ad:tech tokyo international 2016にみるアドテクノロジーの現在とこれから

2016年8月23日、ad:tech tokyo international 2016が上智大学で開催されました。

リンク:ad:tech tokyo international 2016 公式サイト

今年で第2回目となる本イベントは、オールイングリッシュのカンファレンスです。海外からのゲストスピーカーだけではなく、日本人のスピーカーが世界に向けて日本におけるデジタルマーケティングの取り組みを発信する場で、世界で活躍する日本人マーケターを発掘・育成する狙いもあるとのことです。

今回、アドテクノロジーに関するオールイングリッシュのイベントということで興味を持ち、初めて参加してきました。

“Globalization”、”Asia/Localization”、”Japan/Localization”の3つのテーマごとに一日を通して数多くのセッションがあったためすべてはご紹介出来ませんが、特に興味深かった以下3つのセッションをレポートいたします。

・The hottest Global ad-tech Trends
・Marketing Strategies for the Future
・Closing Keynote : Challenge to Digital Marketing

アドブロックは大きなトレンド

まず最初に”The hottest Global ad-tech Trends”をご紹介します。こちらはその名の通り、アドテクノロジーのグローバルトレンドについてのパネルディスカッションです。

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写真左からモデレーターを務めたAdRollのSam Kellyさん、AppLovinの坂本達夫さん、ヤフーの高田徹さん、trivagoのWrobel Thomasさん


セッション冒頭、モデレーターのSamさんから高田さんに対して、ヤフーがIAB(Interactive Advertising Bureau)に加入した理由について質問がありました。これに対して高田さんは、日本と米国のアドテクノロジーのギャップを埋めることが目的であると答えます。大体2~3年遅れでUSのアドテクノロジーが日本に輸入されてくる傾向があり、日本はアドテクノロジーの分野で孤立していると感じ、それを解消するためにIABに加盟したとのことです。

リンク:Yahoo! JAPAN、米国の「The IAB Technology Laboratory」に日本企業として初めて加盟

続いて話題はアドブロックに移ります。PageFair社とAdobe社が共同で行った調査によると、2015年の第二四半期におけるアドブロックソフトの利用ユーザー数は、グローバルで前年同期比41%増となっており、抑えておくべきトレンドの一つとして本セッションでも取り上げたのでしょう。

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Image source: 2015 Page Fair / Adobe Report – The Cost of Adblocking


アドブロックが広まった経緯として、Wrobelさんはパブリッシャーがすべてのコンテンツをマネタイズしようとした結果、ユーザー体験を損なうかたちで広告が掲載されるようになったことでアドブロックが定着したのではないかと指摘していました。アドブロックの問題を解決するためにはアドテクノロジーの進歩が不可欠であるだけでなく、中長期的にはユーザー、パブリッシャー、広告主の三者間でのエデュケーションが必要であるといいます。

高田さんは、IABの”LEAN”の原則に則るかたちで広告を出すことがアドブロック防止に繋がるといいます。”LEAN”は”Light”(軽く)、”Encrypted”(暗号化されており)、”AdChoices-supporting”(選択可能で)、”Non-invasive”(じゃまにならない)の頭文字を取ったもので、2015年10月15日(米国時間)にIABが提唱したものです。

リンク:How LEAN Can You Get? A Scale and a Score Will Tell You

坂本さんは、モバイルアプリの分野では有料版にアップグレードすることで広告表示をなくす手法でアプリデベロッパーはマネタイズ出来ているといいます。またユーザーにインセンティブ(報酬)を与える代わりにCM動画を見てもらう動画リワード広告もアドブロックの影響を低減することに貢献していると言います。

続いて話題はモバイル分野におけるトレンドへ。これに関して坂本さんは、トラッキング技術の進歩をあげていました。

テクノロジーの進歩によりアプリインストール後のデータ(ポストインストールデータ)もトラッキング出来るようになってきているので、CPIではなくインストール後のエンゲージメントを考慮することで、CPI重視からROAS重視のモデルへの転換を提言していました。

この後も動画広告やクロスデバイス、DMPをキーワードにセッションは進み、2017年に向けてフォーカスしていくポイントを各スピーカーが紹介し本セッションは終了しました。坂本さんは「動画広告」、高田さんは「インテグレーション」、Wrobelさんは「API」をキーワードとしてあげていました。

VRの可能性

最新テクノロジーから考えるマーケティング戦略をテーマにした”Marketing Strategies for the Future”も非常に興味深いセッションでした。

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写真左からモデレーターを務めた弊社COO有園雄一、LINEの田端信太郎さん、BBDOのTimothy Schepisさん、エイチ・アイ・エスの泊剛史さん


冒頭、AIやIoT、VR等の最新テクノロジーがマーケティングに与えるインパクトについてディスカッションが行われました。ここではエイチ・アイ・エスのロボットホテルが話題になりました。

