので、その問題をクリアにするテクノロジーの実現をビルディング8は目指しているのではないでしょうか。




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2017年の F8 は広告プロダクトのアップデートがほとんど無く、テクノロジー開発に関する内容が例年より多かった印象(Google I/O に近いイメージ)でした。一方で、近い将来にテクノロジーの進化とともにユーザー体験が劇的に変化する未来を垣間見れたことで、広告プロダクトもおそらく今とはまったく違ったかたちで進化していくのではないか、一人の広告運用者として、そんな可能性を感じたカンファレンスでした。


今やオンライン広告の覇者 Google と肩を並べる存在として語られるようになった巨人の動向に、今後もしっかりと注目していきたいと思います。

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