Integral Ad Science Japanのバンさんに聞く:ビューアビリティの現状と課題

ここ最近、『どこに広告が表示されているのか?』『どのように広告が表示されているのか?』『広告は本当に見られているのか?』など、広告の質についての議論が盛んになっています。しかし、日本では、まだまだデジタルメディアの品質評価・広告検証の導入事例は少なく、どのように手を付けてよいのか分からないという話を耳にします。


そこで今回は、デジタルメディアの品質評価・広告検証事業のリーディングカンパニーである米インテグラル・アド・サイエンス社でClient Services Managerをされているバン・ジン(Bahng Jin)さんに、デジタルメディアの品質評価・広告検証の現状や事例など伺いました。


話し手:
Integral Ad Science Japan Client Services Manager バン・ジン(Bahng Jin)さん


聞き手:
アタラ合同会社 シニアアカウントマネージャー 和泉晴之



▪日本のビューアビリティの現状

和泉:今日は、よろしくお願いいたします。まず、Integral Ad Science Japan(IAS. 以下IAS)社の会社概要とバンさんの社内での役割についてお伺いできますか?





バン:IAS社は2009年にニューヨークで創業し、現在は世界12ヶ国、21都市にオフォスを構えており従業員数は約450超になります。日本オフィスは2015年4月に設立しました。提供サービス内容は、主にアドベリフィケーションの領域でブランドセーフティ(Brand Safety)、ビューアビリティ(Viewability)、実際にはないインプレッションやクリックが計上されてしまう問題である不正インプレッションの検出、そのデータの分析と、それに伴うオプティマイズの施策の提供を行っています。現在は、検証・分析 ・最適化 の三軸でサービスを提供しております。


私は前職で広告代理店に約9年間勤務しており、運用最適化だけではなく、アドテクノロジー関連の業務をしていたこともあり、さらに知識を深めたいと考え、昨年にIAS社へジョインしました。


和泉:ビューアビリティの話は、ここ数年の間で活発に議論されていますが、日本ではなかなか広まっていない中、2015年に御社がそれを強みとして日本市場に参入されましたよね。日本のビューアビリティの状況について、どのように見られていますか?


バン:日本の中でビューアビリティの議論が活発なのはグローバル展開されているクライアントが多いですね。一方、欧米ではブランドセーフティやビューアビリティについての関心が高い状況です。この状況については、弊社のベンチマーク結果にも端的に表れていますが、例えばビューアビリティで、実際に見てもらえるチャンスを得る広告がどれくらいあるのかは、2016年の第1四半期のデータを参考にすると、53.6%に留まっているんですね。



図1:グローバルのビューアビリティ、ブランドセーフティ、不正インプレッションベンチマーク。 2016年第1Q IAS社 集計


ビューアビリティへの関心が高い欧米でも広告が半数ほどしか見られていない状況になっていて、クライアントでもそれを危惧しています。尚且つ、ブランドリスクが安全とは言えないところに出ているインプレッションの割合が9.5%ほどあります。レポートで見れば小さい数字ですが、実際にそれが見つかったときのインパクトは大きく、ここ最近ではネットテレビ局でヘイトスピーチ系のチャンネルに広告が出てしまったことで騒ぎになったり、クライアントが直々に釈明を出したことがありました。


例えばアダルトサイトやヘイトスピーチが出ているところに広告が出ると、「スポンサーをしているんじゃないか」と捉えるケースが多く、企業側に直接クレームの電話をかけてくることもあります。あるナショナルクライアントからは、そういうクレームが経営層までいってしまい、「デジタル広告は危ないのではないか、全部やめよう」という話になり、安全に出せる方法はないかという相談を受けたことがあります。ブランドセーフティのリスクは、数字が少ないから無視しようとは決してならないですね。


和泉:ここまでのお話には、ビューアビリティの問題とブランドセーフティという2つの内容があったと思います。インプレッションに対しての質は、ブランド毀損させないような、いわゆるヘイトサイトなどの事実をきちんと伝えていないようなサイトに出ていないかというブランドセーフティという質について。もう一つが、ビューアビリティに代表される量の問題があると思います。量については、不正インプレッションなんかの話がよく出てきますよね。そちらについてはいかがでしょうか?



