アカウントは自分が管理できるものでなければならない

常にアカウントの中身を把握・理解できる状態にしておきなさい



私が初めて運用型広告の運用に携わり始めた頃、先輩にいただいたアドバイスの中でも特に心に残っているものがあります。


アカウントは自分が管理できるものでなければならない。



権限の話ではなく、常にアカウントの中身を把握・理解できる状態にしておきなさいということです。



どんなに多くのキーワードを登録していても、どんなに複雑な入札調整ルールを設定していても、それが実際にどのような検索クエリを引き当てていて、どのような構造になっているか、きちんと把握できていないのなら、そのキーワード数や入札調整ルールに「やっている感」以上の意味はありません。


コンバージョンが獲得できているキーワードはどのキャンペーンのどの広告グループにあって、具体的にどのような検索クエリなのか。広告やランディングページはどのような訴求になっていて、どのようなテストを実施しているのか。スケジュールや配信地域など、設定内容はどうなっているか。運用者としてそのアカウントを運用する以上、常にアカウントの中身や状態が把握できる状況を作っておくことが何よりも重要です。



特に広告代理店でありがちですが、他の人が運用していたアカウントを引き継ぐ場合、アカウントには人それぞれのクセが出ていることも多いため、最初は中身を理解するのに時間が掛かることもあります。まずは最優先でアカウントの中身をよく確認し、理解することに努めましょう。


そして、一通りどのような構造になっているのか理解した上で、もし「運用しにくいな」と感じたら、再構築もためらわなくて良いと思います。


もちろん単純な慣れの問題もありますが、いつまでも運用しにくいと骨を折っている間に効率を悪化させてしまっては誰のためにもなりません。自分が物理的に割ける時間を最大限有効に活用するためにも、自分が運用しやすいアカウントに作り変えることも、選択肢の一つとして考えてみて下さい。

※Google AdWords(以下、Google)やYahoo!プロモーション広告(以下、Yahoo!)の場合、再構築にあたって品質スコアなどへの影響を懸念される方もいますが、アカウントの構成を変更しても、品質には影響しません。

Google: https://support.google.com/adwords/answer/156066

Yahoo!: https://help.marketing.yahoo.co.jp/ja/?p=1131




ウェブサイトの構造とアカウント構造



では、「運用しやすいアカウント」とはどのようなものなのでしょうか。


私は、人も商売も100あれば100通りある以上、その定義はアカウントそれぞれで異なるはずだと考えています。そのため、普遍性がある言い方をするとすれば、アカウントに100%正しい形というのは存在せず、ただ「効果を出しやすい型」と「自分が運用しやすい型」があるだけ、だと思います。効果を出しやすい型さえ押さえてあれば、あとは自分が運用しやすい型に寄せて良いはずです。


「効果を出しやすい型」というのは、プラットフォームの機能や特性をきちんと理解し、それをキャンペーンの目的に合わせてアカウントに落とし込めば自然と作られるものです。だからこそ、まずはプラットフォームの仕様を理解することが何よりも優先されます。


そして、その型がしっかり力を発揮できるよう、キャンペーンの目的や扱う商材そのものを理解することが重要です。特に広告のランディングページとなるウェブサイトの構造はそのままアカウントに落とし込めることも多いため、商材やコンテンツをよく読み、理解し、構造を把握する作業は、そのまま効果に直結します。


site_account

例:ウェブサイトをアカウント構造へ反映




便利機能とアカウント構造



「自分が運用しやすい型」は、名付けルールであったり、入札戦略であったりするかもしれません。媒体機能にも運用を効率的にするものはたくさんあるので、やはり媒体機能に詳しくなれば運用しやすくする工夫のひとつとなります。


たとえば重要なキャンペーンがどれか一目で分かるよう、キャンペーン名に記号や数字を付けておくというのは多くの人が実施されているかと思いますが、Google AdWordsのラベルや、Yahoo!プロモーション広告のウォッチリスト機能はあまり活用されていないことがあります。


label

ラベルの使用例



上記はGoogle AdWordsでラベルを利用する例ですが、この場合はラベル「猫」「犬」ごとの掲載結果を集計できるようになります。そのほかにも「キャンペーン配信期間」や「配信メニュー」でラベルを振るなど、活用例は色々と考えられます。


ちょっとした工夫次第で運用しやすさは大きく変わりますので、効果を伸ばすことと共に運用しやすさについても工夫ができると、長い目で見て良いアカウントとなるでしょう。




シンプル構造のすすめ



「自分が運用しやすい型」がどのようなものか分からない場合は、まずはごくシンプルな構造からスタートして、徐々に実績に合わせてカスタマイズしていけば良いのではないかと思います。


もちろん、アカウント構築に手を抜くことを推奨している訳ではありません。運用型広告は初期構築がその後の運用を左右すると言われるくらい、最初の設計が重要になります。しかし、どのような方針で運用するのかとそれを実現するための枠さえ作ってあれば、実際のアカウント構造は意外とシンプルで済むはずです。


