アメリカのiMedia Brand Summit 2015に参加して 〜 業界が抱える6つの課題、そして、迫真のガチバトルとは? 〜

約300名のマーケターが集結!

先日、カリフォルニア州コロナド(Coronado, CA)で開催されたアメリカの「iMedia Brand Summit 2015」に参加してきましたので、簡単に報告したいと思います。

今回の Brand Summit は、「Delighting Customers at Every Touchpoint」をメインテーマに掲げ、9月13日-16日に開催されました。会場は、コロナドの Loews Coronado Bay Resort というホテル。ちなみに、コロナドという街は、カリフォルニア州サンディエゴにほど近いリゾート地です。

9月13日から16日と書くと「4日間もやるの?」と長く感じるかもしれませんが、13日は「Arrival Day」となっていて、全米各地から参加者が集まってきてレジストレーション(参加登録)をおこなうための日。この日は、夜7時からレセプションパーティーがありますが、それ以外は特にプレゼンなどはなく、ゆっくりとしたタイムテーブルになっています。

そして、16日は「Departure Day」ということで、ホテルのチェックアウトを済ませて空港など帰路に着く日。

そのため、実質的には、9月14日と15日の2日間に渡ってキーノートスピーチや各社のプレゼンテーションがおこなわれることになります。

参加者数は、約300名。参加しているブランド(広告主)は、American Express、Disney、Google、IBM、Intel、JPMorgan Chase、Lenovo、LG Electronics、McDonald’s、Office Depot、Sony Music Entertainment、Virgin America など、60社ほどのブランドが参加していました。

もちろん、広告主以外に、パートナーと呼ばれる広告代理店やツールベンダーも参加しています。比率としては、ブランド側が4割、パートナー側が6割ぐらいでした。

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日本よりも年齢層が高い

今回参加して最初に感じたのは、参加者の年齢層が日本の Brand Summit よりも高いということでした。おそらく、50歳代のマーケターも数多く参加していました。

理由は、ブランド側から VP of Marketing や Director of Marketing など、それなりの役職の人が参加しているからだと思います。日本でおこなわれるデジタルマーケティングのイベントは30歳代〜40歳代が中心だと思うのですが、今回のアメリカの Brand Summit は、平均的にそれよりも10歳上の世代が集まっている印象でした。

これは私の勝手な解釈ですが、アメリカではそれだけデジタルマーケティングがブランド側に浸透しているんだろうと感じました。日本企業だと、デジタルマーケティングのことは若手に任せているというブランドが多いと感じているのですが、アメリカはその辺がかなり違うなぁと。

業界が抱える6つの課題

さて、すべてのキーノートやプレゼンテーションの内容を簡潔に要約するのは私の能力では難しいので、私の印象に残ったセッションを二つだけ紹介したいと思います。

まずは、「Six Questions You’d Better Have The Answers To If You Want to Make the Sale」というセッション。このセッションは、IAB(Interactive Advertising Bureau)の Learning & Development部門SVPである Michael Theodore 氏によってプレゼンがおこなわれました。

私がこのセッションを紹介したい理由は、この「Six Questions」として取り上げられた6つのポイントが、いまのアメリカのデジタルマーケティング業界が抱えている課題を的確に示していると思ったからです。

Michael Theodore 氏が取り上げた6つのポイントは以下になります。

1: Viewability
2: Ad Fraud
3: Ad blocking
4: Liquid Consumers
5: Online Video
6: Native Advertising

これら6つのポイントについてブランドからの質問が多くなっているらしく、広告代理店やツールベンダーはきちんと把握し回答できるようにすべきだ、とのことでした。

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やはり Viewability は大きなテーマ

まず最初に取り上げられたのは、やっぱりという感じですが、Viewability でした。

Michael Theodore 氏によると「Why should I pay more for Programmatic? It’s automated and it’s remnant.」「Why should I pay for 70% Viewability?」と多くのブランドが疑問を呈しているとのことです。そのため、この Viewability に対するソリューションについて学んで対応を考えることが必要になってきているとのことでした。

アメリカでは、近い将来、プログラマティック・バイイングの市場占有率がインターネット広告市場の8割を超えるのではないかという見込みがある一方で、このViewabilityという課題が予期せぬ壁になるのではないか?という懸念も一部あるとのことでした。

ところで、蛇足ですが、「歴史上、Viewabilityなんてことが問題になったメディアはインターネットだけだ」とMichael Theodore 氏は、ちょっと嘆いている感じでした。「テレビも新聞も雑誌も、本当に見ているかどうかなんて分からないのに、インターネットだけが、測定できるが故に、Viewabilityが問題になっている。オールドメディアが羨ましいよ」と。

2番目の Ad Fraud の問題は、Viewability とも絡む問題ですが、ボットによるインプレッションやクリックに対しても媒体社やツールベンダーが課金している問題です。今年になってよく聞く話ですね。

3番目の Ad blockingは、ブラウザなどで広告表示をできなくしてしまう問題です。広告ビジネスが行き詰まってしまうかも?と懸念される訳です。この問題は、6番目の Native Advertising とも関係していて、ブロックされてしまう既存の広告枠とは異なるフォーマットで Native Advertising として広告を掲載していこうという流れにつながっているようです。