▪不正インプレッションは業界全体で正していくべき



バン:不正インプレッションについては実際のところ、先ほどのベンチマークの情報で言いますと、平均で7.1%くらいです。


和泉:全体の7%くらいと。


バン:ただ、もちろんプログラマティックの方が高く、いわゆるPMPだったり、純広枠ではそこまで高くはありません。問題は、この不正インプレッションの仕組みが一つのビジネスとして成り立ってしまっていることが挙げられます。ハッカーのような人達がボットを作成して、ボットネットを作ります。それを色んな形でネット上にばら撒いて、不正インプレッションを発生させてお金儲けをするということです。


また、不正インプレッションと共に厄介なものはクリックボットなどの存在です。クリックボットのクリックであってもレポートに含まれてしまうことがあり、高い効果があるように見えてしまいます。ただ、経験上から広告のクリック率が10%程度になることは少ないと思います。ましてや、ディスプレイ広告だと、クリック率が1%〜2%出ればクリック率が高という認識があると思うんです。クリックボットによるクリックを差し引いた場合のクリック率は今のものより低く、現状ではクリックの適切な評価が出来ない状況になっているということが、昨今のデータを見て思うところですね。


和泉:不正インプレッションやクリックを発生させるボットには、どんなものがありますか?


バン:そうですね。ボットカテゴリーにもさまざまなものがあり、ブラウザベースでインプレッションを発生させるものや、クラウドサービスに侵入してそこからトラフィックに誘導するもの、サーバーやデバイスに感染させたりするものがたくさんあります。そのカテゴリそれぞれで対策が必要になってくるので、昨今のウィルスとウィルス対策ソフトのいたちごっこのようなことが今でも起きています。


さらに厄介なことに、不正インプレッションはIPアドレスだけ分かれば防げるものではなく、3日くらい経つとIPが新しいものに上書きされてしまい、IPのブロッキングがまったく使いものにならなくなります。弊社の場合、リアルタイムで発生しているボットの情報をビッグデータで蓄積し、ボットのパターンを融合させて検出をしています。そこまでしないと防ぎようがないところがあります。代表的な例として挙げられるのが、この絵です。(※図2を参照)これはボットの動きです。斜め線を見てみると、45°きっかりなんですよ。人間はこういう動きをしません。そこまで分析して防がないと、ボットを全部防ぐのは難しいですね。代理店やクライアントだけでは太刀打ちができません。



図2:ブラウザ上のボットの行動パターンの一例


和泉:不正インプレッションやクリックをなくしていく為には、Googleなどに代表されるプラットフォーマーやメディア側も巻き込んでいかないと適正化されないですよね。IASでは、不正インプレッションを判定する技術や、どういう面に出ているか、視認性があるのかといった技術を持たれていて、それを代理店、クライアント、プラットフォーマーやメディアに提供し、インプレッションの最適化をして1インプレッションの価値を上げていき、インターネット広告がビジネスとして正しく回っていくことを提供されていると私は理解しています。技術的な面で競合はあるんですか?


バン:同じ領域では 、MOATですとか、Comscore、DoubleVerify、Momentumといった会社になります。ただ、ビューアビリティ、ブランドセーフティ、不正インプレッションを全て提供しているベンダー、しかもデマンドサイドからサプライサイドまでをカバーしているところはなかなかなく、そういう面では弊社のサービスはユニークな立場にあるのかなと思います。



▪品質評価・広告検証の事例



和泉:海外よりも日本は品質評価・広告検証が遅れているというか、まだまだ発展途上な面があると思うのですが、実際に導入されている具体例を教えていただけますか?