以下は、私がアカウントを構築する際に気を付けていることです。アカウントを設計する際の参考になれば幸いです。



1)キャンペーン、広告グループを必要以上に増やし過ぎない

扱う商材によっては、キャンペーンや広告グループが数百個にまで及んでしまうこともあるでしょう。しかし、キャンペーン・広告グループの数があまりに多いと、それだけ中身を把握しにくいアカウントになってしまいます。


また単一商材の場合はキャンペーンを訴求軸で切り分けてみたり、デバイスで切り分けてみたりとキャンペーン・広告グループの作り方は個性が出る大きなポイントですが、迷ったときは「設定できる項目で切り分ける」という基本に立ち返ることをおすすめします。


広告掲載の期間が異なるのであればキャンペーンを分ける。広告のランディングページが異なるのであれば広告グループを分ける。


逆に、特に切り分ける必要がないものはまとめてしまって構いません。その方が検証データや自動入札機能を利用するためのデータがたまりやすく、運用を回しやすいというメリットもあります。


たとえ多商材系ECサイトであったとしても、データフィードを活用することでアカウント自体はシンプルにすることも可能です。自分が把握できる範囲に収められるよう、工夫しましょう。



2)名付けルールは最低限に

キャンペーン名、広告名などをどのような名称にするのかの名付けルールは重要ですが、あまり複雑なルールにしてしまうとそれに沿うこと自体が大変になってしまいますし、後から変えたくなった場合に手間が掛かってしまいます。


そのため、まずは最低限で良いと思います。なるべく、自分以外の誰が見ても一見して分かる程度の名付けにするのが良いでしょう。


campaign_name


左の例では、冒頭の英数字「A_」「B_」が何を意味するのか、「一般系」にはどのようなキーワードが含まれるのか、「期間限定」とはいつからいつを指すのかなどが分かりにくいです。これが好みであれば構いませんが、右のように分かりやすさを重視した方が運用しやすくなります。



3)入札調整は初心を忘れず

特に検索連動型広告で多く耳にしますが、入札調整は陣形に例えられることがあります(※)。例えば、主力のキーワードは高単価で入札し、それ以外は中~低単価と、マッチタイプなどと合わせて段階をつけて入札するというものです。


※参考:アナグラム様のブログ 最高のキーワードマッチ、絞り込み部分一致の徹底解説


この陣形のメタファーは非常に重要です。たとえば登録キーワードが多いアカウントの場合、良かれと思った細かな入札調整の結果、単価のバランスがぐちゃぐちゃに崩れてしまって、高単価で入札すべきキーワードにいつの間にか低単価で入札していて機会損失してしまっていたり、部分一致のキーワードに高単価で入札していて他のキャンペーンの検索クエリを引っ張ってきてしまっていたり、入札調整のミスは経験の長い運用者でも引き起こしやすいものです。(そして気付きにくいミスでもあります)


下記の例のように、「猫」単体部分一致キーワードのコストが大きいなとよく見てみたら、実際は他のキャンペーン・広告グループで引き当てたい検索クエリを引っ張ってきてしまっていた、というような例は本当によく見かけます。「猫用品」用の広告文で専用のランディングページへ遷移させた方が効率が良さそうなのに、非常にもったいないことです。

bid_miss


そのため、入札調整は最初から細かく実施しようとせず、まずは多少ざっくりでもきちんと陣形を作ることが重要だと思います。人力で細かな入札調整を実施する場合にも、上記のようなミスを引き起こしていないか注意が必要になります。


特に近年はAdWordsを中心に自動入札機能の進化が著しく、より効果を上げられるようアルゴリズムが自動的に入札を調整してくれますので、人間側は何よりも陣形を崩さないことが重要となるでしょう。



4)検証は欲張らない

運用型広告において、広告文やランディングページ、掲載面などのテスト・検証はほぼ必須で実施されていることと思います。


しかし、複数の検証を並行して実施しているがために検証していること自体を忘れ去られてしまっているものや、検証と検証がぶつかって訴求がちぐはぐになってしまっているものもよく目にします。また、そもそもユーザーの母数が少ないのに複数検証を回しても、いつまで経っても結果が分からないこともあります。


検証は重要ですが、最初からあれもこれもと欲張らず、自分が把握できる程度の数に抑えるか、複数検証をきちんと回すための工夫をしましょう。







これから春を迎え、初めてアカウントを構築する方や引き継ぎで新しいアカウントを担当する方もいらっしゃるかと思います。まずは焦りすぎず、力みすぎず、アカウントを把握することを大切にして下さい。


私もかつて施策の細かさや数を重視したために自分で状態を把握できなくなってしまったり、アカウント引き継ぎ後に運用しにくいなと思いながらも再構築を後回しにして無駄な工数を掛けてしまったりもしました。そのたびに、「アカウントは自分が管理できるものでなければならない」という言葉を思い出します。


運用型広告は、運用によって効果を何倍にも何十倍にもできる可能性を持っています。その歩幅は小さくとも、確実に歩けるようにしておきましょう。

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