海外配信案件の失敗から学び直した広告運用の基本

ある広告主企業のシンガポールでの店舗集客を目的にした広告運用に携わっている。過去に何度か海外案件を経験していたが、ブランディング目的が中心で店舗集客を目的にした広告運用の経験はなかった。そんな中でも試行錯誤しながら、少しずつ成果を出すことが出来てきていた。しかし、さらに成果を伸ばすことは苦戦していた。


そんな中、広告主企業の担当者、一緒に広告運用に関わっている広告代理店の担当者と一緒にシンガポールへ出張する機会に恵まれた。実際にシンガポールの街を歩き、人の動きや広告を目にすると想像していたこととは異なることも多かった。しかし、それ以上に実感したことは、海外案件であっても広告運用の守るべき基本は同じだということだ。海外案件ということが先入観としてあったのか、すっかり基本的なことを忘れてしまっていた。


今回は、反省を踏まえながら広告運用の基本を振り返ってみたい。



■ツールデータの客観性を確認したのか?

日本ではない国に配信する場合、Google AdWordsのキーワードプランナー、ディスプレイキャンペーンプランナー、Facebookのオーディエンスインサイトなどのツールを使い、手探りでプランニングを考えて広告運用を進めていくことになる。その国に住んでいなければわからない感覚を調べながら反映させる努力はするのだが、どうしてもツールデータ頼みになってしまう。


実際、Google AdWordsのキーワードプランナー、ディスプレイキャンペーンプランナー、Facebookのオーディエンスインサイトなどのツールから出てくるデータを基盤に立てたプランニングと運用結果は大きくズレてしまうことが多かった。


下の画像は、過去にFacebook広告を配信したリーチとフリークエンシーの結果だ。試行錯誤して運用しているが、フリークエンシーは1ヶ月程度で高くなってしまう。


Facebook広告リーチ&フリークエンシー


ターゲットを絞り込み過ぎるとoCPM (最適化CPM)の最適化が働きにくくなる。しかし、ターゲットを広げると意欲の低いユーザーに配信され、獲得効率は悪くなってしまう。実際、ターゲットボリュームの調整には苦労している。


シンガポールへ行くと実感するのだが、国土は東京都の23区より少し大きいくらいで、総人口は約547万人ほどである。東京23区の人口が約920万人なので、シンガポールは東京23区の約60%ほど、とかなり規模が小さい。


Google AdWordsのキーワードプランナー、ディスプレイキャンペーンプランナー、Facebookのオーディエンスインサイトなどのツールから取得したデータはあくまで推測値だ。実際の人口から推測されるターゲット量と乖離している場合もある。ツールデータだけではなく、客観的な人口統計データなどと見比べながらプランニングをしていくことが大切だと実感した。



■プランニングの設計は正しいのか?

シンガポールには、中華系、マレー系、インド系など、さまざまなバックグラウンドをもった人々が生活している。公用語も英語、中国語、マレー語、タミール語が使われている。実際、シンガポールのフリーペーパーを何種類か見たが、同じ内容を英語と中国語などターゲットに合わせて併記しているものがあった。同じ性別、年齢層でもバックグラウンドの違いで接触しているメディアが違うこともあるようだった。


また、現地のマネージャーから、日本とは来店するまでの流れが大きく異なるということを伺った。ショッピングモールで気になれ店舗を見つければ、そのまま来店することも多い。また、気になることはメールで問い合わせるよりも、すぐに電話をして確認することが多いそうだ。日本での来店までの導線とは大きく異なり、とても驚いた。実際のプランニングは、価格帯が高めのサービスという点から、直接電話で問い合わせするようなことは少ないと考え、電話からの導線を考慮していなかった。思い込みでプランニングの設計をしていたことを、とても恥ずかしく思った。


このことを具体的な施策に落とし込むと、

・英語で出稿しているが、本当に英語だけでいいのか?
・Google AdWordsの電話番号表示オプションは必須ではないか?
・Google AdWordsの電話専用広告も実施した方がいいのではないか?

などが考えられる。


日本国内をターゲットにした配信の場合、商品知識などあれば過去の経験からプランニング設計をしても大きく外すことはないかもしれない。しかし、どんな場合でも、何となくプランニング設計するのではなく、根拠をもって設計をすべきだ。日々、ユーザーの行動パターンは変わっている可能性は十二分にある。常に最新の情報を得ながら適切なプランニング設計を心掛けたい。



■クリエイティブの訴求は正しいか?

シンガポールの広告を眺めていると、少し違和感を感じていた。よく広告を見ていると、写真や映像などビジュアルコミュニケーションはアメリカやヨーロッパをそのまま使っている。しかし、リテラルコミュニケーション(文字でのコミュニケーション)は、「50%値引き」「すぐに効果が出る」など直接的な表現が多かった。シンガポールの広告で感じていた広告の違和感は、このビジュアルコミュニケーションとリテラルコミュニケーションのズレだと気づいた。


日本国内で運用していると、シンガポールでの広告に接する機会は少ない。シンガポールの広告に接触するように心がけていたが、やはり情報が不足していた。シンガポールのイメージで、ビジュアルコミュニケーションに合わせた訴求になっていた。シンガポールには、中華系、マレー系、インド系など、さまざまなバックグラウンドをもった人々が生活している。バックグラウンドが異なるので、誤解が生じない訴求が大切だと気づいた。


日本国内をターゲットにした配信の場合、競合他社の広告を参考にしながら訴求を考えていく。しかし、競合他社が訴求しているから、同じような訴求をすればいいというものではない。なぜ、競合他社はこの訴求をしているのか?ユーザーに何を伝えたいのか?などを分析しなければならない。さらに、ユーザーにとって必要な情報を表示させているのか。広告表示オプションを適切に設定できているのか?など確認が重要だ。


広告運用で広告検証や新しい広告を考えることは、後回しになりがちだ。しかし、ユーザーが実際に触れる部分は広告である。どんなに素晴らしいアカウント構成であっても、広告がダメなら結果は伴わない。また、自動最適化の精度が上がったとしてもクリックや成果数が少なければ最適化はされにくい状況になる。広告運用で最も時間を使い考えなければならないのは、広告のブラッシュアップだと思う。



■まとめ

海外配信案件の広告運用に携わり、実際に現地に行ったことで、広告運用の基本の大切さを再度認識した。経験を積んでいくと、経験則で進めてしまうことも多い。しかし、明確な根拠なく運用することはとても危険であり、常に根拠をもった運用をしなければならない。また、経験を積んでいくと過去に経験のある業種の運用に偏ってしまうこともある。知っている情報が多ければ、成功する確率も高い。しかし、環境の変化で過去の知見が通用しなくなってしまうこともある。過去の経験だけに頼らず、初心に戻って広告運用に携わることは、とても大切だと痛感した。

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