バン:ディスプレイ広告で弊社のソリューションについてよく問い合わせを受けることの一つとして、CPMがKPIであるキャンペーンの場合、「CPMが合っているので今のところ品質評価・広告検証を利用する必要はない」と判断されてしまうケースがあります。代理店の立場で考えると KPIが合っている、つまりクライアントのミッションはクリアしているというスタンスは理解できますが、クライアントが見たときに「半分見ていないではないか」という話になってしまい、改善策を出せないかという依頼を代理店から受けることが実際起きております。


先ほどのベンチマーク情報はグローバルの情報で、2015年の第4四半期のデータでは、日本のビューアビリティは平均して48%ほど、50%切っている状況です。悪いケースとしては全体のビューアビリティが30%前後しかない、つまり「グローバル平均には届かないとしても、日本平均よりも低いのではないか」という話になり、実は7割の広告を見ていない現状を打開してほしいとの要求を受けているケースがありました。ROIを追求していく中でダイレクトレスポンスもアトリビューション分析もそうですが、総合的な分析で見ていないインプレッションをベースに分析するのは、当然よい結果に繋がらないことはクライアントの方でも理解しており、「元々の質を担保しないまま最適化することは意味があるのか」という話になることはあります。


和泉:そういった議論のとき、代理店が別に間違った運用をしているとか、おかしなことをしているわけではなく、コントロール出来ない部分だと思います。とはいえ視認性があるかを判断しないといけない時、その判断基準が3秒でいいのか5秒でいいのかということは非常にセンシティブで、私も代理店さんと話をする中で4秒と5秒で何が違うのというような話がやっぱり出てくるんですよね。例えば3秒の判定では30%かもしれないけれど、4秒だと急に50%を超えるんじゃないか?という話になってきます。日本よりもビューアビリティの改善が進んでいるアメリカの広告業界では、どのように判断基準を考えているのですか?


バン:それについては、「最低ライン」と「最適ライン」を分けて考えないといけません。今MRC(Media Rating Council)が定めているディスプレイ広告のビューアビリティの基準は、広告が半分以上表示され、尚且つ1秒以上画面に留まっている状態を視認性がある状況と認めます。それはあくまでも「最低ライン」で、それ以下になるとそもそも人間に視認される機会はない、という基準です。現状、日本のインプレッションは半分も満たしていない状況なので、まずそこを満たしてからがスタートラインに立てると思います。一方、最適ラインは、各クライアントや業界ごとに異なっていまして、それぞれ分析しなければなりません。


和泉:業界によって違うということは、例えば自動車会社と消費財、単品化粧品通販など、いわゆるダイレクトレスポンスでも指標が変わるようなイメージですか?


バン:特にこのラインが最適と決められたものはなくて、どこが最適ラインなのかは業界やクライアント、環境によっても異なります。実際に広告をやってみて基準を導き出します。例えば728×90のバナーを出すクライアントと、160×600のバナーを出すクライアントがいらっしゃいますとします。


160×600の方が画面の50%以上に留まるのが難しく、視認性判定を受けにくい状況にありますが、728×90は100%画面に留まりやすいので、同じ業界だからといって同じ判定は難しい背景があります。やってみて数字を出してみないと分からないのですが、例えば下記のグラフは、各インプレッションによるコンバージョンリフトの状況で、あるクライアントの実際のデータから分析しているものです。これだと8回くらい繰り返しがあった方がよいと。一番最適なのは、このクライアントの場合、フリークエンシーは8回くらいで、実際の広告閲覧時間は50秒。もちろんこれは視認性を保っている状況下の中での8回50秒ということです。



グラフ1:In View IMPの接触回数とコンバージョンリフトの関係図



グラフ2:In View IMPの累積接触時間とコンバージョンリフトの関係図


和泉:バナー広告を50秒見ていることはあまりないような気がするのですが、累積で50秒ですか?


バン:累積です。


和泉:ある広告主さんが視認性やブランドセーフティを測りたいといったときは、どのようなバナーサイズで出稿しているかまでヒアリングというか、データを取得した上で分析しているのでしょうか。


バン:最初からそれを求めることはあまりないです。すでに決まっているメディアプランニングを視認性だけで変えようとすることはさすがにできないですから。ただ、そこから得られたデータからこういう傾向があるということは言えます。実際にクライアントから各バナーの大きさなどの情報をいただいている状況であれば、分析できます。