リンク:変なホテル -ハウステンボス

ロボットの数は開業からさらに増え、そのかわりにスタッフは減っていると泊さんは言います。弊社有園から「社員のリストラが進んでいるのでは?」という質問がありましたが、それに対しては、ロボットでは代用出来ない業務に人員を配分することが可能となり、業務効率化を実現出来ていると答えていました。

また、エイチ・アイ・エスでは旅行先の風景をVRで体感できるサービスも一部店舗で提供しているとのことです。VR体験だけで満足してしまうユーザーもいるのではないかという問いに対しては、あくまで味見程度なのでその心配はないと説明していました。

将来的にはユーザーが宿泊先を選ぶ際にもVRを活用したいというお話も出ていました。Timothyさんは、Webページに掲載されている写真ではなくVRでリアルな室内をくまなく事前にチェック出来ることで、顧客体験の向上が図れるのではないかと言います。田端さんからは、インテリアの分野でもVRの技術を使ってVR上で家具を部屋に設置する体験を提供すると良いのではないかというご意見も出て、VRの話題は大いに盛り上がりました。

データが与えるインパクト

テクノロジーの進歩によってマーケティングの現場ですでに起こっている、または起こるであろう変化については、「データ」が話題となりました。Timothyさんは、ウェアラブルデバイスやIoTの浸透によりあらゆる場面でユーザーからデータを収集することで、よりパーソナライズされたマーケティングが可能になると言います。

泊さんは顧客データの数が増えたことで、マスコミュニケーションではなくデジタルマーケティングでよりパーソナルなコミュニケーションを顧客と出来るようになるのではと言います。また、多くのデータを活用することでより短いスパンで事業戦略を立てることが可能になったとのことです。

事業戦略を立てるスパンについては、田端さんもより短いスパンでみるようになったと言います。意思決定のスピードがあがったことについては音楽を例にあげ、コンダクターがいる「クラシックオーケストラ」ではなくメンバー間のインプロビゼーションを中心とする「ジャズバンド」になってきているという興味深い例えがあがるなど、ディスカッションが活発にされたセッションでした。

「トピカライズ」で変化に挑む

“Challenge to Digital Marketing”と題して、資生堂ジャパン株式会社マーケティング本部長の音部さん、ネットイヤーグループ代表石黒さんのセッションで本イベントはクロージングとなりました。

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写真左から資生堂ジャパンの音部大輔さん、ネットイヤーグループの石黒不二代さん


冒頭、資生堂ほどの有名企業がブランドマーケティングをする必要があるのかという石黒さんの問いに対して、音部さんは有名なブランドほど壊れやすく、常に変化していくことが必要だと説明していました。常に変化していくことの例として、以下の動画が紹介されました。

High School Girl? メーク女子高生のヒミツ (The Secret of High School Girls)


この動画の狙いは「トピカライズ」だと言います。これは”Topic”と”arise”を繋げた造語で、「話題を発生させる」という意味合いで使っているとのことです。広告主から見てもTVCMの影響力が落ちていること、スマホへのデバイスシフトを踏まえ、トピカライズを意識したブランドマーケティングの一環としてこの動画を作成したとのこと。消費者に広告を見るか選択させること、自分事化することの重要性も説明していました。

ブランド構築の方法も近年変わってきていると言います。これまでは”consumption to have something”、いわゆる「モノ消費」で製品を購入した時点で消費活動が終わっていましたが、現在は”consumption to do something”、「コト消費」で体験を消費することにシフトしているとのことです。

また、デジタルマーケティングの進歩によりブランディングの手段が多様化したことに加え、スマートフォンへのデバイスシフトにより消費者が手元にメディアを持つことが可能になったことでタッチポイントが増え、様々なデータを取得できるようになったことはチャレンジングだがポジティブに捉えるべきだと強調されていました。

世界で活躍する日本人マーケターの育成に繋がるか

第一回目の東京ミッドタウンから上智大学に会場を変えて行われたad:tech tokyo international 2016。アドテクノロジーの最新トレンドをオールイングリッシュの環境で聞けるのは非常に刺激となり、本イベントに参加して良かったと感じています。

一方で、本記事でご紹介したセッションは当てはまらないのですが、セッションによってはスピーカー間での英語でのコミュニケーションがうまくいっていなかったケースも見受けられました。あくまで推測ですが、英語の発音を良く聞かせようとして内容が伝わりにくくなってしまっている登壇者も中にはいらっしゃいました。発音も大事ですが、伝わらない英語はもはやコミュニケーションツールとしての役割を果たしません。

公式サイトのイベント概要には、「世界で活躍する日本人マーケターの発掘・育成にもつながるカンファレンス」と記載があります。あくまで英語はコミュニケーションツールのひとつでしかありませんが、情報を世界に向けて発信する、世界中の情報にアクセスするためには身につけておかなければならないものだと思います。「世界で活躍する日本人マーケターの発掘・育成」を掲げるad:tech tokyo international、今後の展開に益々期待したいと思います!

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