推奨図書:「明日のプランニング」

明日のプランニング 伝わらない時代の「伝わる」方法 (講談社現代新書)
著者: 佐藤尚之
出版社: 講談社
発売日: 2015年5月20日


 

冒頭は、私がマーケティングのバイブルと思っている「ポジショニング」とアプローチは同じで、いかに情報が氾濫した環境にいるかを説いています。「ポジショニング」は1981年に出版されたのですが、その当時は「アメリカでは年間3万冊の本が出版され、1000万トンの新聞が発行されています(その他多くのメディアの増加について触れている)。実際、毎日の新聞を全部読むのってもはや無理ですよね?」というような内容が書かれいて、マーケティングを学び始めた当時、のっけから十分衝撃を受けたのですが、本書では、2010年の1年間で世界中の砂浜の砂の数と同じ量の情報が流れ、これを「砂一時代」と言うわかりやすい造語で終始登場します。要するに情報が人の目に止まるのも、人の記憶に残るのも不可能に近い環境でマーケティングを実践する必要があるということです。

 

もちろん、特にマーケティングに携わっていれば、多かれ少なかれそのことは感じながら日々、四苦八苦しているわけで、別に「砂一時代」を語ることが本書の目的ではありません。現在置かれている情報環境についての意識合わせになります。

 

一方で、ネットは皆が当たり前に使っている環境と思いきや、実はネットを毎日は利用しない人が、5670万人(総務省情報通信白書2014から)もいるということです。日常的にネット検索を使わない人の数はもっと多いということも述べています。私は以前、検索エンジン会社に所属していたにも関わらず、ユニークユーザーの数よりもクエリー数に意識が寄っていたかもしれません。筆者が本書で述べている、どれだけ広告を露出できるかをベースに考える「露出脳」になっているんでしょうね。

 

つまり国民の半分くらいが「砂一時代『以前』」の情報環境なのです。また、マイルドヤンキー、新ヤンキーと呼ばれる人たちも1000万人くらいはいるのではないかと推測していますが、『若者がモノを買わない』時代において、唯一旺盛な消費欲を示しています。こういう人たちは特段、情報洪水を経験しているわけでなく、広告も情報源の一つという位置付けになっているので、テレビもテレビCMもよく見るし、むしろ情報は喜ばれる、情報は役に立つ!と考えてくれる人たちであるとしています。

 

逆に、私を含め、情報がありすぎる!情報はうざい!と考える人たちにとっては、コミュニケーションの最強メディアが「友人知人」であるとしています。SNS、スマホなどの普及で、友人知人の言動は24時間目に入ってきます。さほど興味のないコンテンツでも、信頼できる友人のフィードに出て来れば、「どれ、ちょっと見てみるか」となるし、逆に、知人友人を介して、その仲間に自分が伝えたいことが伝わるようになっています。「仲間ごと」は超がつくほどの関心事になったわけです。

 

「砂一時代の人」と「砂一時代『以前』の人」ではプランニングも別々に考えないとおかしいとしています。砂一以前の人にはマスベースに訴えかけ、興味関心がなかった人に振り向いてもらうというアプローチが依然使えますが、砂一時代の人には興味関心があるファンに情報を伝え、彼らから情報を広げてもらうアプローチがよいのではとしています。筆者は「オーガニック」という言葉に思い入れがあるように思いますが、まさに自然な言葉で伝わることが大事で、そこがキモなのだと思います。

 

その具体的な方法は本書をぜひ読んでほしいと思います。大変参考になります。

 

本書は数カ所で検索や検索連動型広告について触れていますが、ネット広告運用について特にフォーカスしているわけではもちろんありません。ですが、広告運用者としては、現在の情報環境、それが本書でいう砂一時代の人でなくても、そういう人たちが多く存在することにマインドフルでいるべきだと思います。つい業務を遂行する上ではネット上にいる生活者だけを見がちですが、ネットの外にいる人たちも俯瞰した上で、クライアントの課題に今一度真摯に向かい合うことが大事なのではと思わされました。そうすると、ネット上でのソリューションでは通用しないケースも多々出てくるでしょう。それはそれで事実として受け止め、その上で何ができるんだろう、何をすべきなんだろうと考える必要があると個人的には思います。

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