運用型広告の定例会で大切にしている3つのこと

10年間、ひとりの運用型広告の運用者として、数え切れないくらいの定例会へ参加してきた。


もともと話すことが得意ではなかったので、運用型広告に携わり始めた頃は、定例会がとても苦手だった。逃げたい…と、何度思ったかわからない。


しかし、苦手だからといって、運用者が定例会に参加しない訳にはいかない。重い足取りで定例会へ向かい、作成したレポートを見ながら説明するが、担当者は黙ったままで無反応。帰り道は、疲労感だけが残っていた。


日々の運用で改善していくことに、やりがいを感じていたし、運用することは楽しかった。ただ、運用結果が良くても、悪くても、とにかく定例会は苦手だった。


今、振り返ってみると、単なる笑い話でしかない。しかし、当時の自分にとっては死活問題だった。


こんなことを思い出したのは、最近、いろいろな定例会にアドバイザーとして参加することが増え、昔の自分自身と同じような心境なんだろうな、と思う運用者に出会うことが増えたからだ。


どれだけ運用を頑張って結果を出しても、定例会の印象で、評価が変わってしまうこともある。運用型広告の運用者にとって、定例会が苦手であることはマイナスにしかならない。運用スキルと同じくらい、定例会を進めるスキルは大切だ。


当時の状況を振り返って、運用型広告の定例会で大切なことを考えていきたい。



■知識がない人にも理解できるような言葉で伝える

定例会に向けてのレポートは、時間をかけ、自分なりに運用から得られた知見を盛り込み書いていた。また、報告会の前日に、担当営業にレポートを共有し、内容の確認をするミーティングも実施していた。


しかし、定例会では、担当者は黙ったまま、無反応。沈黙が多い定例会になっていた。


そんな定例会を何度か繰り返し数ヶ月経過した時、担当者が異動になり、新しい担当者に変わった。その最初の定例会で、一通り説明が終わった後、新しい担当者から『話している内容が、全然わかりません。資料も難しいです。』と言われてしまった。


運用型広告のレポートは、運用型広告に携わったことがないと、わからない用語で埋め尽くされている。運用者が日々の会話の中で、何気なく使っている用語も、担当者にはピンときていない可能性が高い。たとえば「CPC」と一言で言っても、それが平均クリック単価を指すのか上限クリック単価を指すのか、配信モデルがCPCがCPMかで、会話の文脈はまったく変わってくる。混乱するのは当たり前だ。


運用型広告の運用者が広告主企業へ転職して担当者になった場合は別だが、担当者は運用型広告のプロではない。そんな当然なことに、気づいていなかった。


もちろん、専門用語を噛み砕いて書くと余計に意味がわらかない説明になる場合もある。その場合は、Google AdWordsやYahoo!プロモーション広告のヘルプのURLを記載したり、レポートに媒体資料に説明を加えるなど、付録をつけるようにした方がいい。口頭で説明するよりも、図や表など視覚イメージで伝えると、伝わりやすくなる。


実際、レポートの書き方を工夫しただけで、担当者は頷いてくれるようになり、質問も頂けるようになった。


特に注意していたことは、運用型広告の専門用語と思っていても、社内限定用語だったり、周囲だけ使っている特殊な用語の場合もある。レポートで使う用語は、Google AdWordsやYahoo!プロモーション広告の正式な名称を使い、誤解がないように心がけた。


また、運用型広告は、専門性が高く、簡単に説明することが難しい場合も多々ある。だからと言って、担当者に理解してもらわなくて良い理由にはならない。


時々、担当者の知識が増えることを嫌がる運用者がいる。担当者の知識が増えれば、いろいろと質問がくるので、大変になると思っているかもしれない。一時的に、コミュニケーションを取る時間が増えるかもしれない。しかし、担当者と建設的な議論ができるようになることの方が、長期的にはメリットが大きい。



■レポートを読み上げる時間ではない

話すことが得意ではなかったので、作ったレポートを台本に、書いていることを朗読する状態になっていた。


考えてみれば、レポートを読むだけなら、資料をメールに添付し送付するだけでよい。わざわざ、時間を調整し、会う必要はない。しかし、当時は、レポートの内容以外に話す情報をもっていなかった。営業のような気の利いた雑談もできない。ただ、その場に流れる話に合わせて頷くしかなかった。


ある日の定例会で、クライアントのある商品を買って食べてみたら、とても美味しかった、と何となく発言した。そうすると担当者が、『あの商品は売れ筋ではないんですが、1度買うとリピート率は高いんですよ。なので一定数は売れ続けるんです。この商品が売れたらいいんですけどね』と笑顔で話してくれた。


その商品は毎月10個前後売れる安定した商品だが、なかなか成果数は伸びない。運用としては、注力していなかった商品だった。しかし、リピート率は高ければ、目標獲得単価を上げて運用できるのでは?「1度買うとリピートしたくなる」など、広告文で訴求してもいいのでは?など、その時に思ったことを、緊張で、口の中がカラカラになりながら話した記憶がある。