例えばあるクライアントのキャンペーンでPCとスマホで300×250、300×600、スマホ最適化されている320×50のバナーで出してみました。結果を見ると、PCは300×600の方が76.3%ですごく視認性が高い反面、一般的な300×250は49%と日本平均くらいしかありません。さらにPCで320×50だと、視認性はたった9%しかないという結果が得られました。スマホでは、320×50が70.7%と最も高く、300×250は29%程度しかないと異なる結果が出ていて、さらにそれが5秒ほど続いた、15秒ほど続いたというセグメントで分けてデータを提供することもできます。それを参考にして次のプランニングでビューアビリティを意識した運用をする場合は、それに活かせていただくことができます。


和泉:最初の段階から出稿のバナーサイズなどの情報を提供してもらって、バナーサイズごとにビューアビリティの分析をすることが理想だと思うのですが。最初の取り掛かりとして、現状はどれだけビューアビリティがあるかという話になった上で、ビューアビリティを少し意識をした運用をしていく。さらに、二段階目の最適化をするときにバナーサイズの情報までもらい、どのサイズが見られてコンバージョンまで繋がるかというような分析をしていき、先ほどの累積を含めたフリークエンシーやコンバージョンレートの話なども含めて運用オペレーションも最適化していく基準が一番いいかなというイメージですね。


バン:まず何から始めればいいかと質問をいただくと、最初に現状を把握しましょうと、ビューアビリティで何かをしようというのは置いておいて、素の状態にビューアビリティのソリューションを導入し、どれだけ見られているのか、リスクは大丈夫なのか、不正インプレッションはどれくらい紛れているのかを把握した上で、それに合った最適化手段を講じましょうと提案しています。



▪プラットフォーマーやメディア側でも対策は進んでいる



和泉:ここまでは、広告主や広告代理店の運用者側の視点だと思うのですが、プラットフォーマーやメディア側でのビューアビリティの状況についてはいかがでしょうか?当然、不正クリックやボットクリックと判断されるものは課金対象にしないなど日々努力をされていて、以前よりも格段に良くなっていると感じています。


バン:不正インプレッションの場合は、デマンドサイド側では防ぐ方法が2つあります。まず一つは、そのインプレッションが不正だと分かっていたら入札をしないという方法。ただ、ビッグデータの検証結果でもリアルタイムの検証結果でも少し難しいのが、よくDSPなどのレポートを見ていると、アノニマス(匿名のサイト)のようになっていてよく分からないものがあったりします。その場合は、色んな事情があって実際の表示先を入札の段階で表示しないケースがあり、その場合は判断ができないので、とりあえず入札に勝ったら応じます。そして、実際の配信先の情報を受け取ったときに、ブランドリスク上危険なのではないかとか、不正インプレッションではないかと認識されたら、広告を出さないことができるのが2つ目の方法です。


そこには問題もありまして、その場合だと入札には応じたので、普段だったらお金を払うことになりますが、今アメリカを中心として主流になっているのが、これくらい不正インプレッションがあって防いだ、だからこのインプレッションに関しては入札には応じたけど、お金は払えませんということが今は幅広く通用している方法です。もちろんこのシステムはサプライサイドとデマンドサイド双方の合意がないといけませんが、不正インプレッションの割合が先ほど申し上げた平均7.1%ほどあります。その中でそもそも入札に応じないものも削ぎ落としてしまうと、出たけれど払えないインプレッションはさらに少なくなります。そういう努力の一環と考えると、ビジネスに大打撃を与えるようなインプレッションではないと思いますし、それがきちんと担保されているメディアという印象を与えることができるので、クライアントからは安心して投資していただける環境は構築されるのではないかと思います。


和泉:なるほど。アメリカではそういった仕組みが構築されているけれど、日本ではまだ構築されつつあるという感じでしょうか。


バン:日本ではまだ事例はないですね。


和泉:不正インプレッションを含めてブランドセーフティなどの話になり、そもそも出稿をとり止めますとなったら、サプライサイド側もお金を失うというか売上が減ってしまいますよね。それだったらオークションキャンセルに応じた方が、最終的には利益になるという考え方がアメリカでは主流になっているのですか?


