Google Hotel Ads の刷新と、データフィードの重要性について

Google Hotel Ads の刷新

Google は 2015年9月22日(日本時間で9月23日)、宿泊施設向けに提供していた Hotel Ads の刷新を発表しました。

リンク:Inside AdWords: Google Hotel Ads makes it easier for more hotels to participate

Hotel Ads は今回の発表で急に始まったものではなく、ホテルの宿泊情報と予約にフォーカスした広告として以前より提供されています。今回の発表は、これまでのクリック課金(CPC)モデルから、コミッション(手数料)モデルへの変更を行なった上で、宿泊施設と Google を結ぶ技術パートナーを増やしたという提供側の変更と、検索結果からそのまま予約できる「Book on Google」ボタンのPC向け拡張や、アメニティの詳細表示などのユーザー向けの変更を行なったことで、Hotel Ads のギアが一段上がったことを示しています。

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リンク:Google Hotel Ads


なお、今回の発表に合わせて、Vertical Search(業種別検索)として提供されていた Hotel Finder(ホテル検索)は終了となり、今後は通常のGoogle検索に統合されます。商品検索の Shopping が Vertical Search として独立を保持しているのとは対照的ですね。

刷新の背景

遡れば、Hotel Ads はベータ版を含めると2010年頃から欧米で提供されていました。以前は Hotel Price Ads という名前で宿泊金額の比較サイト的な機能として Hotel Finder を中心に配信されていましたが、2014年11月のカルーセル表示の見直しや、2015年3月の画面表示の大幅改善などを経て、現在のホテル広告のリリースにつながっています。

そのため、(主にアメリカの)旅行業界にとっては、今回の発表は青天の霹靂というわけではなく、以前からアナウンスされていたことがいよいよ実装されたということになります。

Hotel Ads は 2015年5月に行われた新製品発表会でも明確に言及されており、当時の発表でも、Hiltonグループは通常の検索連動型広告と比べて45%高いコンバージョン率を記録した他、ROIも12%高かったとのこと。(参考記事

今回のリリースでも、ホテル情報を扱うテクノロジーベンダー TravelClick に登録したホテルは、Hotel Ads のコミッションモデルへの変更で、平均で前年対比56%の売上増につながったとのことです。

ただ、これまでの Hotel Ads の仕組みを考えれば、これは至極当然というか、理にかなった変更だと言えます。

Hotel Ads はこれまでも AdWords とは別の仕組みとして提供されており、入札単価もホテルの宿泊料金をベースに割合/固定で選んだり、地図や検索結果などの掲載面、デバイスごとで入札単価調整比率を変更したりと、それなりの運用負荷がかかっていました。Hotel Ads に参加するレベルのホテルはほぼ間違いなく AdWords の広告主でもあるため、ホテルの担当者は複数のプラットフォームを管理する必要がありました。ホテルの管理すべき外部サイトやシステムの数は膨大なため、どうしてもボリュームが見込みづらい複雑なシステムにリソースを割きにくかったのは仕方がないことだと思います。

Hotel Ads のコミッションモデルへの転換は、Googleがオンラインの旅行代理店(OTA: Online Travel Agency)や旅行の比較情報サイトのビジネスに進入することを意味します。

旅行業界はオンライン広告市場では小売、金融、自動車に次ぐ大きなマーケットです。中でも、多くの OTA や宿泊情報サービスの集客は検索連動型広告への依存度が高く、Google の上位顧客にも旅行業界のビッグネームが並びます。そのため、Google も Hotel Finder を閉じ、ホテル予約を独立したサービスではなく検索結果の一部とすることで、広告プラットフォームとしてのバランスを取っているように思えます。

データフィードがカギを握る

Hotel Ads の成功のカギはデータフィードです。今回の発表に合わせて技術パートナーを大幅に増やしてリリースしていることからも、宿泊情報の広告利用には、単純なキーワード入稿ではなく、システム統合が必須であることが示唆されています。

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統合プロバイダの一覧(2015年9月時点)


Hotel Ads では 「ホテルリストフィード」と「料金フィード」の2つが必要です。Shopping Ads のように商品と価格が対になっている(1つのレコードで収まる)業界と違い、ホテルは宿泊施設、部屋、人数、曜日、プランなどによって料金が大幅に変わってきます。また、小売より在庫情報(空き部屋状況)が重要になるため、更新頻度や他の予約データベースとの連携を行う必要があります。

そのため、ホテルや部屋のマスタ情報となるホテルリストに加えて、価格や空室情報を管理する料金フィードを独立したテーブルとして用意することで、情報の鮮度とシステム統合の柔軟性や負荷軽減を行う構成になっています。複数のテーブルを活用するHotel Ads は、ほぼデータフィードマネジメントのみで構成される広告プラットフォームだと言えるでしょう。

こうなると、広告というよりは完全に ICT の世界になり、データマネジメントができないと運用以前にプランニングにすらならない、という状況になるのではないかと思います。

これまでは Hotel Finder の知名度が低く、Googleの検索結果上のホテル表示も試行錯誤が繰り返されていましたが、今回の発表によって、検索結果や Google Map からそのまま予約できる「Book on Google」ボタンのデスクトップ/タブレット拡張や、アメニティの詳細表示などが追加され、ユーザーにとってはますます便利になっているほか、来年にはアメリカ以外の主要各国に展開されると名言されているため、Hotel Ads の集客ボリュームは増えていくと予想されます。

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ホテルの詳細表示画面


そうなると、多くの宿泊施設にとって Hotel Ads は必須対応チャネルとなり、特に大型ホテルやインバウンド需要のある国際ホテルにとって、データフィードの活用はこれまで以上に死活問題化していくのではないでしょうか。

大型ホテルでは、はるか以前より宿泊の在庫管理はシステム化されていますので、そのシステムを担ってきた企業にとってもシステム開発費だけでない需要が見込め、ビジネスチャンスになると思われます。日本の OTA のコミッション(手数料)は10%程度と世界標準より安いものの、大手旅行代理店によるバルク購入や個泊の増加などの影響もあり円安前までは宿泊単価が上がりにくい傾向が長かったため、Hotel Ads の料率によっては自社サイトに集客できる Hotel Ads は魅力的に映る可能性があるかもしれません。

ショッピング広告のように、ホテル広告も業種別施策の台風の目になるのか、今後もフィード広告には注目していきたいと思います!

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