AdWordsの品質スコア表示方式の変更から、「広告の品質」を考える

新しいキーワードの品質スコア表示が変更に

2015年7月29日、Google は AdWords の品質スコアの表示方式の変更をひっそりとアナウンスしました。

リンク:Starting today, we will be updating how we report 1-10 Quality Scores for…(Google+)

アナウンス自体はシンプルで短い英文です。かんたんに翻訳してみると以下のようになります。(ヘタ訳はご容赦ください…)

<原文>Starting today, we will be updating how we report 1-10 Quality Scores for keywords [https://goo.gl/c4Oi7]. This update only affects reporting. There is no change to ad serving such as how auction-time quality signals affect Ad Rank and CPC. The most significant part of the change is that keywords without traffic will now, by default, receive a score of 6, and Average for the three components of Quality Score. Once keywords gather enough impressions, scores will update about a day or so later.
 
Behind the scenes, this change will allow us to simplify some of our core systems, letting us focus our attention on improving reporting accuracy for keywords with traffic.

<日本語訳>本日より、キーワードに与えられる1から10までの品質スコアの表示方法を更新します。今回の更新は表示(レポート)に関してのみ影響します。広告ランクやCPCに影響するオークションごとの品質といった広告配信に関する変更はありません。今回の変更の要点は、トラフィックのないキーワードはデフォルトで品質スコア6が割り振られ、品質スコアの3つの要素(訳者追記:推定クリック率、広告の関連性、ランディングページの利便性)は平均値と表示されることです。キーワードが充分な表示回数を獲得すれば、品質スコアは1日かそれ以後に更新されます。
 
今回の変更によって AdWords のいくつかの基幹システムをシンプルにし、そしてトラフィックのあるキーワードの(品質スコアの)表示の精度向上に集中することができるようになります。

つまり、今回の変更を箇条書きでまとめると、以下になります。

・オークションごとの広告の品質計算には一切変更がなく、品質スコアの表示方針だけが変わる

・表示回数がないキーワードの品質スコアは必ず6になり、吹き出しで表示される推定クリック率・広告の関連性・ランディングページの利便性の3点はすべて「平均値」と表示される

・品質スコアは、キーワードに十分な表示回数があれば、1日かそれ以後に更新される

表示変更が行われた背景

今回の変更は、シンプルに言えば、「トラフィックのないキーワードは品質スコアを一律表示する」ということですが、この(わざわざややこしくするような)変更はどうして行われたのでしょうか。品質スコア周りの変更は混乱を呼びやすいものですが、今回の変更でも、Google+の当該記事には多くのコメントが付き、質問が飛び交っています。

個人的な憶測に過ぎませんが、アナウンスの後半で「いくつかの基幹システムをシンプルにし、そしてトラフィックのあるキーワードの(品質スコアの)表示の精度向上に集中」とあるのが、今回の変更の背景を探るヒントではないかと思います。

これまでは、AdWords で新しいキーワードを設定すると、アカウントの過去の実績等をもとに個別の品質スコアが割り振られていました。それはつまり、新規キーワードを設定するたびにアカウントごとに品質スコアを表示するために内部で計算をしている、ということでもあります。計算をするということは、キーワードの数だけシステムに負荷がかかっているということでもあります。

今回の変更によって、システム上は、新規キーワード/ボリュームのないキーワードごとの品質予測計算が省かれるということですので、システムの負荷が軽減され、重要なサーバーリソースをもっと重要な機能や他の事業に向けることができる、というのが変更の理由ではないかと思われます。

実際、Googleが現在もっとも力を入れている IoT の分野や、存在感を増している動画などのフォーマットは、データの種類や量が桁外れですので、サーバリソースの効率化は今後も優先事項の一つでしょう。

「広告の品質」と「品質スコア」の違い

今回の品質スコアの表示変更は、品質スコアというものを改めて考えるよい機会ではないかと思います。

「新しいキーワードには一律の品質スコアを割り振るが、広告配信のための広告ランクの計算は変わらない」ということは、品質スコアはあくまでアカウント内で表示するための目安であって、実際に広告ランクの計算に使われている項目そのものではないという事実を端的に表していると言えるからです。

Googleはこれまでも品質スコアを正しく理解してもらうためにあらゆる説明を試みており、2014年6月に発表された Googleのチーフエコノミストの Hal Varian が自らポストした記事は AdWords の運用者には非常に有名です。

リンク:Inside AdWords: More Insights about Quality Score and the AdWords Auction
※ホワイトペーパーのダウンロードはこちら(PDF)

この中で、品質スコアについて表現した以下の文章が、品質スコアという指標の意味を的確に表しています。

Another way to think of the Quality Score reported in your AdWords account is as warning lights in a car: something that alerts you to potential problems.

