広告サービス設計時のエッセンシャル 〜 ①サービスレベル設計

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過去、広告プラットフォーム企業2社で運用型広告のサービス設計に関わったこともあり、設計上、必ず考慮しないといけない要素がいくつかあることは何となくわかってきました。


その中でも一番大事なことは何かというとService Tieringだと考えています。そのままカタカナにすると「サービス・ティアリング」。分かりやすく訳すと、「サービスレベル分け」とか「サービスレベル設計」となるでしょうか。ティアは英語のTierで「段階」や「層」を意味します。


IT業界の場合、規模の大きいシステムなどではSLA(サービスレベルアグリーメント)が明確に設定されている場合がほとんどです。SLAとは、サービスを提供する側とその利用者の間に結ばれるサービスのレベル(定義、範囲、内容、達成目標/品質等)に関する合意書です。


それ以外では、サービス・ティアリングが上手な業界として、いつも例に挙げるのがクレジットカード業界です。


多くのみなさんがクレジットカードを1枚は持っていると思うので、馴染みのある例かと思います。よくこういうピラミッドで表現されることが多いですね。

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最初にみなさんがクレジットカードに申し込んだ場合、まだ実績(信用)が少ないため、普通のカードが送られることが多いと思います。それから結構買い物する際に、1枚のクレジットカードに支払いを集中させて、後日まとめて請求書がきた際に、期日通りに支払いを済ませていくと、クレジットカード会社から通知があり、「おめでとうございます!ゴールドカードにグレードアップできます」などときます。


ゴールドカードになると、今まで設定されていたカードの上限枠が大きくなったり、付加サービスがいろいろついて、サポートもそれとなくよくなった気がします。ちょっと特別感。カードを持っている自分としても、みんなが簡単には持てないゴールドカードを保有できたことで、ちょっと優越感に浸れたりします。


その後、もっと利用が増えていくと、プラチナカード、使う金額が半端なく大きいと噂のブラックカードなどになったりもします。このあたりになると、信用はかなり大きいので、上限枠はほとんどないに等しく、ポイント還元などでもらえるものもとても豪華。専用のサポートホットラインに電話すると、「〜様」と電話口で即座に名指しで呼ばれるような特別なサービスを受けることができたりします。


サービス・ティアリングってこれと同じことです。お客様が拠出しうる対価に応じて、提供するサービス内容を定義し、その範囲・上限・制限を明確にしていくプロセス(逆も然り)だと考えています。


あくまで例ですが、広告サービスの場合は、アカウント/キャンペーン予算に応じて、

  • 初期のアカウント開設
  • アカウント構成の設計
  • 初期のキーワード、クリエイティブの準備
  • キーワード、クリエイティブ、URLの追加・変更
  • 入札金額の変更
  • レポーティング(頻度・種類決める)
  • サポートの手段(電話、メール、チャット、訪問、定例会の有無)
  • アカウント管理要員の人数、専用スタッフをかプールサービス(指名はなく複数人のチームでサポート)か
  • 請求書の期限、支払いターム
  • その他付加サービス各種(ベータ版機能の優先利用、勉強会、セミナー、海外本社訪問など)



上記に対して、予算レベルに応じてどこまでやる、何日で納品する(ターンアラウンド)、上限変更回数などを決め、クレジットカードサービスのようにサービス・ティアリングします。


そうすると、一番ベーシックなサービスを求める顧客には、一番安いけど、ほぼセルフサービス。キャンペーン100万円の顧客は専用スタッフまではつけられないけど、それなりにいろいろ手をかけてくれる。キャンペーン1000万円以上の顧客は専用スタッフがついてくれて、いろいろと前向きに提案をしてくれる。レポーティングの頻度も毎月だけではなく、毎週、毎日してくれる。こんなイメージですね(例です)。


このサービス・ティアリングを実施する際に大事なポイントとしては、

  • それぞれの金額帯にかけられるリソースを考慮すること
  • それぞれのサービス内容がきちんと差別化されていて納得感がある。似通っていないこと
  • 上のティアに到達したいと思わせるインセンティブがあること
  • 提供サービス範囲に関しては、効率も念頭に置きつつ「やらない」割り切りも大事
  • サービス提供側のスイートスポット(一番売りたいゾーン)を設ける



ご存知の通り、広告業界は意外と手作業が未だ多く存在しており、このサービス範囲・制限とリソースのバランスを見誤ると、実に簡単に運用オペレーションは破綻します。また、少額のお客様と高額のお客様に同じレベルのサービスを提供したくなりますが、残念ながらこれも収益性とリソース配分を見誤って失敗します。


そうならないようにするためには、効率化・自動化できる箇所は可能な限り実施し(これについては別途コラムで)、それぞれのレベルに提供しうるサービス範囲を常に見極める必要があります。


一度決めてからサービス内容や範囲を改変することは可能ではありますが、サービスレベルアグリーメントというように、サービスを提供する側とその利用者の間に結ばれる合意事項であり約束でもあるので、頻繁に変える性質のものではなく(本来であれば営業時にきちんと説明し、双方納得の上で、申し込み時に契約的な縛りを設けるのが理想的)、そういう意味では慎重な設計とデプロイが必要になります。

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