4番目の Liquid Consumers は、直訳すると、「流動的な消費者」という感じです。
イメージとしては、一人の消費者が、PCからスマホ、そしてタブレットへ、あるいは、スマートテレビへ、ゲームデバイスへと、デバイスからデバイスへと流れるように横断していくこと。クロスデバイスで流れるように動くという感じでしょうか。

このような消費者を捕まえて適切なメッセージを適切なタイミングで届けるためには、クロスデバイスで管理できる識別子(IDのようなもの)が必要になりますが、理想と現実はまだまだ乖離があるという問題です。

5番目の Online Video については、テレビCMに取って代わる、あるいは、補完する認知効果を期待され続けているが、デジタルGRP(あるいは、オンラインGRP)の浸透など、引き続き課題も多い。その一方で、ミレニアル世代(Millennials)など若い世代に対しては効果的だという報告が増えてきているようです。

6番目の Native Advertising については、なかなか理解されない、あるいは、人によって解釈が異なるのが問題であるとのこと。Native とはコンセプトなので、固定の広告フォーマットが存在する訳ではなく、それぞれの媒体やプレースメントに応じて Native な状態は異なることになります。つまり、いろいろあり得る訳で、そこが分かりにくくなってしまう理由だと話していました。

以上の6つのポイントに対して、課題を把握し自分なりの意見を持っておくことが大事である、と IAB の Michael Theodore 氏はまとめていました。

ミレニアル世代に見られる New Economic Order とは?

さて、次に紹介したいのは15日におこなわれた「The 21st Century Brand」というセッションです。Joey Dumont 氏(Chief Growth Officer, eecosphere)がモデレーターを務め、他に4人のパネルが登壇していました。

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このセッションでは、「New Economic Order」という言葉が紹介されました。これは、ミレニアル世代(Millennials)を中心に見られる経済行動で、最近ますます拡大しているようです。

「New Economic Order」は、以下のように、古い価値観との対立する単語や概念で理解されているようです。

People <===> Mass Media
Small Business <===> Big Business
Personal Solutions <===> Transactional Approach
Full Experience <===> Rigid Policies
Uniqueness <===> Discounts

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「People <===> Mass Media」とは、最近の若い人たちは、テレビなどマスメディアで流れる情報よりもSNSなどでつながっている自分の身近な人々(People)からの情報を信頼する傾向が強いという話で、日本の調査結果でも最近よくあることです。いわゆるヤラセや過度の演出、偏向報道などによって、若い世代はテレビを信用できないもの、胡散臭いものだと思っているのではないか、と話していました。

マクドナルドは New Economic Order の対極?

その他の「Small Business <===> Big Business」以下の対立概念については、このセッションの中で取り上げられたマクドナルドの事例に沿って理解すると分かりやすいと思います。New Economic Order の対極にある事例としてマクドナルドは扱われていました。

マクドナルドは、歴史的に、テレビCMなどマスメディアを中心にコミュニケーションをおこなってきました。ただ、昨今、日本でも話題になったように、異物混入などの事実がSNSで取り上げられ、急速に売上を落としたのは記憶に新しいところです。素早く謝罪し事実関係を調査するなどのマクドナルドの対応が遅れたことが原因で、会社のバリュー(株価)も下がったのではないかという論調で株価チャートを示しながら話していました。

マクドナルドは世界中でチェーンを展開しています(Big Business)。既製品を大量に売りさばくスタイル(Transactional Approach)で、個々人のニーズに対してソリューションを提供できている(Personal Solutions )訳では必ずしもない。厳しい基準やポリシー(Rigid Policies)に則って商品や従業員を管理しつつ、低価格(Discounts)で商品を提供してきました。しかしながら、類似のファストフードを提供する競合他社も多く、独自性(Uniqueness)を打ち出しにくくなっていて、十分なブランド体験(Full Experience)を顧客に与えることができなくなっているのではないか?

つまり、マクドナルドは、ミレニアル世代からは遠いブランドになっているようです。

迫真のガチバトル

このようにして、New Economic Order を中心にパネルディスカッションが展開し質疑応答の時間になりました。しばらく和やかに質問と回答がおこなわれていたのですが、ある瞬間をきっかけにして、会場に緊迫した空気が流れました。

なぜなら、「I am Sr. Director, Field Marketing of McDonald’s」と言って年配の女性が質問を始めたからです。これには、モデレーターの Joey Dumont 氏の顔色も強張っていました。

マクドナルドのSr. Director は、「内情も知らないのに適当なことを言わないで」という感じで反論し、モデレーターの Joey Dumont 氏は、「客観的に話しているんだ。間違ってはないよね」と返していた。

緊張感はあったが、二人とも大人の対応で最後はマクドナルド側が「いろいろとあったけど、私たちもいままさに信用回復のために努力しているのよ(いまに見ていろ)」という感じで議論は終わった。

日本では、なかなか見られない迫真の議論、ガチバトルという感じで、非常に刺激的なセッションでした。

今回の Brand Summit は、この迫真の議論の場に立ち会うことができただけでも、日本から出張した意味があったと感じました。もちろん、それ以外のキーノートやプレゼンテーションも新しい発見や学びが多く、来年もぜひ参加したい充実したカンファレンスだったと思います。

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