来るべきAdWordsの機能追加の背景を解説〜鮮明になるモバイルファースト、ETA、デバイス別入札、CRM連携など【SMX Advanced 2016 Googleキーノートより】

検索エンジンマーケティングをテーマにした大規模イベント「SMX(Search Marketing eXpo)」の上級者向けカンファレンスである「SMX Advanced」が2016年6月22・23日の2日間にわたり、米国西海岸のシアトル市で開催されました。


リンク:SMX Advanced公式イベントページ


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会場はBell Harbor International Conference Center。ダウンタウン中心地に近い、プージェット湾が一望できるこの会場で、毎年熱いセッションが繰り広げられています。


このカンファレンスシリーズは2007年に創設され、SEO、検索連動型広告に関する最新情報を求めて世界中からSEM従事者が集まってきます。私は2008年から参加し続けており、今回で9度目。毎年の業界トレンドを読み取って日本に持ち帰ることを心がけています(まだスピーカーとして日本事情の発信は私自身できておらず、今後のチャレンジとなっています)。


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参加者は広告主、代理店、ツールベンダー、媒体社が偏りなく世界中から参加しています。ただセッションに耳を傾けるだけなく、セッションでの発言・質疑も活発ですし、参加者同士の貴重なネットワーキングの場でもある点が特徴的です。


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毎年人気のThe Mad Scientists of Paid Searchセッション。検索広告分野の超人たちが各自の技を繰り広げる。内容がマニアック過ぎていつも驚かされます(笑)


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Googleはここ数年、Think with Googleと銘打って各種広告ソリューションの教育に力を入れています。写真は最新のAdWordsのアトリビューション機能についての解説するセッションです。データドリブン・アトリビューション・モデルと自動入札(関連記事はこちら)の採用を強く推していました。


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SEOツール、エージェンシーサービス、広告プラットフォームソリューションなどが数十社展示されるExhibit Hallは活発な商談の場でもあります。




目玉はGoogleの広告品質責任者によるキーノート


2日目の朝、キーノートスピーカーにGoogleのSearch Ads Quality製品開発担当ディレクターであるSandeep Jain氏が登場しました。


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検索広告の品質を中心とした部分の製品・機能開発の責任を持ったエグゼクティブの方ですね。


SMXカンファレンスシリーズと母体を同じにしする専門メディアであるSearch Engine LandのGinny Marvin氏がJain氏にインタビューする形で行われた本キーノート。AdWordsの近い将来のロードマップや方向性についての旬な話題がたくさん取り上げられましたので、一つ一つ紹介したいと思います。関連記事である、「2016年5月版アドワーズ新機能発表と、その詳細解説」と合わせてご覧いただくと、流れが内容がつかみやすいかと思います。

本セッションの動画をご覧になりたい方はこちらまで。




広告アイコン色の変更はモバイルユーザーの注意持続時間の短縮が理由


今月6月に、AdWordsの広告アイコンが黄色から緑色に変更になりました(関連記事はこちら)。


この変更に関してJain氏は、「モバイルユーザーの注意持続時間がより短くなりつつある(shorter attention span)」ことを理解できつつあることが背景として挙げられるといいます。


Jain氏も、他のセッションスピーカーも、このshorter attention spanという言葉は多用していたように感じます。まさにGoogleが提唱するマイクロモーメントに通じる話です。マイクロモーメントとは、人が何かを知りたい、見つけたい、観たい、買いたいと思ったときに、反射的にスマートフォンなどモバイルデバイスに向かうその瞬間を言います。


その中で、Googleはページ内の情報をユーザーが消化しやすいようにしたかったとのことです。その結果、色のバリエーションを減らし、ページ内コンテンツの調和を見出すことにつながったのです。


テストの結果、広告ラベルが黄色から緑色に変わってもユーザーが混乱を示すことにならなかったそうです。検索結果に限らず、モバイル環境のページコンテンツにおいて色数やパターンを減らすことで、集客やコンバージョンに影響する可能性がある点を示唆した点は非常に興味深いものです。


Jain氏はモバイルユーザーのより短い注意持続時間に注意を払って入札戦略、クリエイティブ、ターゲティングを再考することを推奨していました。




デバイスごとの入札はモバイルユーザー、広告主の行動変化がフックに


Device Bidding(デバイスごとの入札)は他のセッションでも語られることが多く、その度に拍手が起きる状況でした。注目度は当然大きな変更です。この判断はモバイル上でのユーザー行動の変化が背景にあるとしています。


というのも、コンバージョンのほとんど、またはすべてをモバイル経由で獲得するビジネスが出てきたからということです。広告主はオンライン/オフラインでユーザーを獲得する上でより柔軟なコントロールを必要としています。ユーザー行動の変化もありますが、広告主がモバイルユーザーを攻略する努力にも変化が見られるそうで、そういった流れが今回の変更を促したようです。


また、上記にもありますが、Jain氏はオンライン/オフラインと両方について言及することが何度か見受けられました。これは昨今の店舗などでのコンバージョン測定を実現する機能拡張に、いかにGoogleが注力しているか、そして今後もしていくかを表していると言えるように思いました。




ETAはクリエイティブを書き直す場合のパフォーマンスが高い


すでにホワイトリストされているユーザーもいると言われているExpanded Text Ads(ETA-拡張テキスト広告)ですが、実際のロールアウトがどうなるかは依然わかっていません。これもモバイル環境の中で、ユーザーが検索結果画面をより早く見るようになった(”Users are scanning SERP more faster.”)ことが背景にあるようです。