バン:そうですね。弊社のグローバルクライアントで日本でプログラマティック広告を展開しているクライアントの場合で、あるところの不正インプレッション率が平均よりも結構高い数字が出てしまったとします。それで次のプランニングからそのプログラマティックさんは外そうかという話が出る時もありますが、こちらから積極的に外してくださいとはさすがに言えません。弊社からはただ要求されたデータにフィルタリングをしたりする訳にはいきませんので、その上で判断していただくのは仕方ないかなと思います。



▪ダイレクトレスポンスでビューアビリティは不要?



和泉:運用型広告を出稿しているクライアントは、ダイレクトレスポンスが中心ですよね。ダイレクトレスポンスで成長してきた業界なので、ブランドセーフティが大切だといっても「どこに出ていても成果が上がっていたらいい」というクライアントや代理店もいますよね。それについては、いかがですか?


バン:2つの側面に対応する必要があると思っています。一つはブランドセーフティと不正インプレッションをダイレクトレスポンスでも考えなければならないと思っています。ブランドセーフティ(Brand Safety)の方は、先ほども申し上げた通り、リスクヘッジの側面があります。何名かのユーザーは不適切なサイトに出た広告をクリックして買ったとしても、ある一部のユーザーがその広告を見て「けしからん」と思い、クレームがあったりネットで共有したりすると、ブランドイメージにとってはリスクにしかならないので、クライアントのためにはそこも考えないといけないと思います。


不正インプレッションに関して日本の事例で最近よく見るのは、広告やクリックを報酬としてポイントを得るポイントサイトです。コツコツ努力して貯めるのは個人の自由だと思いますが、残念ながら個人がクリックボットを使って一生懸命ポイントを貯めるということもあります。それは個人の問題で終わるかもしれませんが、そういうサイトで発生したクリックは当然ながら人がクリックしたわけではないですし、成果にも繋がっていないので、弊社ではそれをボットと捉えます。ポイントサイトの不正インプレッション率は二桁後半になるほど、日本ではかなり高い率が出ています。CPC、CPAを考えたときに不正クリックが含まれていることで、本当はもっとよいCVRが悪く見えてしまう。ダイレクトレスポンス型の成果としても、運用者が運用で出した成果を適正なものにするという側面で考えなければいけないと思います。


もう一つは、そのコンバージョンが広告によって即発されたのか、その人が買う予定だったから買ったのか、という側面があります。例えば私は趣味でサバイバルゲームをやっています。新しい銃とかアクセサリーを買いたいときに情報サイトを探すわけですが、そこで広告が出ていたとしても自分としては最初から銃を買うつもりで探していたので、その広告のおかげで買ったとは思えない状況もあり得ます。漠然と考えていたけど、そこでたまたま広告を見たから買おうと思う人も存在するわけで、そういう分析の仕方も提供しています。



▪ビュースルーデータを深く分析



和泉:それはバナーのインプレッションを購買喚起と購入促進に分けられる機能があるということですか?


バン:そうです。弊社ではCausal Impactと呼んでいる商材なのですが、コーザルメジャーメント(因果関係分析)というものがありまして、インプレッションがコンバージョンに影響する解析の仕方でコーゼーションという考え方があります。


この分析のためには、前提としては膨大なインプレッションとコンバージョンの数が必要になるのですが、そのデータをもって細かなABテストを社内で実施しています。広告を見た上で買った人たち、広告を見なかったけど買った人たちなど、複数の標本グループをシステムの中で作って、ABテストの結果を経てデータを提供します。


和泉:それは非常に面白いですよね。アトリビューション分析をするときなどは、ビュースルーデータを含めて取得することが理想なのですが、さらにビュースルーデータを分類して、分析出来る点は非常に面白いですね。


ここまで分析が出来なくても、冒頭でお話されていた日本では48%しか視認率はないというお話は、単純に広告の約半分は見られていない状況なので、視認性のあるインプレッションが、例えばCVRが2倍になるんだったら、CPMやCPCを2倍積んでも、CPAは一緒だという話ですよね。


バン:そうですね。そういうことが分かるツールの方にお金を少し出したとしても、損にはならないと。極端な言い方をしてしまうと、どうせ無駄になる金だから何分の一か投資してちゃんと分かった方がよいのではないかと。