言い換えれば、アドワーズアカウントに表示される品質スコアとは、潜在的な問題を教えてくれる車の警告灯のようなものです。

※太字は筆者強調

Remember, too, that there are differences between auction-time quality and the 1-10 Quality Score number that appears in your account. Your Quality Score will give you insight into how you’re performing, but “chasing the number” shouldn’t be the focus of your optimizations. Be relevant, be compelling and drive traffic to landing pages that deliver on what you promise in your ad, and you can feel confident your score should reflect that quality

繰り返しますが、オークションで計算される「品質」と、アカウントで見る10段階の「品質スコア」は違います。品質スコアは、広告のパフォーマンスについての詳細な情報を提供するものであり、その数値を追いかけるものではありません。関連性を重視し、魅力的な広告文で約束した情報があるページにユーザーを導いて下さい。そうすれば、品質もおのずと付いてきます。

※太字は筆者強調


つまり、品質スコアは原因そのものではなく、様々なシグナルや事象(≒広告品質)を計算した上で算出された結果であるということです。目的変数であって説明変数ではない、と言ってもいいかもしれません。

実際に、AdWords のヘルプには以下のように記載されています。広告ランクの計算の説明には、「品質スコア」ではなく「広告の品質/品質スコアを決定する各要素」という言葉が使われています。

広告の掲載順位とランクの仕組み – AdWords ヘルプ

広告ランクは、入札単価、品質スコアを決定する各要素(推定クリック率や広告の関連性、リンク先ページの利便性)、そして広告表示オプションやその他の広告フォーマットの見込み効果に基づいて算出される指標です。

オークションでは、広告の品質、入札単価、広告表示オプションやその他の広告フォーマットの見込み効果によって広告の掲載順位が決まる

※太字は筆者強調


このあたりは、以下の記事でも詳しく触れていますのでぜひご参考下さい。

リンク:[AdWords公式] 品質スコア徹底解説―最適化を導くために品質スコアを使用する(アユダンテさんのコラム)
 
リンク:AdWordsの品質スコアの説明資料についての解説(拙個人ブログ admarketech.)

品質スコア「6」と「7」の差は

今回の発表を契機に、海外のSEM関連のメディアやブログでは、広告品質や品質スコアについての記事が増えました。内容は玉石混交なのですが、その中でも元Google の Frederick Vallaeys が書いた品質スコアとその構成要素の分析についての記事が面白かったのでご紹介します。

リンク:The Minimum Quality Score That Can Save You Money In AdWords

上記の記事は、結論から言えば以下の3つのまとめに集約されます。

1. FPBは品質スコアより更新頻度が低いようなので、入札ロジックに使う場合は注意
2. 品質スコア7以上は実効CPCへの影響が大きく、6以下は影響がそれほど大きくない
3. 品質スコアは1−10で表現されるが、その効果は線型では見積もれないので注意しよう


まず 1. ですが、FPB(First Page Bid:1ページ目に必要な上限CPC)は、「広告品質」と「広告ランクの閾値※」から逆算される項目ですので、品質スコアより更新が遅いのはある意味当然かもしれません。表示回数が多いキーワード(およびその広告グループ)であれば広告品質の計算精度が高いため、FPBと品質スコアは近い頻度で更新されるように見える、ということなのかなと思います。
 
※広告ランクの閾値についてはこちらの記事を参照

続いて 2. ですが、これは品質スコアの表示と実際の FPB への影響度が表になっていて興味深いです。

FPB-Impact-When-QS-Drops-2

1から10までの10段階では、真ん中の値が存在しないため、今回の Google の変更では 6 がスタートラインとなりましたが、Frederick の運営する会社 Optimizr の調査でも、品質スコア 6 までは FPB への影響が少なく、7 を境に FPB への影響が大きくなるとのことでした。今回の変更アナウンスとも平仄が合っていますね。

上記のような調査を元に、品質スコアと予測CTR(pCTR)の関係性をモデル化したのが下の図です。

QS-pCTR

この図では、予測CTRと品質スコアは線型の関係性ではなく、二次曲線的な関係性にあることが示されています。(実際にマッピングされている pCTR はあくまで例示であり実際のCTRを示したものではないので注意して下さい)

少なくとも今回の変更で「品質スコア6」が中央値として定められ、「品質スコア7」以上は明らかに品質として影響している(FPBが下がる=品質として競争力がある)ことはデータからもある程度求められていますので、まずは「重要なキーワードで品質スコア7以上となる広告品質」が、よいアカウント運用のベンチマークになるのかもしれません。

もちろん、絶対値として品質スコアが幾つであれば高い/低いということは言えないことは変わらないので濫用には要注意ですし、Hal Varian の言う通り品質スコアはアカウント最適化の目的ではなく、アカウントの健康状態を示すシグナルの一つに過ぎませんので、品質スコアの表示がどのように変わろうが、運用でケアするべき施策が変わるわけではありません。

「その広告は、ユーザーにとって有益な情報かどうか?」という問いこそが、広告効果の向上にとって近道です。それが近道かどうか教えてくれるシグナルの一つが、品質スコアだと言えるのだと思います。

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