イベントレポート:MarkeZine Day 2015 Autumn/「指標」から「顧客体験」へ

MarkeZine Day 2015 Autumn

MarkeZine Day 2015 Autumnに参加して来ましたので、その内容について皆さんに報告したいと思います。


株式会社翔泳社のマーケター向けの専門メディアMarkeZineが主催するカンファレンス 「MarkeZine Day 2015 Autumn」が10月14日に東京の目黒雅叙園で開催されました。2007年9月の第1回開催以来、東京、大阪、福岡、名古屋、広島などの都市で毎年5回ほど行われており、今回で39回目を迎えています。業界の有識者が集まり、今後注目されるであろうマーケティング手法やノウハウ、最新情報などについて白熱した議論が行われていました。


サイト:マーケター必見!業界のトレンドを一日で学べる MarkeZine Day 2015 Autumn


今回の MarkeZine Day 2015 Autumn では、オムニチャネル、コンテンツマーケティング、データ、ネイティブ広告、ビデオ、マーケティングオートメーション、メディア、モバイルという8つのテーマのセッションが用意され、電通、LINE、IBM や Marketo などのビッグプレイヤーからそれぞれ一流の登壇者が重厚な議論を展開しました。


本レポートでは、さまざまな話題が上がる中でも、最も熱く議論されていたように感じた「ネイティブ広告」「クリエイティブ」「動画広告」の3つのキーワードから、今回のイベントの要点をまとめてみたいと思います。



ネイティブ広告の登場が、バナーの死を予告する?

「『デジタル広告市場の最新潮流と現状分析動向調査』制作舞台裏と最新アップデート」というセッションでは、今後、コンテンツマーケティングにおいては「ネイティブ広告」が優位を占める可能性が高くなるだろう、という議題が上がっていました。


ところで、そもそも「ネイティブ広告」とは何でしょうか。最近になって、一定の定義は明示されるようになってきたようです。例えば、JIAAネイティブアド研究会のサイトではネイティブ広告を次のように定義しています。

「デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告を指す」。
(出典: JIAAネイティブアド研究会)



とはいえ、他にもインフィード広告、レコメンドウィジェット、タイアップ広告などという用語もあり、ネイティブ広告の領域の線引きにはまだいろいろ議論がありそうです。



バナーに対する「免疫」

以前に比べユーザーはより「賢く」なり、広告とそれ以外のコンテンツを区別できるようになって来ていると言われています。その結果、意識的にも無意識的にも広告がユーザーの視線に入らなくなってきており、同時に CTR も下がってきているようです。スマートフォン上でのバナー広告へのクリックの大半が実は誤クリックであり、多くのクリックが意図せず発生されているというデータもあります。このことはバナー広告のような従来型広告の効果が衰えているというひとつの兆候と言えるでしょう。


パネリストとして登壇した株式会社スケールアウトの取締役CMOの菅原健一氏は、「ユーザは従来のバナーに対する受容性が減ってきたため、コンテンツからユーザーにとっての違和感を取り除く必要があります。広告だと認識してもらいながら、いかにコンテンツのような内容として提示し、自然な文脈でユーザーの読みたい気分に頭に入ることがポイントです」と述べていました。また、菅原氏は、ネイティブ広告の測定性の難しさについての質問に対し「指標に捉われがちだと思いますが、コンバージョンは必ずしも目的ではない。お客さんになれる人を育てることが肝心である時代に入りつつある」とも回答しています。


ネイティブ広告の一例を上がるとしたら、LINEスタンプはそのひとつの典型かもしれません。宣伝であるとユーザーに認知してもらいながらも押し付けがましさを感じさせにくいため、ユーザーに自然と広告主ブランドの世界感を受容してもらえるような設計になっています。