グラフ3:IMPのIn view / out of view によるCVRの差は歴然


和泉:視認性のないインプレッションに対して投資するよりも、視認性のあるインプレッションに最適な投資をすることでコンバージョンレートも上がる可能性があります。現状のCPMの倍出そうがCPCを倍出そうが、ある程度ペイする見込みがあるし、データとしては3倍あるということはそれなりに増すので、3倍になったCVRとCPM、CPCなどで割り戻していったら御社のツール代金も払えてしまうよということですよね。


バン:払えて余るものがありますね。正直そこまで高くはございません(笑)。


和泉:そこの計算がうまくできていないこともあったりして、やや誤解を受けているのかなというイメージがあります。とはいえ今までのお話だと、今後おそらく、私の個人的な思いも入っているのですが、ビューアビリティやそうしたデータは、結局取っていった方がよいと思っています。広告主にも還元する側面もありますし、サプライサイドのメディア側の価値も上げていくことが絶対に必要だと思っています。今メディアがお金にならないとか、ビジネスモデルが立たないという話になっているのは、パワーバランスがデマンドに寄りすぎていて、サプライサイドが弱ってしまっているなという面も議論として出てきますよね。だとすると、コンテンツを充実させようなどというときに、そのための取材や調査などのお金も出てこないので、またそれで意味のないインプレッションが増えたとか、質の高くないインプレッションが増えたとなっても、誰も得しない業界構造になっている気がします。



▪ビューアビリティのデータを使った運用



和泉:今後は、ビューアビリティのデータを持って運用していくことがすごく大事になっていると思います。私も運用型広告を10年以上やっていますが、そういったデータにはなかなか出会っていない状況です。実際に御社のデータをうまく利用しながらどういった運用ができるのか、具体的に教えていただけますか? 僕は言い方が悪いですが、データ自体は死体だと思っていて、それを分析官であったり運用者が検死をして検証し、そのデータが何を訴えかけてくるのかしっかり読み解くべきだというイメージをもっています。


バン:実際の指標を持って説明しますと、まず一つ運用者側にぜひ使ってほしい指標としては、vCPMがあります。Viewable CPMというもので、実際見られたインプレッション1000個に対して払ったお金という意味になります。普通のCPM計算のインプレッションをViewableインプレッションで差し替えていただければ求めることができるのですが、私が運用者だったときに、Viewableインプレッションの最適法を何も施していないところは大体3倍くらい差があったんですね。ということは、Viewableインプレッションが先ほどの48%に満たない、33%前後ほどしか満たないんですね。ただvCPMを求めることによって、きちんとユーザーに見られる機会を確保したインプレッションにどれくらいのお金を投資したかは分かりません。なので、よりvCPMが高い枠だったりとか、高い媒体、高いキャンペーンや広告グループに予算をスイッチする方が、運用側では一番簡単かつ最初のステップとして使える方法ではないかと思います。


弊社は主要なDSPと連携ができておりますので、DSPの管理画面上でビューアビリティがこれくらいより下のところには入札に応じない、不審なインプレッションがあったときには入札に応じないなど、そういうオプションを付けることができます。ブランドセーフティにおいても例えばヘイトスピーチのカテゴリには出したくないとか、管理画面上でできてしまうので、そうすると自動化になります。


和泉:各DSPさんの管理画面に設定するものが出てくるイメージですか?


バン:そうですね。弊社の場合オプションで出てきているので、選択してチェックを入れるだけで自動化が完了します。それは運用者の手助けになるかなと思っております。


和泉:すべてを運用者側でコントロールするのはほぼ不可能ですよね。


バン:vCPMをコントロールするために、配信先の媒体社のレポートを全部出してくれという依頼を運用者時代に受けたことがあるのですが、それを見たところでどうすると、どうコントロールする予定ですかというと、「対策はないけど見たい」といった話になるので、膨大なデータであるがゆえにシステム側に任せるところは任せるという施策は必然的に講じられると思います。