レポートに書いていた今後の施策は、社内検討してメールで連絡します、と言われることが多かったが、会話の中で話した思いつきの施策は、すぐにやって下さいと、言われた。今考えれば、当然のことなのだが、その時は狐につままれた感じだった。


それ以来、定例会では運用結果を報告することだけが目的ではなく、どんな商品が売れているのか?どんな商品のリピート率が高いのか?この商品名キーワードからは、1回の購入点数が多いが、どんな人が買っているのか?など、日々の運用で管理画面からでは知ることができない内容を質問するようになった。すると、担当者から、さまざまな情報を得ることが出来るようになり、考えられる運用施策の幅が格段に広がった。


また、情報を頂くだけでは申し訳ないと思い、競合他社の新商品などを調べて報告する様にした。そうすると、担当者から『ありがとう』と感謝されるようになった。


担当者と心理的距離が近くなり、運用も進みやすく、施策の幅も出てきた。そんな、ことを重ねていくなかで、少しつづ定例会に行くことが苦痛ではなくなってきていた。


運用した結果をレポートで報告することは最低限のことであり、それ以上の情報を調べて報告する。担当者から、管理画面からでは知ることができない情報を引き出す。担当者と運用者がディスカッションしながら、3ヶ月先、6ヶ月先、1年先の運用イメージを共有することが、定例会の中心だと思う。



■運用型広告だけに閉じない

少しづつ定例会が苦痛でなくなり、苦手意識が薄れた頃、購入者に出しているメールについての相談を受けた。自分自身はメールマガジンを作った経験があるわけではなかったのでアドバイスするのは気が引けたが、担当者と心理的距離が近くなった証拠と受け止めて、営業担当と話を伺うことにした。


正直、詳細な内容は覚えていないが、開封率が落ちているというような相談だった気がする。当時、運用型広告以外は知らなかったので、正直に伝え、ただ話を聞いただけに終わった。しかし、気になっていろいろ調べ、担当者の解決の糸口になりそうなWEBサイトのURLをいくつかメールで送った。メールで送ったWEBサイトの情報が、役立ったのかはわからない。ただ、それ以降、いろんな相談を受けるようになった。


もちろん、代理店の運用型広告運用者としては、運用型広告以外は評価にならなかった。ただ、担当者からの相談を、一緒に考えて施策を実施した結果、売上が伸びることは楽しかった。そして、幸運にも伸びた売上の一部を、運用型広告のテスト予算をして頂くことができた。運用型広告からの成果でなくても、広告主企業の売上を伸ばすことで、運用型広告の予算を伸ばすことが出来た。もちろん、担当者との相性がよかっただけかもしれないし、予算を増やして頂けたのは、単なる偶然だったかもしれない。しかし、広告主企業の売上を上げることが、大切だと実感したことも事実だ。


この経験は、運用型広告だけではなく、いろいろな知識や経験を得るきっかけになり、運用型広告以外の知識を得ることの大切さが実感できた。もちろん、運用型広告のスキルや知識は常に磨くことを心がけたが、それと同じくらい運用型広告以外の知識を積極的に学ぶことを意識した。意識し、仕事に取り組み、定例会で運用型広告の以外の話をしたりしていると、依頼される仕事の幅は広くなった。


さらに、TVCM、雑誌、ラジオ、OOHなどオフラインの知識も得るべきだと考え、総合代理店のデジタル子会社に転職し、総合代理店の方と一緒に仕事をするのなかで、本当に貴重な経験や知識を得ることが出来た。当時の総合代理店は、運用型広告に弱く、とても頼りにされた。同時に、運用型広告だけに閉じないことで、マーケティング戦略のミーティングなどにも参加させてもらえるようになった。そこでは、自分なりの意見を拙くても、ダメだしされても、試行錯誤して発言するように心がけた。今、振り返っても、この時に発言して、全く異なる広告領域のプロの思考や知識を得たことは、今とても生きている。


当然、知識が増えると、定例会で話せる幅は格段に広がり、会話の中心になれるようになってきた。そして、実績を積んでいくと、話を聞いてもらえるようになり、定例会への苦手意識(今思えば、苦手というより苦痛に近かった)が、嘘のようになくなっていた。



■運用型広告の定例会で大切にしている3つのこと

これまでの経験から、運用型広告の定例会で大切にしていることをまとめてみると、以下の3つに集約される。


・知識がない人にも理解できるような言葉で伝える
・運用の報告ではなく、ディスカッションにする
・運用型広告だけに閉じない



この3つに共通するのは、相手に寄り添い、一生懸命に考えることだ。運用型広告は魔法の杖ではないから、効果の保証は誰もできないし、どんなに頑張っても結果が出ない時もある。しかし、必死に考え、相手に寄り添うことは出来る。そういう姿勢が、効果を出すためのヒントに繋がることもあるし、短期的な成果を超えた評価をして頂けることにも繋がる。運用型広告の運用者は、ユーザー、広告主、プラットフォーム、すべてに寄り添うことが大切だと思っている。

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