高品質クリエイティブは広告の未来を支配する

さらに、スピーカーの株式会社電通ダイレクトフォースの小川貴史氏と古後淳氏が、「統合アトリビューションから『競合アトリビューション』へ」というセッションで、今後デジタル広告業界においてブランドに求められるのは「ハイクオリティのクリエイティブ」であるとし、そのような手法をすでに実施している会社の事例を挙げています。


ひとつめの事例はニューヨークを拠点とする Cinematique という世界初タッチ操作可能な動画プラットフォームを提供する会社の Stella McCartney Winter 2015 Collection という広告でした。


リンク: Winter 2015 Collection: Stella McCartney


Cinematiqueの動画アプリでは、ユーザは動画を見ながら気になる個所(例えば、登場人物が来ている服など)をタップ又はクリックすることができます。それらの箇所にあった商品などの情報は動画の視聴後に広告(購買サイトなどへのリンク)として表示されるので、そのリンクから適切にユーザを誘導させることができます。


ユーザの視聴体験を妨げず、かつ、ユーザの興味喚起から広告の表示までをシームレスに行うことで、ユーザのフラストレーションを避けつつ、自然に広告を表示しユーザを誘導させるという目的を達成することができる例と言えるでしょう。このようなプラットフォームで配信される広告は、そのインタラクティブ性と利便性で従来の広告手法より強く購買意欲を高めることもできるでしょうし、どのようなユーザーが、どのように自社商品へ興味を持ったのかなど、ユーザの行動パターンをより早い段階から捉える手段も提供してくれます(Cinematiqueは自社クライアントへ動画作成の他、カスタム解析データなども提供しています)。


他には、Interlude というニューヨーク発のインタラクティブ動画テクノロジーを提供するデジタルメディア会社が制作した化粧品会社MACの広告が事例として紹介されていました。


リンク: Videos | Interlude
(リンク先のMACの広告をクリック)


このMAC社の動画広告では、視聴者が動画の主人公の役割を担うことで仮想的に彼女のお化粧のプロセスを決めていきます。デートに出かけるのか女子会に出かけるのか、デートの場合はこれから会う相手が初対面なのかボーイフレンドなのか、或いはもっと端的にお化粧の度合いを強めにするのかソフトにするのかなど、ユーザーは動画のストーリーの各場面で主人公の行動を選択していきます。


このようなインタラクティブ性を動画に備えることで、たとえ広告動画であってもユーザーをより強く自分のブランドの世界にのめり込ませることができるようになるとのこと。マーケターが日々頭を絞って考えている広告の差別化という課題に、高品質なクリエイティブはひとつの回答を示していると言えるのではないでしょうか。


「このような動画はインタラクティブ性の高さからハイクオリティの広告のひとつであると言える。今後のブランドの取り組みにおいては、クリエイティブジャンプが最も重要になるはずだ。指標ばかりに捉われると、なぜ自社のブランドが存在しているか、どのような問題を解決しているのかなどのブランドにとってのコア要素が見失いやすい」と古後氏が述べていたのも印象的でした。



数ではなく深さ

今回のカンファレンスに参加して私が感じたことは、登壇者の共通の認識として、今後は数でなく顧客との接触の「深さ」がより重要になり、マーケターとしては従来の手法から顧客体験を中心としたアプローチに変えていく必要がある、ということでした。


もちろん、コンバージョンに至るまでの行動観測は今後も重要な要素ではあり続けるでしょう。しかし、ユーザーがますます膨大な情報に飲み込まれ圧倒されていく中で、ユーザの反応を一義的に観測するだけでは、ユーザーの心を捕まえることは困難なことに思われます。


当然のことながらユーザーはそれぞれの願望や課題を抱えたひとりの人間であり、彼ら・彼女らに対し如何に自社のブランドストーリーを展開し共感を得ていくのか、そういった本質的だけれど難しい課題に取り組んでいかなければならない時代が来たのかもしれないと、今回の MarkeZine Day への参加を通じて、改めて確信しました。


リンク: MarkeZine Day(マーケジンデイ)
 

著者

Related posts

*

Top