あと弊社がサンプルサポートとしてクライアントに提供するときに提供する指標の一つとして、あるコンテンツの閲覧時間と、そのコンテンツに出ていたときの広告の閲覧時間を比べて何パーセントだったのかという指標を出しています。例えばあるコンテンツを30秒くらい閲覧したとして、その広告の閲覧時間は2秒しかなかったとすると、視認性はとりあえず確保したものの、どれくらいユーザーに印象を与えるかは違ってくると思います。その結果を用いて、キャンペーン全体の平均を出して、その平均より高いところにとりあえず寄せてみるという施策を始めると、徐々に平均が高まってくると思いますので、それも運用の施策としては使える指標なのではないかと思います。


また、弊社で提供している指標に、Ad ClutterとAd Collisionというものがあります。この2つを用いて、「このコンテンツに出す」というよりは、価値があるものを見つけるというか、より価値が低い枠を見つけることができるんです。同じキャンペーンの広告が同じ枠に何個も出てしまうというのはよく見るあるあるだと思いますが、この広告重複掲載のことを弊社ではAd Collisionという表現を使っています。


実際にAd Collisionで悩んでいる国内のクライアントがあり、Ad Collisionレポートでデータを出してフリークエンシーキャップをかけることで、Ad Collision率を二桁以上下げることができた事例があります。それは見事運用に活かしてクライアントも納得していただけた例ですね。


それから広告多重掲載という言葉をよく使いますが、あるコンテンツに広告枠が散乱しまくっている状況をAd Clutterと言います。広告多重掲載は、あるコンテンツにおいてモニターに表示されている領域に広告が5つくらいあるとします。コンテンツを見るときに一緒に表示されて視認性が確保されたとしても、人間の脳が一度に認識できるものには限界があります。全てを心に留めておくことはできません。Ad Clutterが酷いサイトで確保したインプレッションは、低いサイトと比べると価値が低いわけです。Clutterの状況についてのレポートも出てきます。


和泉:それは運用にとっていいですね。



▪メディアの価値も上げていくことが出来る



バン:逆に媒体側としてもそういう情報をキャッチすることはできますので、メディア側からしてもあるページはAd Clutterされていなかったり、あるページはひどかったりするので、その2つのインプレッションの価値を同じように認識されるのはメディア側も損なんですね。Ad Clutterが低く、注目される確率が高い枠はもっと高い値で売るべきであって、Ad Clutterが多いところの場合は、それよりは適正価格と言いますか、セット販売など、メディア側の戦略に応じての話ですが、それぞれに適正は価値を付与して、メディア側もきちんと評価を受ける必要があると思います。


和泉:仰る通りですね。メディア側も利益率をどうやって上げているのかという話がよくありますよね。メディアの価値上げるために現状を把握し、どう対策していくか、広告主、代理店、メディアの業界全体に適切な利益が出る構造が大切だと思います。


バン:仰る通りで、ビューアビリティの話が出てくると、メディア側が難色を示すときが度々ありまして、ビューアビリティを提示することによって出稿が減るのではないかと危惧されるメディアもいらっしゃいます。その前に現状のメディア側のビューアビリティをきちんとメディア側が把握して、デマンド側のビューアビリティ対策をすることをおすすめします。対策を求める声がどんどん弱まることは今のところないですし、高まってくる方だと思います。何も対策していないまま要求に押しつぶされて自分たちの価値を低くしてしまう最悪のケースだけは避けてほしいなと思います。


和泉:今日のお話を通じて感じたことは、品質評価・広告検証やビューアビリティを日本でもしっかりと浸透させていかなければらないなと思いました。そういったことができてくると、現状を打破して明るい未来が見えるのかなと。


バン:少なくともこういうことを通じて、広告市場における透明性の担保には貢献できるのではないかと思っています。そういう面では積極的に日本市場にも関わっていきたいと思っていますし、実際にそれを求めるクライアント、代理店の声も大きいので、それに応じられるシステムやシステムの構築、日本オフィスの充実などをどんどん強化していく予定です。


和泉:正しくないデータに基いた最適化は、本当の意味での最適化にならないと思います。運用者が考え日々実行している最適化が真の最適化になるように、正しいデータを取得出来る環境になるのが望ましいと強く思いました。これから日本でもビューアビリティが広がればいいですね!


バン:おかげさまで色々な方面から声もかかり、国内の事業も拡大していく最中ですので、ぜひ貢献できればと思っております。


和泉:今日は、本当にありがとうございました!

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