海外のオンライン旅行業界の歴史をまとめたインフォグラフィック

加速するインバウンド熱

 
2015年の訪日客数は1970万人を記録し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに2000万人という当初の目標値に早くも肉薄した形となりました。


「2000万人は通過点」と安倍首相がコメントするなど、政府はさらなる訪日外国人客数の増加に向けて観光戦略の拡大を検討しており、いわゆるインバウンド(訪日外国人旅行)を増やすためのマーケティング施策に対する熱は高まり続けています。

参考リンク:2015年の訪日外国人、2000万人の政府目標に肉迫


旅行関連のサービスを扱う運用者は、訪日外国人客数を増やすために海外のプラットフォームへ広告を出稿する機会が増えているかと思います。海外のオンライン旅行業界の状況をおさえておくことは、運用者にとって今後ますます重要になるでしょう。




世界のデジタル広告のトップスペンダー

 
例えば、海外のオンライン旅行業界のビッグプレイヤーの一つに、Booking.com や Expedia などの Online Travel Agency (以下OTA)が挙げられます。OTAは主にホテル予約等のブッキングに対する手数料収入をビジネスモデルとし、「売上」として計上しますが、基本的に仕入れがほとんどない(パートナーへのフィー等を除く)ため粗利率が非常に高く、マーケティング予算を潤沢に捻出することが可能です(実際のホテル予約等の成約金額は「取り扱い高」として計上)。そのため、検索連動型広告をはじめとするパフォーマンス系のデジタル広告への出稿額は世界トップクラスとなっています。


実際、Booking.com を傘下に持つ Priceline group の2015年の決算によれば、全取り扱い高は555億ドル(約5.6兆円)、売上高は92.2億ドル(約9,300億円)で、粗利率が 93% という驚異的な数値を誇っており、グループ全体で粗利の約3分の1にあたる27.9億ドル(約2,800億円)をオンライン広告に費やしています。決算書にも最優先のコストとして検索連動型広告が挙げられていますので、この2,800億円のかなりの割合が AdWords などのプラットフォームに費やされています。


また、海外のOTA のホテル予約に対する手数料は20%前後と言われており、楽天トラベル、じゃらんなどの日本の OTA の手数料の10%前後とくらべて2倍ほど高くなっています。基本的に OTA は手数料収入の差がそのまま入札価格や戦術の幅に直接反映されていると言っても過言ではないので、日本の OTA が海外の OTA と入札でまともに戦っていくことは構造上非常に困難だということが、こういった数字からも見て取れます。


参考リンク:Annual Reports – The Priceline Group




黎明期からの歴史がわかるインフォグラフィック

 
では、航空券、ホテル、代理店、アクティビティなど、世界中にさまざまなプレイヤーがひしめくなかで、一部のビッグプレイヤー以外は生き残るためにどういう戦略をとっていけばいいのでしょうか。もちろん答えはプレイヤーの数だけあると思いますが、オンライン旅行業界の歴史を紐解いていくことでそのヒントを得られるかもしれません。

以下は、ホテルの自社サイトでの予約を促進するツールを提供している米Triptease が「The history of direct bookings」という題で公開したインフォグラフィックです。英語ではありますが、海外のオンライン旅行業界の歴史が黎明期からよくまとめられています。少し長いですが、前述の観点を踏まえてぜひ参考にしてみることをお勧めします。


The History of Direct Bookings




領域を住み分けて成長してきた

 
上記のインフォグラフィックから読み取れることは、海外のオンライン旅行業界は大きく分けて下記の4種類のプレーヤーがそれぞれの役割を侵すことなく、領域を住み分けて成長してきたということです。


  • Online Travel Agency (ホテル予約サイト。例: Booking.com, Expedia)
  • Meta Search (比較サイト。例: Trivago, Tripadvisor)
  • Hotels (ホテルチェーン。例: Marriott, Hilton)
  • Google (検索エンジン。)

  • これまでは、OTAが検索エンジンの成長とともに黎明期から成長期へ急速に拡大し、2010年頃からはOTAを横断する比較サイトの存在感が急速に増していく、という構図でした。




    お互いの領域への侵食が加速

    しかしながら、近年では更に変化が起きており、下図のようにそれぞれのプレーヤーがお互いの領域に進出し、部分的に競合するケースが見られるようになってきています。


    お互いの領域に進出


    Priceline Group はMeta Search が始めたホテル予約サービスに参加することを決めましたが、前述の決算書の中で下記のように述べている通り、彼ら自身にもこの結果がビジネスにプラスになるかマイナスになるのか現時点では見通すことができず、かなり混沌とした状況になっていることが窺われます。

    we do not yet know how this participation will affect our business.
    (ビジネスにどのような影響が出るかはまだわかっていない。)


    参考リンク:Annual Reports – The Priceline Group: p.5 ~ 6 “Competiton”




    ユーザーの動きが変化している

     
    背景には、ユーザーの動きの変化があります。インターネットの普及やモバイルの浸透によって個人の旅行における選択肢は前世紀と比べて飛躍的に増え、ニーズも多様化してきました。それと平行して、Google が Meta Search 領域やホテル予約領域に参入したり、今まで比較サイトの立ち位置を貫いてきた Meta Search がホテル予約領域に進出するなど、各プレイヤーの同時多発的な侵食活動も影響して、ユーザーの動きの変化が加速している状況にもあります。

    それは、過去に常識とされてきたマーケティング活動が斜陽化していたり、以前まではパフォーマンスが悪いとされていた手法やメディアが今では違った結果になるケースも十分考えられる、ということを意味します。中には、今まで試したことがなかった新しい手法も数多く含まれるでしょう。スモールテストを繰り返しながら、加速する旅行者の動きをキャッチアップしていくことをお勧めします!

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