Jain氏によると、広告主は広告文のコピーペーストではなく、クリエイティブ全体を書き直すことを推奨するとのことです。初期のテストではそのほうがよいパフォーマンスが出ているとのことです。


ロールアウトに関しては、「比較的長い期間」ETAが旧来のクリエイティブと並行して表示されることになりそうです。ある時点でETAしか新規受付はしなくなるようですが、その後も旧来のクリエイティブも表示される期間はありそうです。ロールアウトの時期は未定としながらも、2016年内にすべての広告主が使えるようになるのではとのことです。旧来の仕様の広告文を受け付けなくなるまでに、Googleから広告主には十分な通知がされるようなので、ご心配なく、とのことです。


「ETAの仕様に合わせて書くことはとても労力がかかることは十分理解しているつもりです」、とJain氏は言います。また、ETAの効果を最大限引き出すために、旧来のものとETAを比較テストするための十分な時間を広告主が取ることを勧めています。




カスタマーマッチアップローダーがロンチ


Googleは、6月初旬にSalesforce.comから自動的にメールアドレスデータをカスタマーマッチ用にインポートできるソリューションを発表しました。セッションでは、Liveramp、PMG、MerkleおよびNeustarなどのCRM/データプロバイダーをパートナーとして、カスタマーマッチアップローダーをロンチして利用可能になったと発表しました。


GoogleのカスタマーマッチやFacebookのカスタムオーディエンスはピンポイントなターゲティングができる上に、類似ユーザーへの拡張配信ができ、新規顧客の獲得にも寄与することからCRMとの連携強化は当然と言えます。Salesforce.comとオフラインコンバージョンデータでの連携も記憶に新しいところです(関連記事はこちら)。主要なCRMベンダーは各広告プラットフォームとの連携を進めることが重要ですね。一方で、広告主は、自社で活用しているCRMが広告プラットフォームとシステム連携された際に、データを適切にセグメント利用できるようなデータベース設計になっているかを確認することが必要かと思います。


また、Jain氏は、カスタマーマッチ、CRMデータの効果的な活用例としてRLSAとの併用を推奨していました。同じキャンペーンでカスタマーマッチ(既存顧客へのターゲティング)とRLSA(サイト訪問者へのターゲティング)を合わせることで、それらのオーディエンスで20%も多いクリックがあったとのことです。消費財系やエンターテイメント系業界の場合はさらにそれ以上で50%クリック増加があったとのことです。




検索向け類似ユーザーはテスト中


Jain氏は、GmailとYouTubeにおける類似ユーザーへのターゲティングはベータテスト段階を終えて本機能になったとアナウンスしました。類似ユーザーは、サイトにアクセスしたことがあるユーザーと興味/関心が共通しているユーザーに広告を表示できる、効果的な機能で、前述のカスタマーマッチの利用者が使える機能です。


一方で、検索向け類似ユーザーはテスト初期段階とのことです。これは検索行動で得られるシグナルを使って、既存ユーザーリストと共通の行動パターンがあるユーザーを特定するもので、YouTubeとGmailの類似ユーザーと同様、パターン認識技術が使われています。


また、検索向けユーザー属性ターゲティングもベータ段階ですが、Jain氏によると年齢、性別、世帯収入によるターゲティングを採用するベータ広告主が多く見られたと言います。


矢継ぎ早に利用可能になってきているこれらのターゲティング手法ですが、Jain氏によると、広告主からも要望が多かったこれらの機能を実装するのはGoogleとしては極めて自然なことであり、とりわけモバイル環境で非常に効果的であることがわかりつつあるとしています。




カンファレンスの全体的なトレンド〜PLAへのさらなる予算投下、オフラインコンバージョン


Jain氏のキーノート以外のセッションを含め、全体として気になった言及、情報や全体のトレンドについて、雑多ですが個人的には以下を挙げてみました。


  • 「Googleをはじめとするショッピング広告(PLA)は対象広告主予算の8割に近い将来到達してもおかしくない。」(Crealytics CEO)
  • 運用型広告とCRMのデータ連携が進みそう
  • オフラインコンバージョン/アトリビューション測定が推進しそう。リアル店舗が再度見直され重要に
  • 米国ではショッピングのマーケットプレイスが増殖しており、よりデータフィード活用が大事に
  • 多様化するAdWordsのターゲティング方法をいかに活かすか
  • 2017年にはインターネットのトラフィックの74%は動画(Brafton調べ)。TrueView for Shoppingなどの活用
  • AdWordsのアトリビューション機能(DDRモデル+自動入札は強力)をきっかけに、じわじわと増える実践者
  • 運用の一部自動化がこれまでにないほどハイライトされていた。人的リソースの限界か
  • 音声検索が無視できない数に(Microsoft CortanaはWindows10ロンチ以降60億回検索。今後も注力)
  • Google Home、Amazon Echoなど音声アシスタント端末を使ったショッピングの台頭
  • Botショッピングの台頭


例年よりも変化のスピードが5年前などと比べると大きいように思うので、今回のSMXのような場をうまく活用し、引き続き業界の流れをつかんでいこうと改めて思った次第です。
*来年も参加しますので、ご興味ある方は現地で情報交換しましょう!

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